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なぜ今、鉄道各社は「顔パス改札」を競うのか 東武・日立が「SAKULaLa」で描く“第3の道”(2/4 ページ)

東武鉄道と日立製作所は11月13日、両社が共同運営する生体認証サービス「SAKULaLa」(サクララ)に顔認証機能を追加。東武宇都宮線の12駅で顔認証改札サービスを開始した。大阪メトロ、JR東日本……各社はなぜ、異なる戦略で顔認証改札を目指すのか。

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3社の狙いは?

 SAKULaLaに賭ける3社の狙いは何か。

 東武鉄道にとって、SAKULaLaは沿線の価値を高める切り札だ。東武ストア、東武ホテル、そして26年度以降のファミリーマート展開と、まずはグループ内で先行事例を積み上げる。「グループ内でしっかり実績を作ることで、グループ外への展開も進める」と東武の担当者は話す。狙いは沿線住民の生活全体を取り込む「生活圏プラットフォーム」を作ることだ。

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さまざまなデジタルアイデンティティを手ぶらで利用できるようにする構想だ

 一方、日立製作所が見据えるのは、デジタルアイデンティティーのハブ企業への転身だ。PBIを使った生体認証基盤を社会インフラとして根付かせる。日立の石田貴一事業執行役員は「それぞれの事業者のニーズや利用シーンに応じて柔軟に対応できる。金融インフラ、交通インフラ、クラウドサービスや公共施設といった社会インフラを、手ぶらで利用できるようになる」と説明する。

 行政への展開も視野に入れる。「例えば災害時、本人であることを証明するツールとして生体認証が使える。何かを出さなくても本人確認ができ、場合によっては決済もできる」。図書館の会員証や公共施設の入館証など、行政サービスとの相性は良いとみる。

 一方、JCBは次世代キャッシュレス決済の主導権を狙う。JCBの榊原英人執行役員は「日本のキャッシュレス比率は今や40%を超えている。これをより進化させ、価値あるものにするため、“3つのレス化”を掲げている」と話す。スマホレス、ポイントカードレス、本人確認レス。「生活者のストレスを大きく減らし、店舗の作業効率を大幅に高める。ストレスフリーな決済体験の実現に向けた大きな一歩だ」

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「JET-S」にSAKULaLaの機能を載せる

 同社は国内最大級の加盟店ネットワーク、豊富な会員基盤、ポイントおまとめサービスという3つの武器を持つ。「東武沿線を中心に、スーパーやコンビニなど生活に密着した企業への推進を図る。JCB会員に対しては積極的にプロモーションやキャンペーンを展開する」(榊原執行役員)

 3社は社会課題の解決という大義も掲げる。まずは労働力不足への対応だ。生体認証であれば会員情報や年齢確認を厳格かつ速やかに行えるため、係員が対面で目視確認してきた作業を省ける。さらに会員証の貸し借りによるなりすましや、カードの偽造といった不正を防ぐ効果もある。

 デジタル格差の解消も重要なテーマだ。一度登録すれば加盟店どこでも使えることから、「デジタルが苦手な方も含めて、手軽に利用できる。デジタル利用の年代間格差の解消にも役立つ」。カードやスマホを持たない高齢者でも、顔や手のひらさえあればさまざまなサービスを使える社会を目指す。

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