なぜ今、鉄道各社は「顔パス改札」を競うのか 東武・日立が「SAKULaLa」で描く“第3の道”(3/4 ページ)
東武鉄道と日立製作所は11月13日、両社が共同運営する生体認証サービス「SAKULaLa」(サクララ)に顔認証機能を追加。東武宇都宮線の12駅で顔認証改札サービスを開始した。大阪メトロ、JR東日本……各社はなぜ、異なる戦略で顔認証改札を目指すのか。
JR東、京成電鉄……各社の異なるアプローチ
ICカードをかざす従来の仕組みは、物理的な接触や読み取りに時間がかかる。このため、改札を立ち止まらずに通れる「ウォークスルー型」が、業界共通の次なる目標だ。顔認証は、この体験を実現する最も有力な手段として注目されている。
ただし、各社のアプローチは大きく異なる。最も大胆な一手を打ったのが25年3月、国内で初めてほぼ全ての駅に顔認証改札を入れた大阪メトロだ。戦略の核心は、既存のICカードでは通過できない仕様とし、自社アプリ「e METRO」へ顧客を誘導したこと。顔認証改札を使うには、アプリで会員登録と顔画像の登録を行い、デジタル乗車券を買う必要がある。
このハードルの高さは技術的な制約ではなく、ビジネス上の判断によるものだ。狙いは、匿名のICカード利用者では作れなかった「個人に結び付く顧客データベース」を築くこと。ただし万博開催時の顔認証改札は「かなり空いていた」とも報じられており、認知度と登録の手間によるハードルが課題としてうかがえる。
JR東日本は、「改札はタッチするという当たり前を超える」と宣言。しかし大阪メトロとは対照的に、新幹線という限られた場面で導入を始めた。上越新幹線での実証実験でターゲットにしたのは、「荷物を持った利用者」「複数の切符を扱う不慣れな利用者」といった明確な不便さを抱える人だ。特定の課題に狙いを定める形で、ウォークスルーが提供する価値を検証する。
京成電鉄はさらに絞り込み、成田空港へのアクセス特急「スカイライナー」だけで顔認証を始めた。対象は訪日外国人などが多い、オンラインチケットの利用者。空港からのスムーズな移動に高い価値を感じる層に狙いを定めた、低リスクな戦略だ。
こうした各社の施策の中で、異なる動きを見せ始めたのがSAKULaLaだ。大阪メトロの「新規エコシステム」型でも、JRの「既存資産+顔認証」型でもない──業種を超えて使えるプラットフォームとして、第3の道を歩もうとしている。
長年、日本の鉄道改札を支えてきたICカードの特徴は「匿名性」だった。しかし顔認証の導入は、匿名の利用者を事業者が管理する「個人に結び付くデジタルID基盤」の利用者へと作り変える動きだ。その覇権を巡る競争が、今、始まっている。
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