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「コク」と「キレ」の両方を味わえるコップ、東大が開発 黒ビール→ジンジャーエールに変わっていくとどう感じる?Innovative Tech

東京大学大学院に所属する研究者らがは、「コク」と「キレ」の両立を実現する特殊なグラスを開発した研究報告を発表した。

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Innovative Tech:

2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 東京大学大学院に所属する研究者らが発表した論文「うつろいドリンク: コクとキレを両立するための連続的な飲料混合率変化グラスの提案」は、「コク」と「キレ」の両立を実現する特殊なグラスを開発した研究報告だ。


グラス上部に黒ビール、下部にジンジャーエールが仕切り板で層状に分離した「うつろいドリンク」

グラスを傾けて飲む動作により、仕切り板の穴を通じて下室のジンジャーエールが上室の黒ビールへと混合される仕組み

 飲料の体験価値を高める上で、口内に広がる濃厚な「コク」と、飲み込んだ後の急激な味の消失である「キレ」はとても重要な要素だ。しかし、コクは味成分の口腔内への吸着、キレは成分の離脱という相反する物理現象に基づいている。そのため、単一の液体の中でこれら2つを独立して設計し両立させることは、極めて困難とされてきた。

 このトレードオフを解消するために、研究チームは「うつろいドリンク」という新たなグラス型デバイスを提案した。これは、コクを担う飲料とキレを担う飲料をグラス内で上下に分離し、飲む過程で2つの液体の混合率を連続的に変化させる仕組みだ。

 グラスの中央には2つの穴(空気穴と液体移動穴)が空いたアクリル製の仕切り板が設置されており、グラスを傾けて飲む動作に連動して、下室の液体が上室へと徐々に流れ込む。これにより、グラスから漂う香りを楽しみながら、飲み始めから飲み終わりにかけて味がシームレスに切り替わる体験を生み出している。


グラス中央部にパッキンで固定された2つの穴が空いたアクリル製仕切り板が上室(30mL超)と下室(30mL)を隔てるプロトタイプの構造図

グラスを傾けて飲む動作により、一方の穴が空気穴として機能しながら、もう一方の穴を通じて下室のジンジャーエールが上室の黒ビールへと徐々に混合される様子

 開発されたプロトタイプによる検証では、上室にコクを担う黒ビール(ギネス)を、下室にキレを担うジンジャーエールを配置した。黒ビールに含まれる成分は重厚な口当たり(コク)を与え、ジンジャーエールは炭酸の爽快感や唾液分泌を促す成分によって味の洗い流し(キレ)を促進する役割を持つ。

 実験では、10秒間で飲み干すことを想定し、飲むにつれてジンジャーエールの割合が増えていく今回開発のコップ(うつろいドリンク)と、最初から均等に混ぜ合わせた通常のコップの比較が行われた。

 実験の結果、通常のコップでは飲用後に黒ビール特有の苦味が残りがちであったのに対し、うつろいドリンクを用いた場合では嚥下後の苦味が消失し、明確なキレがもたらされることを示唆。つまり、重厚な味わいなのに、一瞬で味が消えるという、単一の飲料では成し得ない体験の可能性を示した。

 一方、飲み始めの濃厚感については、最初から2つの飲料が混ざり合っている通常のコップの方が味の複雑さによって高く評価されるという課題も見つかった。

 今後は、個人の飲むスピードに合わせて仕切り板の穴を制御する仕組みや、コクとキレを最大限に引き出すための飲料の組み合わせの探索が進められる予定だ。


(左)スタジオボックスとカメラによる混合率測定の撮影環境、(右)グラスから注がれる飲料の色の濃さを解析するために緑枠の関心領域を設定した映像フレーム

飲み始めから10秒にかけて口に入る飲料の色の濃さ

混合率が50:50で一定の比較条件(左:通常のコップ)と提案手法の変化条件(右:うつろいドリンク)における3人の参加者の香り・風味の強さの推移

混合率が50:50で一定の比較条件(左:通常のコップ)と提案手法の変化条件(右:うつろいドリンク)における、タイミングごとに知覚された香り・風味の種類の選んだ人数の割合
Source and Image Credits: 日塔 諒太, 小宮 晨一, 割澤 伸一, 伴 祐樹: うつろいドリンク: コクとキレを両立するための連続的な飲料混合率変化グラスの提案, 情報処理学会 インタラクション2026, 1C58.


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