夏の水分補給で本当に飲むべき飲み物とは? スポーツドリンクより効果的 米研究者らが22年に検証:ちょっと昔のInnovative Tech
米ペンシルベニア州立大学などに所属する研究者らは2022年、運動時や暑い環境における水分補給に適した飲料を調査した研究報告を発表した。
ちょっと昔のInnovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。
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米ペンシルベニア州立大学などに所属する研究者らが2022年に発表した論文「Scientific basis for a milk permeate-based sports drink - A critical review」は、運動時や暑い環境における水分補給に適した飲料を調査した研究報告である。
運動中や運動後の適切な水分補給は、身体機能と運動パフォーマンスの維持に不可欠である。人体の50〜70%を占める水分は、栄養素の輸送や体温調節、潤滑など、多くの重要な生理機能を担っている。通常、成人は1日に数リットルの水分を摂取し、同程度の水分を排出することで水分バランスを保っている。しかし、激しい運動や高温環境下では、汗による水分損失が増加し、脱水のリスクが高まる。
これまで、水分補給には炭水化物と電解質を含むスポーツドリンクが広く推奨されてきた。これらの成分は、水分の吸収と保持を促進し、運動中のエネルギー供給にも寄与するとされている。しかし近年、牛乳が注目を集めている。
牛乳の優れた水分補給効果は、主にその高い電解質濃度、特にナトリウムとカリウムの含有量に起因する。実際、飲料水分補給指数(BHI)を用いた研究では、牛乳が水や従来のスポーツドリンクよりも高い水分保持能力を示すことが明らかになっている。BHIは、特定の飲料を摂取した後の尿排出量を水の摂取後と比較することで、その飲料の水分保持能力を評価する指標である。
しかし、牛乳はエネルギー密度と粘性が高いため、運動中の大量摂取には課題がある。多くの研究で、運動中や直後の牛乳摂取が胃腸の不快感をもたらす可能性が指摘されている。これは、激しい運動中や直後に必要な水分量を牛乳で補給しようとした場合、特に問題となる。
この課題に対処するため、ミルクパーミエイトを用いた飲料の開発が進められている。ミルクパーミエイトは、牛乳の限外ろ過によって得られる副産物で、牛乳の炭水化物と電解質濃度を保持しつつ、タンパク質と脂肪を除去できる。これにより、エネルギー密度と粘性を低下させつつ、牛乳の優れた水分補給効果を維持することが可能となる。
ミルクパーミエイトを用いたスポーツドリンクは、従来の製品と同等以上の水分補給効果を持ちつつ、胃腸への負担を軽減できる可能性がある。
Source and Image Credits: Craig W. Berry, Bob Murray, W. Larry Kenney. Scientific basis for a milk permeate-based sports drink - A critical review.
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