Anthropicのミュトス、暗号アルゴリズムの新たな攻撃法を発見――耐量子署名「HAWK」の強度を半減

 米Anthropicは7月28日(現地時間)、同社の最上位モデル「Claude Mythos Preview」を使い、暗号アルゴリズム自体の数学的な欠陥を発見したと発表した。同社のFrontier Red Teamによる成果で、耐量子計算機暗号(PQC)の署名方式「HAWK」と、共通鍵暗号「AES」のラウンド削減版について、これまで知られていた攻撃を上回る手法を見つけたという。ただし、いずれも実運用中のシステムには影響せず、変更が必要なソフトウェアはないとしている。

 HAWKは、米国立標準技術研究所(NIST)が公募するPQC署名方式の第3ラウンド候補の1つ。2年間にわたり専門家の査読を2度通過してきたが、Mythosは約60時間で、格子構造に潜む未利用の対称性(非自明な自己同型)を発見し、鍵の実効強度を半分に落とす攻撃を導いた。Anthropicは、同等の安全性を保つには鍵長を倍にする必要があり、それではHAWKの利点の多くが失われると指摘する。攻撃手法は6月にHAWKの開発者に共有し、公開と同時にNISTのメーリングリストでも開示した。

 もう1つの成果はAES-128の10ラウンドを7ラウンドに削った変種への攻撃で、Mythosがほぼ完全に自律的に発見した。同社が「メビウス橋」と呼ぶ新たな指紋アルゴリズムにより、既存手法で必要だった2の56乗通りの推測を1段階削減し、従来の手法より200~800倍高速化したとする。元となる先行研究が2の105乗個の選択平文を前提としており、現実的な脅威ではない。

 発見の過程も公開されている。当初Claudeは「AESの暗号解読を改善するのは不可能」として取り組みを拒んだが、研究者が「本当に新しいアイデアを探せ」と促すプロンプトを与えると方針を変え、3日間で数億トークンを出力しながら探索を続けた。人間の介入は3回の短い指示のみだったという。2件の成果はそれぞれ約10万ドルのAPI利用料を要した。

 Anthropicは今後の課題として、モデルが生成した結果の正しさを人間が検証する作業がボトルネックになる点を挙げた。例えばAESの攻撃では、Mythosが1週間で発見したのに対し、研究者2人がその妥当性を確認するには1カ月近くを要したとしている。

 なお、Mythos Previewは一般提供されておらず、「Project Glasswing」の一環として一部の組織のみが利用している。

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