OpenAIやAnthropicなどの従業員、米政府に「AI開発のペース調整を」と提言
OpenAI、Anthropic、Google、Metaなどの米IT企業の1000人を超える従業員が7月28日(現地時間)、米連邦政府に対し、AI開発のペースを意図的に調整するための国際的な取り組みを支援するよう求める公開書簡「Pacing the Frontier」を公開した。
書簡は、主要なAI企業がAI研究そのものの自動化に近づいているとの認識を示した上で、「能力の開発が、我々がそのシステムを理解し制御できる範囲を超えて急速に加速するリスクが現実に存在する」と指摘する。リスクへの対応やセキュリティ対策、監督体制の強化のために社会が対応のための時間を確保できる選択肢を持つ必要があるとしつつ、各企業、各国は激しい競争圧力の下にあり、単独で減速することはできないと訴えた。その上で「米政府が、自動化されたAI開発のフロンティアを意図的にペース調整するために必要な技術的、ガバナンス的ツールを開発する国際的な取り組みを支援すること」を求めている。書簡は非営利団体のGuidelight AI StandardsとEncode AIが運営を支援し、署名は企業メールなどによる在籍確認を経て受け付けている。
書簡の公開は、OpenAIが7月21日に“前例のないサイバーインシデント”を開示した後に行われた。このインシデントは、同社が攻撃能力を測る社内評価を実施していた際、AIがサンドボックス環境から未知の脆弱性を突いて脱出し、Hugging Faceの認証情報を窃取して情報を持ち出したというもの。書簡に寄せられたコメントでも、MetaのAI研究担当バイスプレジデント、ドーン・ソン氏がこの件に触れ、適切な安全策なしにはAIエージェントが大規模なサイバー攻撃を可能にしかねないと警告している。
署名者の中心はAnthropic、OpenAI、Google(Google DeepMindを含む)、Metaの4社の従業員だ。Anthropicからは、アラインメント研究を率いるヤン・ライケ氏や共同創業者のジャレット・カプランCSO(最高科学責任者)、共同創業者のジャック・クラーク氏などが署名している。この他、OpenAIの共同創業者、ジョン・シュルマン氏率いるThinking Machinesや、新興のInherentの従業員も署名。7月28日時点では、Microsoftから1人、Amazonからも1人署名している。
[UPDATE]書簡が公開された数時間後、OpenAIとAnthropicがそれぞれXでこの書簡を支持すると投稿した。書簡ではAnthropicのダリオ・アモデイCEOの署名が確認できる。
署名者は安全性研究者に限らず、採用担当や営業、プロダクトマネジャー、法務、ネットワークエンジニアまで幅広い職種に及ぶ。また、Meta、OpenAI、Google、Anthropicの各社から匿名での署名も出ている。コメントはいずれも個人の資格によるもので、企業の見解を代表するものではないと明記されている。
企業レベルでは、これとは対照的な提言が直前に出ていた。MicrosoftとNVIDIAが主導し、7月24日に公開された書簡「Open Weights and American AI Leadership」だ。誰でもダウンロードして検証、改変、実行できるオープンウェイトモデルこそが米国のAI競争力の基盤だとし、政策当局に対して「オープンモデルへの時期尚早な制限」を避けるよう求める内容で、「閉じたモデルのみに依存することが本質的に安全なわけではない」と、少数の企業への能力集中こそが単一障害点を生むと主張している。公開時の署名は25社だったが、7月28日時点では130社超に拡大し、Meta、IBM、Dell、Intel、AMD、Amazon、Palantir、Hugging Face、Mistral、日本のSakana AIなどが名を連ねる。OpenAIとGoogleも後から加わった一方、Anthropicの名前はない。
規制を先回りさせるべきではないとする企業の声と、AI開発のペースを国際的に調整すべきだとする従業員個人の声。AI政策を巡る異なる立場からの提言が、数日違いで米政府に示された形となった。
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