ネットの経験は「きれいさっぱり忘れる」──LINEヤフー会長を退き“AIと起業”に挑む、川邊氏の起業論(3/3 ページ)
ヤフーのスマホシフトやPayPayの立ち上げ、LINEとの統合を成し遂げた川邊健太郎氏が会長を退任すると発表した。それと同時に宣言したのが「AIとの起業」。それに必要なのが「ネット産業の経験はきれいさっぱり忘れる」ことだという。なぜ、起業パートナーにAIを選ぶのか、川邊氏に聞く「AI時代の起業論」。
「シゴデキ」から「人気者」へ
──AI時代に起業家に求められる資質は変わるのでしょうか
ネット時代に必要だったのは、ユーザーのペインを見つけて、最速で人を束ねてサービスを開発する。それをマーケティングで広めて、収益構造につなげる。そういうデザイン力のようなものが問われていました。
AI時代にどうなるかは正直分かりません。ただ、ペインを見つけてサービスを最速で作るというところは、あっという間にできてしまうことになる。AIによって高いレベルで平準化されます。
最近言っているのは「シゴデキ(仕事デキル)から人気者へ」ということです。シゴデキというこの30年間いちばん重要だった要素は、AIでもう平準化される。どちらかというと広める時のブランド──「あの人が作ったサービスだから使ってみよう」というもの、個人でもいいしAppleのような企業ブランドでもいいですが、そちらの方が重要になる可能性は高いかなと。
──これから起業する人にとって、過去の経験や専門知識はどこまで武器になりますか
面白い話があって。知り合いがやっているとあるハンバーガー店があるんですけど、これが結構おいしいんです。ところが店長は元トラック運転手で、料理の経験はゼロ。脳梗塞で運転できなくなって、それでハンバーガー屋をやることになった。
じゃあなぜおいしくなったかというと、あまりにも料理が分からなすぎて、初めから自分でうまくなることを諦めて、ずっとレシピを「ChatGPT」に聞いていた。レシピを考えたのはChatGPTで、試行錯誤やテイスティングを代わりにやったのが店長です。主従は逆転していますけど、結果オーライですよね。過去にとらわれていたら、まず100店舗巡って知見を得るとか料理学校に行くとかから始めるところを、AI産業的な飛び級ができた。これから起業する人がAIを使わないという手はないでしょう。
──もうかるかどうか分からない世界に飛び込むことへの不安はありますか
もうかるかもうからないかでは言っていないんです。面白いか面白くないかで言っている。競合が増えてもうからなかったとしても、それも含めて面白そうだと思っています。
これだけの技術が出てきたんだから。ネットが出てきた時もすごく楽しかった。あの時はメディア革命だと思ってやりましたけど、今回はサイエンス革命に近い。ありとあらゆることができるようになるという面白さで身を投じようとしています。
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