トータルバランスを重視した実質本意のモデルチェンジ──富士通「FMV-STYLISTIC TB11/S」レビュー(2/2 ページ)

» 2004年12月21日 16時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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利用者のニーズにあらゆる面から対応

 富士通は本シリーズの開発において、タブレットPCを携帯して利用するユーザーのニーズに、あらゆる側面から妥協することなく対応することを第一に考えたという。それはたとえば、標準の6セルに加えて、大容量の9セルバッテリを本体の厚みを増やさずに装着できる設計であったり、サブバッテリの内蔵によりハイバネーションを行わずにバッテリ交換が行える仕様であったりと、細かな部分にまで配慮が及んでいる。

 バッテリ稼働時間も、標準バッテリで5.8時間、大容量バッテリでは8.7時間を達成した(ともにスペック値)。超低電圧版Pentium M採用機の中には、さらに長い稼働時間を実現している製品もあるが、広視野角で明るい液晶パネルとの組み合わせであることを考慮すれば、十分に努力した結果であると推察される。実際の利用でも、バックライトを比較的明るくした状態で5時間以上は利用できた。この様子なら、輝度をさらに上げても4.5時間ぐらいは使えそうだ。

 付属の小型赤外線キーボードも、本体と一緒に持ち歩く使い方を想定してのものだ。接続には本体内蔵のIrDAポートを利用するため、本体側のコストアップなしにキーボードを接続できる(TB11/S以外はオプション設定)。

ノートPC用と同タイプの小型赤外線キーボードが付属する

 セキュリティを向上させるために指紋センサを内蔵したのも、もちろん携帯しての利用を想定しているからだ。タブレットPCは通常のノートPCよりも持ち歩いて使う頻度が高い。持ち歩く頻度が高ければ、それだけ盗難や紛失といったトラブルに遭遇する確率も高くなる。ハードディスクに収められたドキュメントの内容を守るためにも、生体認証技術を活用した本人認証が必要と判断したのだろう。

携帯利用時のセキュリティを高めるため、指紋センサを新たに搭載した

 スマートカードスロットも従来と同様に装備しており、複数の認証デバイスを組み合わせたセキュリティソリューションを利用できる。もちろん、指紋センサを利用するためのWindows上のユーティリティも標準で添付されており、ログオン認証やファイルの暗号化、複数パスワードの一元管理といった機能を利用できる。

トータルバランスを重視したモデルチェンジ

 本機の重さは約1.6キロ。ピュアタブレット型としては重い部類に入る。従来機種からの軽量化を目指すのではなく、機能や丈夫さといった要素を見据え、製品トータルのバランスを重視したモデルチェンジと言える。

 たとえば本機でペン操作を行ってみると、タブレット部分のカバーが非常に丈夫であることが実感できるはずだ。かなり強く押さえても、液晶パネル自体にかかるストレスは最小限。液晶パネルへの負担を減らしトラブルを未然に防ぐために、敢えてカバー用のパネルを軽量化していない。

 液晶パネルの12.1インチというサイズも、10.4インチの方が軽量化に有利なことは自明だが、複雑な日本語を手書きすることを考えれば、サイズが大きい方が使いやすい。

 薄型軽量化といった数字に表れやすいアプローチは、たしかに直感的にユーザーに訴えかけるが、実際の利用で重要なことはそれほど一面的なものではない。やみくもな軽量化を指向するのではなく、ビジネス利用に必要な要素を導入していくという手法は、業務用として使われることが多いピュアタブレット型に必要なことだ。

 最後に“書き味”についても報告しておこう。本機には持ちやすい、やや太めのスタイラスペンが内蔵できるが、その書き味もなかなかのものだ。以前のFMV-STYLISTICシリーズは、滑らかにペン先が滑るしっとりとした書き味が特徴だったが、本機はややザラついた感触の書き味となっている。

 これはユーザーからの要望を取り入れたもので、紙に書いたときのような適度な抵抗感を実現するために改良したものだという。タブレットのドライバもよくチューニングされており、筆圧検知を用いてメモを取る場合のフィーリングも適切だ。このあたりは早期からタブレットPCに注力した富士通のノウハウが生きている部分ではないだろうか。

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