富士通が発表したFMV-STYLISTIC TB11シリーズは、前作のTB10シリーズが採用していた超低電圧版Pentium M/1GHzから、超低電圧版Pentium M/733へと強化。動作クロックは100MHzのアップだが内蔵2次キャッシュメモリは1Mバイトから2Mバイトへと増加。プラットフォームとなるチップセットも、最新のi855GMEへと更新されている。
しかしTB11の注目点は、なんと言っても搭載されている液晶パネルだ。TB10では10.4インチから12.1インチへと拡大したが、TB11ではさらに上下・左右ともに170度という広視野角の12.1インチ液晶パネルと、フロントライト付きの10.4インチ反射型液晶パネルが採用されている。
「新製品ではデザイン面にもこだわりましたが、利用するフィールドを広げることも重視しています。そのために、アウトドアでの視認性が高い反射型液晶搭載モデルを用意しました。日中の屋外でもとても見やすく、さらにフロントライトも装備しているので、屋内でも利用できます」
「また、縦でも横でも使うタブレットPCの場合、ディスプレイの視野角も課題でした。低価格のTN型液晶パネルは、左右か上下、いずれかの視野角が必ず狭くなってしまいます。新しい12.1インチ透過型液晶パネルは、どの方向からでも広い視野角を実現していますから、どんなスタイルで使っても視認性が落ちません」
利用フィールドが増え、屋外での使い勝手が良くなってくると、PCに詰め込んで持ち出すデータの安全性も問われてくる。屋外対応と同時に指紋センサーを搭載した点も注目される。指紋センサーの採用も、タブレットPCとしては初の試みだ。
「タブレットPCでは大切な情報を様々な場所へと持ち出すことにもなりますから、セキュリティ対策は非常に重要です。富士通では個人向け製品から指紋センサーの装備を開始しました。その後、認証サーバなど企業向けシステム向けソリューションをトータルで届けることが可能になり、今回、タブレットPCに搭載することになりました」
屋外での作業に従事するユーザーも、情報やコミュニケーションといったコンピュータが得意とするアプリケーションを活用するというのは、今後ITの適応範囲を広げる上でも重要だろう。では、具体的にどのようなフィールドで富士通のタブレットPCが使われているのだろうか?
「屋外での使いやすさを重視したのは、屋外で営業担当者がタブレットPCを使う事例がとても多かったからです。新製品はまだ出荷したばかりですが、すでに日本のとあるエレベータサービスの会社に導入していただきました。ワールドワイドで見ると、今年の大統領選でNBCの記者がテレビの中で富士通のタブレットPCを使っていました。タブレットPCならば、最新の情報を取り込みながら、その場で視聴者にわかりやすくペンで書き込みもできます。他にも航空会社での点検整備担当者や映画会社での進行管理、あるいはサミット会場でと様々な場所に使われています」
富士通は教育現場へのタブレットPC導入にも積極的と聞いている。本、ノート、鉛筆をすべて1つのPCに統合できるタブレットPCは教育ツールとしての潜在力も高そうだが、具体的な活用事例はあるのか?
「昨年、シンガポールの女子校でタブレットPCを全面導入しました。この学校では生徒一人に一台のタブレットPCが割り当てられ、教科書や教員の配布する資料、宿題など、あらゆる教材が電子的にタブレットPCに配布され、その回答や提出も電子的に行うようになっています。大変評判がよく、今年になって別の学校からの問い合わせや発注も相次ぎました。また、日本の小学校でも弊社製タブレットPCの導入が始まっています」
富士通は歴史的に、ペンコンピュータで大きなシェアを持ってきた企業である。OSがDOSの時代から、業務向けのペンコンピュータを継続的に行い、営業支援システムやルートセールス用端末、病院の看護師向け端末などで堅実な実績を残してきた。特に北米市場におけるペンコンピュータの強さは圧倒的だ。
そうした中で富士通がタブレットPC市場に参入したのは自然な流れと言えよう。従来のバーティカル市場で培ったノウハウを活かすことができるからだ。タブレットPCの市場立ち上げ期には、一般オフィスでの全く新しい利用スタイルをタブレットPCに求める声が強かったが、次第に市場は特定業務へと収斂してきているように見える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.