VAIOに何が起こったか――type U篇(3/3 ページ)
PCユーザーが今回のVAIO製品群の中で一番気になっているものはtype Uだろう。それだけにさまざまな論評やレビュー記事を見かけるが、それらを読んでいて思うのは、type Uを無理やり普通のパソコンらしく扱おうとして、ある種の矛盾にぶちあたっているのではないか、ということだ。
type UをPCとして使う限り、一生使うことのないだろうこのキーは、Do VAIOのコントローラとなっている。すなわちVAIO他モデルに付属するリモコンの、十字キー部分がここにくっついているのである。
リモコンを本体に埋め込んでしまうという、一見本末転倒なように思えるこの仕様が、type Uの性格を決定づけている。AV機器として楽しむのであれば、Do VAIOを起動してすべてここで操作すればOKなのだ。リモコンが本体で、本体がリモコン。テレビやレコーダのリモコンを見て、これってここに画面付いてたらそれでいいんじゃねえのとか思ったことはないだろうか? type Uが描くのは、そういう未来なのだ。
欲を言うならば、本体にDo VAIOを起動するボタンがあるとよかっただろう。どのモードでもいいから、とにかくボタン一発でDo VAIOを起動できれば、あとは十字キーでなんとかなる。よりコンセプトは明確になったはずだ。
さらにtype Uは、クレードルにドッキングすることで、化ける。PCとして見れば、USBなんざ4つにもなるし、モニタ出力もある。IBMのPC Core Systemと比較しても、単体で楽しめる分、いかにもVAIOらしい。
もちろんマルチブラウザとして、母艦からのコンテンツダウンロード機能も備えている。クレードル下部にあるダウンロードボタンを押すと、VAIO Mediaで繋がったビデオサーバに相当するVAIOから、録画番組を自動ダウンロードする。テレビチューナーを持たないtype UのDo VAIOには「テレビ・ビデオ」の項目がないが、ダウンロードしたコンテンツは、「パーソナルビデオ」から視聴できる。もちろん条件によるダウンロード指定も可能だ。
type Uでは、PCのファイルなどを同期するソフトウェアとは別に、こういった機能が提供されている。VAIO Mediaによるコンテンツ共有は、Windowsのファイル共有機能を使わず、機材登録を行なっているVAIO同士でしかやりとりできないので、セキュアだ。
むろんその辺がVAIOユーザー以外には不評なハズだが、VAIO Mediaと互換性のあるコンテンツシェアリングシステムも出てきており、将来的には他メーカーPC間とのコンテンツ共有も夢ではなくなりつつある。
PCにポータブルビューワーの概念と操作性を持ち込んだtype Uは、「どんなに形変えてもしょせんWindowsマシンなんだよな」的世界から離脱していく、大きなムーブメントの第一歩なのである。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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