最高なハードウェアに最高な使い勝手は宿るか?──ソニー VAIO type X VGX-X90P(2/2 ページ)
「複数同時録画」がキーワードの2004年キャプチャーPCであるが、その気になれば7チャネル同時録画が可能になったVAIOが登場。業務用の世界だった「AVレコーディングサーバー」VAIO type Xの「ホームユース度」をチェックしてみよう。
最高級のハードだが熟成を待ちたいソフトウェア
かように、最高級のハードウェアを盛り込んだVAIO type Xであるが、ほかのVAIOシリーズと比較してみると、その使い勝手はまだ十分こなれていないと評価せざるをえない。「すごいPCとすごいネットワーク対応キャプチャーカード」を使いこなすには、ユーザー側にそれなりのスキルと労力が要求されるのだが、それはVAIOのコンセプトから少々外れるのではないだろうか。
例えば、VAIO type Xを使うためにはPCに一つ、X3ビデオサーバーのために二つと、IPアドレスが三つ必要となる。VAIO type Xは内部に3台のマシンが同居していると考えると分かりやすいだろう。またX3ビデオサーバーが番組ごとのファイル分割を行うためにはiEPGデータが必要であり、基本的に常時インターネット接続環境が必要となる。
ネットワーク対応キャプチャーカードなので、設定もネットワーク越しで行うようになる。PC側で動作するネットワーク設定ツールがX3ビデオサーバーのIPアドレスをチェックした後の設定処理はWebブラウザで行うようになる。
次に録画する番組の設定を行うわけだが、この設定項目はX3ビデオサーバーの設定ツールに用意されておらず、Do VAIOで行うようになっている。タイムマシン機能がDo VAIOに用意されているためだが、Xビデオサーバーの設定項目があちこちのツールに分散しているので、戸惑うユーザーもいるのではないだろうか。
タイムマシン機能(これは、自動で全部まとめ録画しておいて、後から録画した番組を視聴する機能)を利用するためには、録画する時間帯と記録品質を指定することになるが、購入して最初の設定では、時間帯を12時間以上設定できない。例えば朝の7時から記録を開始すると終了は19時までとなり、始めから24時間録画という設定ができない。24時間録画を指定するためには最低二回の設定作業が必要となる。
また、記録画質はキメウチとなり「普段は長時間録画だが、この番組だけは高画質」という変則的な設定がiEPGから行えない。ついでながら初期状態ではiEPGデータを取得するまで番組自動分割が行われない。20時ごろ起動設定したところ、4時間ほどは分割されず、全チャネル録画中となってしまい、何も見ることができなかった。
「いつでも最長1週間の番組見放題」という宣伝文句を信じて購入した場合、あとで調整する考えはあっても、まずは「全番組をすべて録画するぞ」と意気込むのは普通だと思うのだが、そこでチューナーごとに設定が必要というのは面倒である。少なくとも「どぉーんと24時間録画しまくりボタン」、可能ならば全チューナー24時間録画設定であとはチューナーのチャネル設定を行うだけという初期設定が分かりやすいのではないだろうか?
筆者が録画関連機能で一番困ったのが「録画中の番組は録画終了まで再生できない」仕様。これだけのスペックをもったマシンなのに、タイムシフト的使い方ができないのは利便性を考えると相当厳しい。ちょうど評価作業中に国会中継(13〜17時)があったのだが、もしも13時30分に帰宅して見ようと思っても、タイムマシン再生は機能せず、中継が終わってから、あるいはPC側のチューナーを使って視聴となる。
冒頭に見たいシーンがあっても、それを見ることができるのはタイムマシン録画が終了した17時以降になる。さすがに国会中継を見続ける人はいないだろうが、同じように録画時間の長いスポーツ番組(例えば野球)ならばどうだろうか?
VAIO type Xのコンセプト的には「まとめ録りしてストックから選ぶならXビデオサーバーから。リアルタイムで視聴したりスリップ再生するならPC側のキャプチャーカードで」ということかもしれないが、それでもPC側のキャプチャーカードですでに別番組の録画をしていたら対応できないことになる。
また、長時間録画(ビットレート2.5/1.25Mbps)では画質が悪く「過去の画像を見られればマシ」と考えないと常用はできない。いつでもプレイバックで見れるという目的からすると標準録画(ビットレート4Mbps)を常用したいところだが、これではHDDが2日と持たない。長時間録画にしてめぼしい番組はPC側で画質を上げて録画する、もしくは、標準画質で録画し続けて、前日までのめぼしい番組をPC側のストレージにコピーしていくのが現実的な対応となるだろう。
「TV番組サーバマシン」に最高級パーツは必要か
X3ビデオサーバーの動画はVAIO type Xの内部だけでなく、家庭内のDO VAIO導入PCや、VAIO mediaをインストールすることによって、家庭内LANのみならずインターネットを通じても視聴できる。それだけではなくDLNA規格にも対応する予定で、他社製品でもこの規格に準拠していればVAIO type Xから配信されたコンテンツを視聴できる。
となると次のような疑問が出てくる。
「X3ビデオサーバーだけ売ってくれないだろうか?」
家電HDDレコーダにもネットワーク対応製品が出ているが、X3ビデオサーバーはVAIOユーザーのみならず普通のPCでもタイムマシン機能が使えるようになる(ただし、ソフトはtype Xのパッケージに入っているので、それも抜き出してパッケージとする必要はある)。
Pentium 4 560というすごいPCはいらないがタイムマシン機能は欲しい、というユーザーは多いはず。type Xの最大の問題は価格であり、次はもっと一般の人にタイムマシンを体験させて欲しい。
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