フェイス+インテルが仕掛ける“携帯とPCをコンテンツでつなぐ”システムとは? (2/2 ページ)
音楽や動画を携帯で買っても、楽しめるのはその端末でだけ。端末を替えたらもうそのコンテンツは捨てなくてはならない――そんな矛盾を解決し、PCと携帯の世界をつなぐシステムを作っている会社がある。かつて着メロの仕組みを作ったフェイスが、インテルとともに仕掛ける“新しいシステム”とは?
コンテンツそのものではなく「権利」を買う
このシステムでは、コンテンツ(再生権利)の購入と決済には携帯電話(W-ZERO3)を使い、コンテンツの視聴はPCや家電で行うことを想定している。「このユーザーはこの動画を買った、再生権利がある」という情報がPCに転送され、購入済みコンテンツを見られるようになる。
このとき、コンテンツを再生するPCは何でも構わない。例えばコンテンツを購入した携帯を持って友達の家に行き、友達の家のPCに自分の携帯を近づけてコンテンツを一緒に見てもいいわけだ。携帯を持った本人がそこから去れば、そのPCではコンテンツを再生できなくなる。こういった使い方をすることで、口コミ効果も見込める。
ポイントは「PCと携帯が近距離にあるときだけ、接続・認証ができる」という点にある。IDFのデモではW-ZERO3を使い、無線LANで携帯とPCをつないでいたが、一般の携帯電話へ展開する際には、赤外線でつなぐことも考えているという。「PCと携帯を近距離で結びつけることができれば、別に何でもいいんです。赤外線ならたくさんの携帯に載っているし、もっと簡単です。リモコンのような見せ方をすれば、ユーザーにも理解してもらいやすい」(小森氏)
レンタルビデオくらいの価格になってほしい
プロジェクトは2004年ごろから始まったが、小森氏の中では5年くらい前から漠然と構想があったという。「これまでのDRM(Digital Rights Management、コンテンツの権利保護技術)は、ファイルそのものをプロテクトしていた。しかし、データそのものではなく、ユーザーが“視聴する権利”を買うことで、もっと柔軟になるんじゃないかと考えました。iTunesで買った曲はiPodでしか聞けないし、LISMOで買った曲はauの携帯でしか聴けない。もっと自由に広げられないだろうかと思ったのです」
まだ商業ベースに載っていないこともあり、コンテンツの価格など細かいことは決まっていないようだが、「レンタルビデオの価格程度になってほしい」と小森氏は話す。「出張先でヒマだなと思っても、ホテルの近所にTSUTAYAがあるかどうかは分からないし、借りたところでそもそも返せない。ビジネスホテルのテレビで途中まで見て、家に帰ったら続きを見られる、そんな仕組みがあったらいいですよね」
決済方法としては、携帯コンテンツのようにキャリアに通信料金と一緒に回収してもらうほか、フェイスの子会社である「WebMoney」のようなプリペイド型電子マネーを使うことも考えているという。またこれは記者の推測だが、“携帯による本人認証・決済手段”ということであれば、もちろんおサイフケータイを使う方法も視野に入ってくるだろう。
コンテンツ課金の方法が確立されているが、大きなデータは扱いにくく、機種変時のデータの移動も難しい携帯電話。高い処理能力と大画面を持っており、家電につながる可能性も持つが、課金は難しいPC。ネットでコンテンツを配信したいが、どうビジネスにしたらいいか分からないコンテンツホルダー……プレーヤーの悩みは三者三様だ。しかし「この仕組みが確立すれば、3者のニーズをすべて満たすことができる」と古谷氏は話す。
この仕組みが実現するには、携帯・PCの両方に対応ソフトが入るだけでなく、コンテンツホルダーが対応サイトを作って公開しなくてはならない。
「ハードウェア技術、ソフト(コンテンツ)、そしてユーザーにとって使い勝手がいいこと、この3つを備えるような仕組みを作りたいし、うちはそういうことをするのが得意な会社なのです。かつて、半導体というハードを作る会社と、それを入れる端末メーカー、課金するキャリアに働きかけて“着メロの仕組み”を作った。有料でコンテンツを売る、というのは当時非常に新しいことだったわけですが、今やろうとしていることはそれと同じなんです」(古谷氏)
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