112Mbpsを実現──ギガビット対応になったNASキット「GLAN Tank」のパフォーマンスをチェックする(4/4 ページ)
DAAPやwizdなどのサーバ機能を標準で備えるNAS組み立てキットLAN Tankに、ギガビットLAN対応となった待望の上位バージョン「GLAN Tank」が登場した。単にギガビットLAN対応となっただけでなく、トータルでのパフォーマンス向上のためにCPUや搭載ソフトウェアも変更されたのが特徴だ。今回はとくに気になる転送速度のチェックに加え、外付けストレージなどを増設するさいに便利になるぷちカスタマイズを施してみた。
スクリプトのぷち改造でNTFSの外付けHDDもマウント可能にしてみる
LAN Tankもそうだったが、Windowsユーザーにとって本機でもちょっと悩みの種が、USB接続したHDDはFATのパーティションしか認識しないこと。2〜3年前ならともかく、いい加減、外付けHDDでもFAT32パーティションを使っているユーザーはそう多くないだろう。なお本機で採用するDebianではNTFSパーティションもリードオンリーでマウントできる。手動でマウント作業をしたり、usbmountを導入するとUSBストレージの接続や取り外しに合わせて自動でマウント/アンマウントすることもできる。
もっとも現状のusbmountはFATパーティションの処理が完全でない動きをすることもあり、USBストレージを取り外す前に手動でsync処理を行わないと、書き込んだ内容が破壊されてしまうこともある。usbmountで自動マウントするのはNTFSパーティションだけに限定し、FATパーティションのマウントは本機本来の機能を活用する手もあるが、試用機では、usbmountを導入すると電源スイッチで電源オフができなくなる現象が見られた。
そこでusbmountは使用せず、ブラウザからのUSB連携設定でNTFSパーティションをマウントできるようちょっと工夫してみた。USBストレージの接続や取り外しを行うのは「/var/www/cgi-bin/pod_exec.sh」というスクリプトである。これは「fdisk -l」で表示されるSCSI接続(usb接続のストレージはSCSI接続として扱われる)のストレージ内のFATのパーティションを見つけ出してパーティション一覧に表示し、この情報をもとにパーティションのマウント、アンマウントを実行しているものだ。それならばNTFSパーティションも検出するようにして、NTFSパーティション用のマウント作業を追加してやればいいわけだ。
変更した部分は下図を参照願いたい。1つめはパーティションを検出する部分で、FATのパーティションだけでなくNTFSパーティションも検出するようにした。これはキーワードとして「FAT」に「NTFS」を加えただけなので、わりと簡単だ。
次は実際にマウントを実行する部分だ。マウントを指示されたパーティションのフォーマットをチェックし、NTFSならリードオンリーでマウント、FATなら従来通りのマウントを行うように変更し、さらにNTFSとFATで異なるブザー音にして識別できるように変更した。全面的に書き変えれば操作画面にパーティションタイプの表示などもできそうだが、この変更だけでも十分実用的に使えるだろう。
こちらは「/var/www/cgi-bin/pod_exec.sh」の最後の方にある2箇所目の変更部分。上がオリジナル、下が変更後だ。少々変更部分は多いが、それほど大掛かりな作業にはならないはずだ。ちなみに「buzcont」の後ろの数字を変更するとブザー音が変わる
USBストレージ内のAACファイルやMP3ファイルにもiTunesからアクセスしたいなら、「/share/sounds/」に「/share/usb/」のシンボリックリンクを作成するだけでよい。具体的には「ln -s /share/usb/ /share/sounds/」を一度実行するのみだ。
本機を再起動した場合、USBストレージをマウントしてからDAAPサービスを再起動させるとUSBストレージ内にある楽曲ファイルもiTunesに表示されるようになる。なおUSBストレージ内の楽曲が反映されない場合には、ブラウザから「http://(本機のIPアドレス、またはネットワーク名):3689」を開き、「id」「password」に「admin」を入力すると「mt-daaapd」の設定画面が表示される。ここにある「status」タブをクリックし、中段あたりにあるBackground Scanner欄の「Start Scan」を押せば、楽曲データベースが更新されるようになる。
パフォーマンス改善がうれしいNASキット。HDDを2台内蔵するならコストパフォーマンスも良好
旧モデルに相当する(といっても併売されているが)LAN Tankと比較すると、単純にギガビットLAN対応になっただけでなく全般にパフォーマンスも改善されているのは、これから導入するユーザーにとっては特にうれしいところだと思われる。
LAN Tankに見られたWebツールの些細なバグもなく、とりあえずマニュアルに従って組み立てればiTunesサーバ、wizdサーバとして動作するし、WebDAVでのファイル読み書きも実用レベルに改善された。LAN Tankと比較すると6、7000円ほど高価ではあるが、“転送速度”は導入すると特に気になってくるため、価格相応の価値は確実にある。なお、ギガビットLAN環境でSamba導入にて100Mbpsを超える転送速度を実現するとなれば、お古のPCをファイルサーバにするより動作音や消費電力、設置面積といった点でメリットも大きい。
さて一時期は入手難な状態も続いた本機だが、2006年4月現在では入手も容易だ。価格は25000円前後と250GバイトHDD内蔵のNAS製品が購入できるほどの価格だが、手持ちのHDDを活用すると想定すればコストパフォーマンスは悪くないだろうし、RAIDにも対応、さらにNTFSフォーマットの外付けHDDを増加する作業も意外と簡単に対応できる。このようなことができるのも、ほぼLinuxであるいう本機ならではだ。NASが欲しいというだけでなく、遊びの要素も欲しい人には楽しい製品の1つであることは間違いないだろう。
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