“T”の存在意義をどこに見出すか──松下電器産業「Let'snote LIGHT CF-T7」(3/3 ページ)
「バッテリー駆動時間なら携帯電話にも負けない」というのが“T”シリーズの持ち味だった。その“T”が“Santa Rosa”の導入でその性格を大きく変えようとしている。
パフォーマンスが向上したが、バッテリー駆動時間に悩む
ファンが導入されたことで、CF-T7の電源管理とパフォーマンス設定にもファンの回転数が設定項目として登場する。新たに導入された「ファン制御ユーティリティ」では、ファンの動作モードを「標準」「高速」「低速」といった3種類から選択できるが、これは、筐体内の温度で変化するファンの回転速度を速くするか(高速モード)、遅くするか(低速モード)にシフトするだけで、具体的な回転数やファンの完全停止は設定できない。実際に、低速モードに設定して空調が動いていない静かな部屋で使用してみたところ、回転するファンの音は十分聞こえてくる状況だった。回転数が変化するだけに、どうしても音が気になってしまう。
開発スタッフが「従来から40%向上しました」と語る3D性能は、その比較対象がIntel GMA 950であるので、ディスクリートGPUのような3Dパフォーマンスは望めない。それでもWindowsロゴが従来のVista BasicからVista Premiumに変わっているので、Windows Aeroの動作は「保証された」と考えてよい(ただし、標準のオンボードメモリ1Gバイトの構成ではシングルチャネルで動作していることに注意したい)。
CF-T7では、電源管理モードとして「パナソニックの電源管理」「省電力モード」「高パフォーマンスモード」がアイコントレイからすぐに選択できるように用意されている。それぞれのモードでベンチマークテストを行った結果を参考までに掲げておく。CPU-Zの表示をチェックしている限り、省電力モードではCPUの動作クロックは800MHzに抑えられている一方で、高パフォーマンスとPanasonicモードではベンチマークテストが走っている限り1066MHzを維持していた。
パナソニックの電源管理 | 省電力モード | 高パフォーマンス | |
---|---|---|---|
PCMark05 PCMarks | 2329 | 1927 | 2381 |
PCMark05 PixelShader | 12.6 | 11.8 | 12.7 |
PCMark05 VideoEncoding | 190 | 142 | 189.6 |
PCMark05 Image Decompression | 14.2 | 11.1 | 14.3 |
PCMark05 HDD VirusScan | 19.5 | 15.1 | 16.5 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 High | 1106 | 869 | 1093 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 Low | 1616 | 1202 | 1614 |
気になる消費電力は、アイドル状態で液晶ディスプレイの輝度を「最低輝度」「中輝度」「最高輝度」のそれぞれに設定したときにおけるシステム全体の消費電力をユーティリティソフト「YbInfo」でチェックしたほかに、ファン制御コントローラの設定と電源管理モード設定の組み合わを「ファン制御コントローラ=低速&省電力モード」「ファン制御コントローラ=高速&高パフォーマンスモード」のそれぞれで、PCMark05の「Multithreded Test 3」を実行している最中のシステム消費電力を、こちらもYbInfoでチェックした。
電力管理モード | システム全体の消費電力 |
---|---|
アイドル&高輝度(20レベル/20段階) | 9050mw |
アイドル&中輝度(10レベル/20段階) | 5090mw |
アイドル&最低輝度(1レベル/20段階) | 4840mw |
省電力モード&低速&PCMark05 Multithreaded Test3 | 14950mw |
高パフォーマンス&高速&PCMark05 Multithreaded Test3 | 18870mw |
カタログスペックで12時間を超え、実利用でも日中ずっとACなしで運用してもバッテリーが残っている“T”シリーズは、バッテリー駆動時間を重視する携帯ノートPCユーザーにとって“唯一無比”の選択肢であった。CF-T7では、“T”の存在意義ともいうべきバッテリー駆動時間を捨てて、“Santa Rosa”という最新のプラットフォームとパフォーマンス、そして堅牢性能と軽量化を手に入れたことになる。
従来モデルで行っていた「軽量バッテリーキャンペーン」が好評だったことを考えると、多くのノートPCユーザーにとって、12時間を越えるバッテリー駆動時間はオーバースペックであって、それよりも軽量化を望んでいたことは理解できる。バッテリー駆動時間よりも軽量化と最新プラットフォームを優先したCF-T7の進化は、市場のニーズを的確に反映しなければならない商品企画の方向として妥当なものであろう。“W”に対する“T”の差別ポイントとして、法人需要に支持されている「価格の安さ」も残っている。
古くからの“T”シリーズ支持者としては、なかなか納得しがたいというのが、正直な気持ちであるが、ビジネスユーザーのための携帯ノートPC市場が求める方向性としては、CF-T7は、正しく進化したと評価すべきなのだろう。
関連キーワード
Let's note | 松下電器産業 | バッテリー | Intel | ノートPC | Santa Rosa | 防水 | Core 2 Duo
関連記事
ついにファンレス断念──“Santa Rosa”を全面採用したLet'snote新モデル発表
松下電器産業は、9月27日にLet'snote LIGHTの新製品を発表した。フルモデルチェンジとなる「W」「T」シリーズだけでなく、「R」シリーズでも大きな変更が施された。2007年PC秋冬モデル特集:Vistaで迎える実りの秋
国内PCベンダーが2007年秋冬モデルを発表した。世代を重ねるVista搭載PCの実り具合はどうだろうか? 新モデルの情報をまとめた。松下、「Let'snote ジェットブラックモデル」の発売日を延期――新発売日は8月1日
7月14日発売予定としていた「Let'snote ジェットブラックモデル(CF-R6AWBAJP)」の発売日が延期された。銀から黒へ──Let'snoteジェットブラックモデル登場
松下電器産業は、6月12日Let'snote LIGHT CF-R6AWBAJPを発表した。Let'snote LIGHT R6をベースに筐体の色をブラックにそろえたモデルだ。マイレッツ倶楽部限定で販売される。CPUに超低電圧版デュアルコアを搭載したLet's note3モデルが登場
松下電器産業は、4月25日にLet's note LIGHT「R」「W」「T」の新製品を発表した。出荷開始は5月18日の予定。松下電器産業、“Santa Rosa”なLet'snoteを発表
松下電器産業は、5月10日にLet'snote LIGHT Yシリーズの新製品「Let'snote LIGHT CF-Y7」を発表した。“Santa Rosa”世代のCentrinoをLet'snoteラインアップで初めて採用したのが特徴だ。落としてもこぼしても無問題──タフなLet's note R6に注目せよ
Windows VistaとデュアルコアCPUを全面的に採用したLet's note新製品の発表会では、「劇的な」変貌を遂げた「R6」の説明にほとんどの時間が費やされた。Let's noteはLet's noteでありつづける
「大画面」「高画質」「高音質」なノートPCが増えていくなか、Let's noteだけは頑固なまでにその道を極めていった。「すでにR1で完成していた」という彼らは、これからどこへ向かうのだろうか。我が道をひた走る“唯我独尊”サブノート――松下「Let's note LIGHT CF-R5」
軽くて頑丈、しかも小さくて長時間駆動するノートPCがほしい……。そのような夢のようなPCを目指したのが、松下電器産業の「Let's note LIGHT CF-R5」だ。松下、「Let's note」10周年記念モデルを限定販売
松下ネットワークマーケティングは、同社製ノートPC「Let's note」の誕生10周年を記念したモデル2製品「CF-T4タブレットモデル」「CF-Y5指紋センサーモデル」を、同社直販サイト「マイレッツ倶楽部」にて発売する。今度の「Let's note」は水にも強い――松下が2006年PC夏モデルを発表
松下電器産業は、2006年PC夏モデル「Let's note」4シリーズを発表した。全モデルがIntel Core Duo/Soloにアーキテクチャを一新したほか、キーボードへの液体こぼし対策として防滴仕様を施した機種も登場している。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.