ThinkPadのキーボードが打ちやすい理由――大和のエンジニアかく語りき:ThinkPad 600は完全ではなかった?(3/3 ページ)
文字が入力しやすいノートPCの代表格といえるThinkPad。そのキーボードとトラックポイントのデザインは、細部に至るまで考えた末での結論だった。
ThinkPad 600のキーボードは反省材料
説明会の最後では、堀内氏が「機密事項で話せないことが多い」と前置きをしながらも、今後半年から1年間に向けての展望を語った。
キーボードのキーフィーリングは「現時点でも悪くないが、今後はもっとよくしたいし、やりすぎない程度でもう少し“切れ”を出したい」という。また、キーボードの耐久性は「現時点でキーの耐久性は完ぺきといえるほどであり、機械で高速にキーを連打する試験を1カ月続けて、100万回や200万回といった回数を超える入力テストにも耐えている」としながらも、「長期利用でキートップ表面にてかりが生じたり、文字の印刷がツメでたたくと割れてしまう問題もあり、改善していきたい」とのこと。他社が採用するレーザー刻印に関しては「耐久性はあるが、文字の読みにくさが課題」とした。そして、「ThinkPadはプロのツールに違いないが、キーボードは地味であればよいというのではなく、ちょっとは“華”も持たせたい」と締めくくった。
なお、堀内氏に過去に手がけたThinkPadのキーボードで最も完成度が高いと思うものはどれかと質問したところ、「現行機のキーボードが非常にトータルバランスに優れたものだと思う。ただし、1年後は違っているかもしれない(笑)」との答えだった。ノートPCの低価格化にともない、キーボード自体にかけられるコストは昔よりも下がっているが、そのぶん低コストでも高品位な部材が手に入るようになり、キーボードの質は維持できているという。
余談だが、堀内氏が初期に手がけたThinkPad 600は、IBM時代にコストをしっかりかけて開発した完成度の高いキーボードとして知られており、いまでもマニアの語り草になっているほどだ。しかし、堀内氏は「いま思えば、ノートPCのキーボードとしてバランスが悪い部分もある。キーフィーリングに力を入れた半面、ネジ止めの場所が多すぎるし、設計者として製造やメンテナンス性をもっと考える必要があったと反省している」と予想外に厳しい自己評価だった。こうした厳格な開発姿勢こそが、ThinkPadにおけるキーボードの高品質を支えているのだろう。
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