レビュー

ケータイで自宅PCの動画を再生──ドコモの「ポケットU」はどこまで使える?(5/5 ページ)

ドコモのFOMA端末向け新サービス「ポケットU」が始まった。iモード経由で自宅のPCへのアクセスを可能にし、PC内にある動画や音楽データ、オフィスドキュメントを自分の携帯で再生・表示できるようになる。その使い勝手はどうか、早速導入して試した。

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やや古い機種ではどうなる?

 では少し古い端末ではどうなるだろう。今回は5Mバイトiモーションに対応する「N902iX HIGH-SPEED」と、ぎりぎり対応機種に含まれる「P902i」を用いてみよう。

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 N902iX HIGH-SPEEDはP905iと異なりMPEG-4/AVCに対応しないので、“高画質”でも映像コーデックはMPEG-4になり、P905iの“標準”と同じビットレート、フレームレートの設定のようだ。映像はP905iの“標準”が、N902iXの“高画質”モードに相当。解像感は確保されてるものの、動きが激しいシーンはフレームレートが7fps程度まで低下する。ただ、音声はP905iの“高画質”と同設定でなかなか良好だった。“長時間”はP905iの“長時間”と同じ設定のようで、当然、画質の印象も同じほどであった。

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 このほか、P905iと異なるのはiモーションの最大容量。N902iX HIGH-SPEEDは最大5Mバイトである。“高画質”モードの設定はP905iよりやや低めではあるが、やはり2分ほどで分割される。ちなみに“標準”モードでも3分40秒ほどだ。音楽データは“高音質”モードで5分ほど/5Mバイトなので、多くの曲は分割されずに済みそうではある。


 もう一方のP902iは、iモーションの最大サイズが500Kバイト。P905iのわずか20分の1であるのが気になるところ。

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 N902iX HIGH-SPEEDと同様に、映像コーデックはMPEG-4となり、“高画質”モードでも映像ビットレートは108kbps、フレームレートは7.5fpsと低く抑えた設定だった。これはかなり不満の残りそうなクオリティだろう。なお音質はP905iと変わらないのでなかなか良好なのだが、映像に対してバランスが悪い。ちなみに“普通”“長時間”モードはあえて触れる必要もないだろう。

 やはり容量の上限500Kバイトでは、ポケットUの利用においてはかなりつらい。“高画質”モードはわずか15秒、“長時間”モードでも36秒おきに分割されるうえ、高速に通信できるFOMAハイスピード(HSDPA)でないためダウンロードも遅い。楽しむ以前にストレスがたまってしまい、使いものにはならないというのが正直な感想だ。

コンセプトには賛成、利用するならHSDPA端末で

 

 ここまで見てきたとおり、このポケットUは使用する端末によって利便性も大きく変わってくるサービスだ。“どこでもTV”のように動画を楽しむなら、少なくとも10Mバイトiモーション対応の端末、音楽を再生する場合は5Mバイトiモーション端末でないと快適に使えない。902i/703iシリーズは“使えないことはない”が、筆者はドキュメントファイルの表示以外は実用レベルでないと感じた。

 このほかにもPC側、端末側ともに改善の余地はかなりある。

 まずPC側はコンテンツの変換に非常に時間がかかる。例えば30分のテレビ番組(実質27分程度)の変換にAthlon64 X2 3800+(2GHz)搭載PCで2時間以上かかり、音楽データの変換も1曲あたり1分ほど要した。例えば、音楽や静止画ファイルに関しては事前に変換しておかなくても、いまどきのPCであればリアルタイムで変換したとしてもさほどタイムラグなく扱えることも多い。PC側の要求スペックをあまり高くしたくない配慮はあると思うが、そのわりにはポケットUソフトの変換性能はややお粗末だ。このほか、(それほど負担でない人も多いとは思うが)事前変換したファイルで別途保存容量を必要とする問題もある。PCの要求スペックが上がるの仕方ないとして、スペックの高いPCを所持するユーザー向けの選択肢としてリアルタイム変換を行う設定なども考慮してほしいと思う。

 端末側においてはiアプリによる対応も望みたい。iアプリであれば、例えば端末のiモーション容量制限で分割された動画をユーザーの手間を余計にかけることなく連続再生させたり、音楽をフォルダ単位、つまりアルバムとして連続再生するような機能を設けることも可能になるだろう。キャリアとして、あまりに延々とストリーミング再生されては……という危惧もあるとは思うが、それならば端末に保存済みのコンテンツを便利に再生できる機能を付けてほしいとも思う。

 ただ、今後のさらなる発展が望めるサービスではある。動画や音楽再生に積極的に利用するのであれば、10Mバイトiモーション対応端末でないと不便を感じることが多そうな点には釘をさしておきたいが、導入に必要なのはインターネットに常時接続されたPCだけと、導入は簡単。さらにネット家電との連携を想定したDLNA対応も予定されている。ポケットUソフトが稼働するPCがDLNAサーバ内のコンテンツを読み込んで変換することにより、結果的にDLNAサーバにあるコンテンツも自由に携帯で閲覧できるようになるだろう(このほか、iTunesのプレイリストに含まれる音楽ファイルを登録し、ポケットUで利用できるようにする「プレイリストプラグイン」、PCで録画したテレビ番組をシーンや話題ごとに分割するという「テレビぴたっと プラグイン」などのプラグインがある)。

 このような意味で、“現時点では”不満が多くあるものの、そのコンセプトはおもしろく、携帯をより便利に楽しく利用できるようになる多くの可能性を秘めている。今後の進展に期待したい。

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