Silverthorneはどこに行くのか:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
IDF 2008のメインテーマはNehalemだったが、もう1つの主役はAtom。ビジネスとして多く語られるのは“NetbookのCPU”だが、最初は“MIDのCPU”が注目されていたはずだ。
インテルはいまのAtomで満足している?
以上のような工夫を積み重ねて、Atomは低消費電力を実現すると同時に、消費電力あたりの高性能を実現した。インテルは、TDP3ワット以下のCPUとして最高の性能を発揮すると述べている。ただ、それと同時に、同世代のノートPC用CPUとは性能的にオーバーラップしないとも明言している。言い換えれば、Atomの最高性能が、同世代のCeleronローエンドモデルを上回ることはない、という意味になる。
これは、Atomがインテルの既存のビジネス(ノートPC向けCPUのビジネス)と競合しないようにする意味では当然だ。また、AtomがMID向けで、PCに近いNetbookやNettopは一種の「余技」であることを考えても不思議ではない。
実際、インテルが2009年のリリースを予定している“Moorestown”(開発コード名)プラットフォームに採用される次世代Atom“Lincroff”(開発コード名)では、CPUコアあたりの性能はほぼ横ばいになるとみられている。このことから、インテルはAtomの性能にとりあえず満足していて、必要な水準に達していると評価していると考えることができる。
CPUコアの性能向上を図る代わりに、Lincroftではメモリコントローラ、グラフィックスコアをCPUに統合する。メモリコントローラの統合による性能向上や、グラフィックス機能の上積みという点では性能向上を果たすことになるが、処理性能という点で大きなものにはならない。
その一方、CPUへメモリコントローラを統合することで、既存のチップセットとの互換性を断ち切ることになる。Lincroftを搭載するシステムには専用のチップセット“Langwell”(開発コード名)が必要になる。Langwellは、汎用のATAインタフェースではなく、専用のSSDインタフェースが採用されるといわれているので、PCやNetbook、Nettop向けのCPUではないという見方もある。逆に、5ボルト(もしくは3.3ボルト)動作が必要なParallel ATAを廃止することで、製造プロセスの微細化と、それによる低消費電力化が期待される。
Moorestownプラットフォームの開発目標が、消費電力を下げることと、実装面積をさらに小さくすることにあるのは確実で、特にアイドル状態における電力を現在のプラットフォーム(Menlow)の10分の1以下にするとインテルは述べている。これらのことから、Moorestown は携帯電話(スマートフォン)や小型のMIDへの採用を目指していると考えて間違いない。
“Diamondville-DC”のために必要なこと
問題は、現時点でMIDの市場がほとんど立ち上がっていないことだ。インターネット上のサービスと連携する必要があることに加え、ワイヤレスWAN接続のインフラ整備など、MIDが普及するにはまだ時間がかかる(消費電力などの点で、現行のMenlowプラットフォームでは厳しいということもあるかもしれないが)。すでに存在しているPCのエコシステムに乗ることで、好調な立ち上がりを見せているNetbookのようにはいかない。MIDの普及という点で、Moorestownにかけられる期待は大きいが、外部要因に依存する部分はさらに大きい。
MoorestownがMIDや携帯電話機向けのプラットフォームであるとすれば、この世代のNetbookやNettopはどうなるのだろう。考えられるのは、現行Atom(Diamondville)のデュアルダイ化だ。Diamondvilleは、発表時からデュアルコア版(Diamondville-DC)の存在がウワサされており、1世代をこれでしのぐというのは十分考えられる。そして、これを可能にするには、モバイルCeleronもデュアルコア化する必要がある。そうでなければ、CeleronとAtomの性能が逆転してしまうからだ。すでにデスクトップPC向けのCeleronがデュアルコア化していることを考えれば、これも大きな障害にはならないと思われる。
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