「金融危機ってなに?」という中国地方都市の消費意欲:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
中国株大暴落や世界金融危機は、中国の生産現場や個人投資家に少なからず影響を与えた。中国の膨大な消費を支えてきた“主役”たちの現状を探る。
ところがどっこい、中国人はタフだった。
そんな広東省や上海や北京の富裕層を巡る暗い話題をよそに、そのほかの地方都市では、高級レストランがいつもと変わらず繁盛している。筆者が滞在している内陸部は、もともと所得水準が低いために個人投資家がほとんどいない。それゆえ、今回の株暴落や金融危機で損失を被った人はほとんどいなかった。さらに、外国へ輸出する工場も外資系企業も少なく、現地の経済活動は、地元で完結する個人経営の商店やレストランであったり地場の企業であったりする。そのほかの産業も電力会社や石油会社など、外国の金融危機とは無縁の世界だ。
そのような内陸部の都市では、誰に聞いても「金融危機があるのは2009年からかもしれない。でも、いままで給料は上がっていたのだから、この先も給料が上がり続けるだろう」というとても前向きな答えが返ってくる。実際、そのような都市にある電脳街では金融危機の影響をほとんど感じさせない。繁華街では多くの人が買い物を楽しみ、デパートにできたその都市で初めてとなるDHCの店舗ではたくさんの女性が高いサプリメントや化粧品を競うように購入していた。国美電器や蘇寧電器といった大手家電量販店も最近になって、株の暴落や金融危機の影響とは無縁の地方進出に注力することを発表している。
中国株の暴落、中国不動産バブルの崩壊、世界金融危機の3連コンボで直接被害を受けたのは、人口比でいえばごくごく少数の富裕層と、外資系企業が多く集まる上海や北京のエリートたち、そしてその対極ともいえる農村部から出てきた低所得の労働者たちだ。日本企業が中国で売ろうとしているPCや家電、化粧品を購入する一般的な地方都市の住民にはあまり影響が出ていない。
金融危機の影響が軽微な“中流の中国人”は、今後もこれまで連載で紹介してきたような、世帯の収入を合算して、統計上の平均給与をはるかに超えるPCやデジカメや大画面テレビや携帯電話を購入していくだろう。価格帯でいえば、日本円で数万円クラスまでの製品に対して購入意欲が旺盛で、勢いが鈍化する可能性はあれ、急激に市場が冷え込むことは考えにくい。ただし、日本円で10万円を超える薄型大画面テレビや、デジタル一眼レフ、ノートPCの上位機種といった、“富裕層御用達”となると、その市場の冷え込みがはっきりと出てくるかもしれない。
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