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早くも登場AM3──DDR3対応“Deneb”は自作PCユーザーの“本命”なのか?イマドキのイタモノ(1/3 ページ)

“DDR2”Phenom IIから1カ月。DDR3に対応したPhenom IIが登場する。しかも自作PC向けには「810」「720」「710」のみ。その微妙なパフォーマンスを検証しよう。

DDR3 SDRAMに対応したAM3プラットフォーム

 2009年1月に、AMDから45ナノメートルプロセスルールを導入したDenebコア「Phenom II X4」が登場したが、対応するハードウェア環境は従来のAM2+プラットフォームのままであったため、Denebコアを採用したPhenom II本来の性能を発揮しているとはいえなかった。しかし、2009年2月9日にようやくAM3プラットフォーム環境に対応したPhenom IIシリーズが発表された。今回発表されたAM3対応モデルのラインアップで、リテール市場に並ぶのは「Phenom II X4 810」、「Phenom II X3 720 Black Edition」、「Phenom II X3 710」の3種類が予定されている(なお、日本市場においてPhenom II X3 710は店頭販売を行わない)。今回はクロック変更が可能な「Phenom II X3 720 Black Edition」と「Phenom II X4 810」のサンプルとASUSのAM3プラットフォーム対応マザーボード「M4A78T-E」(AMD 790GX+SB750チップセット搭載)の環境を用意し、AM3プラットフォームとPhenom IIシリーズの実力を検証していく。

 今回発表されたAM3プラットフォーム対応CPUの最大の特徴は、DDR3 SDRAM(DDR3-1333MHz)に対応したことで、メモリ関連の性能が従来のAM2環境より向上した点にある。なお、AM3プラットフォーム対応CPUはコア内部にDDR2 SDRAMのメモリコントローラも内蔵しているため、マザーボード側のBIOSが対応していればAM2+プラットフォーム対応マザーボードでも利用できる下位互換性も特徴として挙げられる。

製品名 コアクロック HTバスクロック 1次キャッシュ 2次キャッシュ 3次キャッシュ メモリサポート
Phenom II X4 810 2.6GHz 4.0GT/s 128KB(64KB+64KB)×4 512KB×4(2MB) 4MB PC2-8500(DDR2-1066)~PC3 (DDR3-1333MHz)
Phenom II X3 720 Black Edition 2.8GHz 4.0GT/s 128KB(64KB+64KB)×4 512KB×4(2MB) 6MB PC2-8500(DDR2-1066)~PC3 (DDR3-1333MHz)
Phenom II X3 710 2.6GHz 4.0GT/s 128KB(64KB+64KB)×4 512KB×4(2MB) 6MB PC2-8500(DDR2-1066)~PC3 (DDR3-1333MHz)
製品名 プロセスルール トランジスタ数 ダイサイズ TDP Max.TEMP コア電圧
Phenom II X4 810 45ナノ 7億5800万 258平方ミリ 95W 71度 0.875~1.425ボルト
Phenom II X3 720 Black Edition 45ナノ 7億5800万 258平方ミリ 95W 73度 0.875~1.425ボルト
Phenom II X3 710 45ナノ 7億5800万 258平方ミリ 95W 73度 0.875~1.425ボルト
今回評価作業で使用したPhenom II X4 810(写真=左)とPhenom II X3 720 Black Edition(写真=中央)。AM2+とAM3とのピン数を比較する(写真=右)。左がPhenom II X4 920で右がPhenom II X4 810になるが、AM2+対応のPhenom II X4 920のほうがピン数が多くなっている

 クアッドコアモデルであるPhenom II X4 810は動作クロックが2.6GHz、3次キャッシュメモリの容量は4Mバイトになる。先日発表された同じクアッドコアのPhenom II X4 920、同 910と比べると、3次キャッシュメモリの容量が2Mバイトほど少ない。このほか、Phenom II X4 920と同 910のコア電圧が0.875~1.50ボルトであったのに対し、Phenom II X4 810では0.875~1.425ボルトとわずかに下げられているほか、TDPも95ワットに引き下げられている。最大周辺温度はPhenom II X4 920が62度であったのに対してPhenom II X4 810は71度に変更された。

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 Phenom II X3 720 Black Edition、Phenom II X3 710は、Denebコアで初めてのトリプルコア対応モデルとなる。Phenom II X3 720 Black Editionはクロック倍率の変更に対応した上位モデルで、動作クロックは2.8GHz、3次キャッシュメモリの容量は6Mバイトになる。Phenom II X3 710は動作クロックが2.6GHz、3次キャッシュの容量は6Mバイト。コア電圧とTDPについては95ワットでPhenom II X4 810と同じだが、最大周辺温度については73度に設定されている。

CPU-Z(1.49)で取得したCPUの情報。左からPhenom II X4 810、Phenom II X3 720 Black Edition、Phenom II X3 710相当。CPU-Zが未対応であることから、表記はSocket AM2+となっているが、データの取得はAM3に対応したM4A78T-Eで行っている
評価作業にはASUSのAM3プラットフォーム対応となる最新製品「M4A78T-E」を用いた(写真=左)。また、チップセットなどほぼ同一のAM2+プラットフォーム対応の「M3A78T」も用意した(写真=右)。外観は似ているが、M4A78T-EではSerial ATAコネクタが3個から5個に増えるなど細かな仕様変更が行われている

メモリの違いによる性能の変化は?

 では、実際にベンチマークテストを使ってPhenom II X4 810とPhenom II X3 720 Black Editionの性能を見ていこう。なお、Phenom II X3 710については、Phenom II X3 720 Black EditionのCPUのクロック倍率を変更して2.6GHzにしたものを用いているので参考データとして扱っていただきたい。今回の比較構成としては、AM2+プラットフォーム対応モデルのPhenom II X4 920とCore 2 Quad Q9450(2.83GHz)、Core i7 920(2.66GHz)のデータを併記している。

 ただし、Core i7のシステム構成はDDR3 SDRAM(DDR3-1066)1Gバイト×3の3Gバイト構成、AM2+プラットフォーム版のPhenom IIがDDR2 SDRAM(DDR2-800)2Gバイト×2であるのに対し、AM3プラットフォームではDDR3 SDRAM(DDR3-1333)の2Gバイト×2の構成で測定を行っている。また、ベンチマークテスト内容については、前述のマザーボードなどの環境が異なる以外は前回のPhenom IIレビューと同じ内容にした。

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