2012年のPC業界を占う:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)
激動の2111年が終わり、2012年が始まった。今年のPC業界における大きなトピックはIntelの次世代CPU(Ivy Bridge)とWindows 8だが、この2つはPCの何を変えるのだろうか。
Windows 8タブレットの開発メーカーは絞り込まれる
一方、“Windows 8対応PC”という視点で見ると、大きな変化が起こる可能性がある。なぜなら、Windows 8で強化されるタブレット型端末について、開発メーカーの絞り込みが行われるからだ。なお、タブレット型以外のPCに関しては、従来と同じでメーカーごとに対応の優先度を変える予定はない。
しかし、タブレット型端末はWindows Phoneと同様、アプリケーションプロセッサベンダー、PCベンダーの双方との協業で、消費電力やパフォーマンス、機能の最適化を行う。この際、アプリケーションプロセッサベンダーから、パートナーとなる端末メーカーは2社までと希望が出されているという。
するとARM系はQualcomm、TI、NVIDIAがそれぞれ2社ずつサポート、さらにIntelが規模の大きさを生かして4社をサポートしたと仮定しても10社にしかならない。ここにAMDが加わる可能性もあるが、Windows 8タブレットの第1陣として優先的に開発情報を得られるPCベンダーの枠は8~12社しかない。
2011年9月末の段階で、この中に含まれていたのは東芝のみ。技術力や開発力、商品企画力などは考慮されておらず、グローバルでの販売シェアによって決められており、筆者の知る限り、ソニーや富士通は含まれていなかった。
なお、NECパーソナルコンピュータはLenovoとの事業統合により、Lenovoと情報共有を行う形で第1陣の開発に加わっている。また、SamsungはPC分野でのシェアは低い一方、Android端末での実績やARMアーキテクチャを用いた端末開発の実績などから、Windows 8タブレット開発の第1陣に加わるとの情報もある。
いずれにしろ、どのOEMに対しても同じWindowsと開発情報を提供してきたマイクロソフトにとって、これは大きな方針転換だ。
Windows 8タブレットの縛りはUltrabookまで波及するか
今回は“よりよいタブレット型端末を作るため”との大義名分があるが、この施策がUltrabookの領域にまで広がる可能性もある。
Ultrabookは、第1世代の見た目やスペックから“MacBook Airのモノマネ”とみられることが多いが、本来はモバイル端末としての使い勝手を、スマートフォンなどのレベルにまで高めることが目的だ。
Intelが2013年に投入する新プロセッサのHaswell(開発コード名)では、スマートフォンのように常時ネットワークに接続した状態で待機する際の消費電力を2011年の20分の1にすると発表している。同様の改善はWindows 8にも仕込みがされており、HaswellとWindows 8の機能はある程度、同期が取られていると考えられる。
しかし、通信機能も含めた製品パッケージ全体で、道具としての使い勝手を高めるといったアプローチがタブレット型に有効なのであれば、こうしたUltrabookにも有効なはずだ。Mac OS Xが組み合わせるトラックパッドの機能進歩と二人三脚で操作性を改善したのと同じように、Windows 8+Ultrabookでも同様のやり方がいずれは必要になるだろう。また、ARMプロセッサのパフォーマンスが上がってくれば、ARMプロセッサを搭載したノートブック型のWindows 8機もいずれは登場するはずだ。
Haswellの投入は2013年だが、2012年末の段階でこうした製品開発の枠組みがどうなっていくかは、今後のPCが進む方向を占ううえで重要なポイントになると思う。
もし、AndroidやWindows Phoneと同様の優先順位を付けた開発手法が広がっていくと、今度はグローバル市場向けの戦略モデル(今回のケースではUltrabook)とは異なるコンセプトの製品に、面白いものが登場するかもしれない。
例えばパナソニックはこれまでも、Intelが主導してきたプラットフォームに乗った製品開発はあえてせず、どの時代にも「Let'snote」シリーズの一貫したポリシーのもとに製品を作ってきた。
“Ultrabookを作るための材料”が与えられたとき、Ivy Bridgeの世代、Haswellの世代において、それぞれどのような製品が生まれるのか。規模を追わず、独自性を追うメーカーの動き、決断にも注目したい。
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