第4回 かなーり心地よいHelixの「変形+着脱」機構、各モードのメリットを再確認してみる:「ThinkPad Helix」ロードテスト(2/2 ページ)
ThinkPad Helixには、ラップトップモード、スタンドモード、タブレットプラスモード、タブレットモード、4つのスタイルに変形する機構がある。これを使っていくうえで基本となるのは、やはりラップトップモードとタブレットモードになるだろう。
本体はイジェクトボタン一発でスマートに取り外し可能
では、タブレットとして利用する際はどうだろうか。まずは変形機構から説明していこう。
ラップトップモードからタブレットモードへは、ヒンジ左にあるイジェクトボタンを「カチッ」と押して取り外す。一度押すと外すまで機構が解放され続ける仕組み──従来ThinkPadシリーズのディスプレイオープンラッチと同等の動きとなっているので、極めてスマートに扱える。
なお、システム的な動きとしてはUSB機器で言うところの「デバイスの取り出し」をメカニカルに実現しているイメージで、それでいてUSB機器のようにタスクトレイアイコンから“取り外し”の操作をしなくて済む分、よりシンプルだ。装着してもひと呼吸程度のわずかな時間でキーボードが認識される。接続性に少々クセがあるBluetooth接続などより安心して運用できるのはとても印象がよい。
ヒンジ部には、左右端に本体の支え+装着時のガイドとなる2本のドッキングガイドがある。硬質なマグネシウム素材を用いており、本体を装着してもカッチリ安定、簡単にはブレることがない安心感がある。このほか、2つのI2C BUS(正差しおよび逆差し、双方に対応するため同じものが2つある)と、2基のファンが搭載されている。2基のファンが(室温の)冷気を吸い、発熱する部品のある本体内部へ冷風を吹き込む仕組みとなっている。ファン自体は小型なので高負荷時にはそれなりの音量になり、静かな場所ではファンノイズは相応に聞こえるが、通常使用時はそこまで気にはならない範囲だ。
さてこの着脱機構、ThinkPadユーザーの感覚としては、ThinkPad Xシリーズにおけるインタフェース拡張オプション「ウルトラベース」活用時とイメージが重なる。このため、Helixもこのウルトラベースのような感覚で使うのもよいかもしれない。キーボードドックにACアダプタや各種USB機器を集約し、持ち運ぶ時はアンドックしてタブレットとして使う。「ThinkPad USB トラックポイントキーボード」などを用意して外付け活用するのもアリである。
なお、DC入力端子は本体にもキーボードドックにも、両方付いている(キーボードドックにもバッテリーがあるので、それを単体充電することも可能だ)。さらにキーボードドックにはUSB 3.0やDisplayPortなどのインタフェースも備えている。DisplayPortがあるため、DisplayPortーHDMI変換アダプタなどとともにプロジェクターに接続してプレゼンテーションできるのはもちろん、USB端子はもちろん標準のStandard-A形状なので、プレゼンデータを収めたUSBメモリや外付けHDDを直接差してアクセスすることも普通に行える。本機は普通のWindows 8 ベースのマシンだけに、一般ビジネスシーンにおいて不都合や心配、互換性の問題が発生する可能性はAndroid/iOSタブレットより明らかに低い。この点はやはり業務マシンとして、改めてかなりのメリットだと思う。
もう1つ、インタフェースというよりデザイン面でのことだが、本体下面に引き出し式のラベルがある。これには各種通信規格の認証マークや、IntelやMicrosoft Windowsの認証ロゴが記載されている。これら認証マークはPC本体のどこか「見える」部分にマークしなければならないもので、一般的なノートPCはユーザーがあまり見ない底面にあることがほとんどだ。ただ、裏面も“見える”ピュアタブレットにおいては「格好悪い」……というか、業務そのものには基本的には必要がない。それならどうするか──について、ThinkPadはこうするという“らしさ”が感じられるのも意外と心地よいものである。
軽いタブレットモードはプレゼンのスタイルを変える
タブレットモードにおいては、まず「重量」が肝心だ。ThinkPad Helixのタブレット時重量は約0.835キロ。11.6型サイズなだけに、7型クラスはおろか、10型クラスのタブレットと比べても明らかに重いのは否めない。参考までに、10.1型サイズのWindows 8搭載ピュアタブレット「ThinkPad Tablet 2」と比較しても235グラムほど重い。一方で、同じ11.6型+第3世代Coreプロセッサーを採用する日本エイサー「ICONIA W700D」の約950グラム比では若干軽かったりするわけで、Ultrabookとしてのパフォーマンスをしっかり発揮するWindows 8タブレット、としてまずまずの重さに抑えてあると評価したい。
さてタブレットとしては少々重いかもしれないが、よくあるクラムシェル型ノートPCよりはおそらく軽量だ。なにせ、800グラム台となると、ソニー「VAIO Pro 11」(約770グラム、タッチパネル搭載モデルは約870グラム)、NEC「LaVie Z」(約875グラム)など、数えられるほどしかない。そして少人数でのプレゼンテーションなら、このタブレットモードがかなりの効果を発揮する。
なによりノートPCより持ちやすく、軽量で、そして見せやすい形状のため、立ったまま、手にしたまま実施することが苦にならず、そのままタッチ操作でスムーズに進行できる。タッチパネルによってプレゼンテーションのやり方がかなり変化するので、今後「相手により効果的に伝えられる」ようになるはずだ。こういうことだけでもビジネスの道具として導入を検討するに値するものである。
さらに、もう1つ他のタブレットモードもある。「タブレット+(プラス)モード」は、キーボードドックへ本体を逆向きに差し、ディスプレイ面を上にして閉じるスタイルだ。重量はラップトップモードと同様で、重量のみをとらえるとあまりメリットがないようにも感じるかもしれないが、バッテリーを内蔵するキーボードドックと装着済みということで、バッテリー動作がさらに長時間となるメリットがある。ちなみにThinkPad Helixは、タブレット単体で最大約8時間、キーボードドック装着時で最大約12時間の動作が可能。タブレット+モードは、長時間のプレゼンテーション、その際に例えば(バッテリー消費量の多い)ディスプレイ輝度を最大にして実施しなければならないシーンなどにおいても、たいていの会議には、しかも2~3回連続した会議であっても安心して/(バッテリーが不安という会議には)余計な心配はせずに挑めるだろう。
最後にパフォーマンス。タブレット+モードは3段階のcTDPのうち、タブレットモードとラップトップモードの中間にあたるTDP 13ワットで動作する。タブレット形状でPCパフォーマンスを求めるシーンは少ないが、ハイビジョンクラスの動画再生シーンや、タッチ操作のゲームを楽しむ時などにはタブレット+モードを活用したい。ラップトップ、タブレットの両モードと比べると使用頻度は少ないだろうが、“いざというとき”にこれができると大変重宝すると思う。言い訳が許されないビジネスシーンにおいて、こういったフトコロの深さ/万能さを持っていることがThinkPad Helixで得られる大きなメリットなのである。
(続く)
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