レビュー

そのデータ保存法で本当に問題ない?――自宅兼オフィスのNAS環境を見直す本田雅一流 NAS導入のススメ(前編)(1/2 ページ)

ミラーリングのNASにRAID 5のNASを組み合わせた2台体制。大切なデータを失う危険性は限りなく低いと思われたが……。

・→後編:注目すべきはハードよりソフト――自宅兼オフィスのNASを一新した効果は?

 これまでもNAS(Network Attached Storage)で“遊んできた”人たちには、何を今さらという話かもしれないが、この夏はすっかりNASにハマって楽しく遊んでいる。長くPC業界で取材や執筆を続けてきたが、実のところNASに関しては「単なる実用品」としてしか捉えていなかった。

 もちろん、NASは実用品でもある。大容量のストレージを提供するという主目的からすれば、求められるのは第一に信頼性、次に存在そのものを意識しない透明性のようなものだろうか。しかし、使い始めてみるとプラスαの要素がとても大きいと感じるようになってきた。

 今回は2回に分けて、筆者が高機能NASに投資するに至った経緯や、どのようにライフスタイルのクオリティが向上したか(大げさ?)などについて書いていきたい。

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※記事初出時、NASの正式名称表記に誤りがありました。おわびして訂正いたします(2013年8月29日2時)

気付いた時にはもう遅い。転ばぬ先に交換が吉

 もともと我が家では、バッファロー製のNASが2台稼働していた。選び方は実に安直なものだ。それまでは専用サーバを置き、ハードウェアRAIDコントローラでストレージを構成。普段の仕事に必要な端末内のデータやシステム設定情報などは、バックアップツールで別のHDDに保存しながら、“アーカイブ”と言えるぐらいの長期保存ものは2台のNASに二重化して放り込んでおけばいい、という程度のテキトー運用である。

 さすがに20年ぐらいPCの仕事をしていると、IDEからSATAへと続くクライアント機器向けHDDの信頼性に、RAID 5(3台以上のHDDを使うことで1台のHDDが故障しても情報を失わない構成)を組み合わせると、最初の1台が故障した時点で高確率でリビルド(故障したHDDを交換した後、元の状態に復旧させる処理)時に事故を起こすことは知っている。

 だから、2台のうち、当時増えていたホームサーバ機能付きの1台は、長期的な印象を確かめるため「お試し」でRAID 5対応モデルを導入したが、もう1台はリビルド処理が軽く、その気になれば健全なHDDからすべてを取り出せるRAID 1(ミラーリング。同じ情報を2台のHDDに記録する二重化手法)対応モデルとし、(作業用スペースを除き)その2台に同じ内容をアーカイブしていた。

 まぁ、いくらSATAでのRAID 5が危険と言ったところで、同じ内容をミラーリング機能付きのNASに保存しておきゃ、失われることはないよね、と家族の思い出も含めて、電子的な我が家の倉庫として何の気なしに、家族で共有していたのである。

 ところが、このデータ。あとちょっとで失われる危険にさらされてしまった。この事例だけで、特定メーカーあるいはコンシューマー向けのRAID NASに大問題がある、などと騒ぐつもりはないが、1つの事例として読んでほしい。

筆者宅で稼働していたNAS「LS-Q2.0TL/R5」(500GバイトHDD×4台内蔵の2Tバイトモデル)

 まずは4台のHDDでRAID 5を構成しているNAS(LS-Q2.0TL/R5)で、1台のHDDに故障が発生。新しいドライブに入れ替えてリビルドをかけた。この作業は“運よく(SATAのRAID 5だもの)”完了し、運用を開始したのだが、数カ月すると同じスロットの(すなわち最も新しい)HDDにエラーが発生した。

 何やら、きな臭い印象をここで持ったが、気を取り直して再び新しいHDDに交換してリビルド。次も運よくうまくいった。きっとここで運を使い切ったのだろう。間もなく同じようにHDDにエラーが発生すると、あとは泥沼だった。

 今度はリビルドが途中で異常終了する事態に。しかし、同じスロットにトラブルが続くことに疑いを持ち、今度はHDDを新品にせず、スロット位置を入れ替えてRAIDを再構成してみた。以前に交換したHDDも、実はそのまま問題なく別のデスクトップ機で使えてしまっていたので、もしやHDDは健全でシステム側のトラブルではないか? と思ったのだ。

 すると、再構築後にしばらく運用していると、“同じHDD”ではなく“同じスロット”でトラブルが起きた。ははぁ~ん、なるほど。

 別途、内容を同一化していたもう1台のNASがあったため、割と面倒臭いチャレンジを何度も繰り返せたが、我慢強く試したかいあって、どうやらシステム(ファームウェアか、ハードウェアなのかは不明だが)側の問題だろうということが特定できた。もっとも、仕事用の環境ということを考えれば、手間と時間をかけている時点で「NG」だとは思うけれど。

筆者が利用していたもう1台のNAS「LS-W2.0TGL/R1」(750GバイトHDD×2台内蔵の1.5Tバイトモデル)

 ということで、LS-Q2.0TL/R5を修理に出すか、あるいはベアボーンで別のNASを買ってくるか……と思案していたのだが、悪いことは重なるものだ。もう1台のNAS(LS-W2.0TGL/R1)も起動しなくなってしまった。

 実はこの本体、これが同じトラブルの2回目だ。前回はHDDを1台取り出し、その中からデータをバックアップ(バッファローのNASはXFSというファイルシステムで記録されているので、互換ドライバを使えばWindowsやMac OS Xでも読める)した後、修理に出していたのだが、今回も再起動しなくなったのだ。理由は分からないが、ほかで正常に動作しているのであれば、ソフトウェアではなくハードウェアのどこかを疑うべきなのだろう。

 とはいえ、これだけ続くとサスガに全面的なシステムの入れ替えへと傾かざるを得ない。

 冷静に考えれば、(ややズレてるとはいえ)ほぼ同じ時期に購入した異なる機種のNASが、同じ時期に問題を続けて起こすのは運の悪さだけではないだろう。実際、Twitterでのボヤキに反応する人たちの言葉を見ていると、同じようなトラブルを経験している人は意外に多いようだ。

 これまでの数度のトラブルを考えれば、もっと先にコンシューマー向けRAID NASの全廃を決めるべきだった。悪い予感を感じていたなら、悪くなる前に安心を得ていたほうがいい。まぁ、2つ並べておきゃ大丈夫だろう? と考えていた筆者の負けである。転びかけたなら、転ぶ理由があったということ。ということで、今度こそコンシューマー向けNASを全廃とした。

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