NASの法人モデルは家庭用と何が違うのか?:SOHO/中小企業に効く「NAS」の選び方(第2回)(2/2 ページ)
メーカー各社のNAS製品には、家庭向けと法人向け、それぞれ別のラインアップが存在している。これらは何が違うのか? 昨今の法人向けNASが搭載するユニークな機能の数々とともに見ていこう。
NASがあればこんな便利なこともできる(ただし一部製品のみ)
NAS製品に最も重要なデータ保護機能や障害発生時の通知機能、さらにはドライブの信頼性にまつわる機能は次回詳しく紹介するが、今回はその前に、昨今のNASに搭載されている付加機能について紹介しておく。
どのメーカーのNASにも搭載される機能ではなく、差別化を目的に特定メーカーのある製品にだけ搭載されている、いわばプラスアルファの機能だ。「NASがあればこんなこともできる」という一例としてお読みいただきたい。
まず1つはネットワークカメラと連携しての録画機能。低価格化が進むネットワークカメラは、スタンダードな監視用途のほか、ショールームやセミナーの配信など、さまざまな用途に用いられているが、それ自体に記録領域を持っている製品は少ない。それゆえ、ストリーミングでの配信にとどまっているケースがほとんどだ。
ネットワークカメラ対応のNASであれば、LAN上の複数のネットワークカメラを指定し、録画データの保存が行える。ただし、カメラおよびNASの双方が対応している必要があるため、対応機種は限られており、異なるメーカーの製品同士の相互接続性は高くない。この機能を使うのであれば、まずは対応製品を探すところから入ったほうがよいだろう。また、台数が増えるとライセンスが必要になる場合もあるので、大規模な運用を考えている場合は注意したい。
Webサーバ機能を備えている製品もある。前述の通り、NASはそれ自体が一種のサーバなので、ホームページのデータを置き、外部からのアクセスが可能なようにポートを開ければ、Webサーバとしても機能する。MySQL(オープンソースのデータベースの1つ)などを利用することも可能だ。もっとも、トラフィックが増加するとストレージへの快適なアクセスが妨げられるので、ファイルサーバなどと共用するのであれば、部署内でイントラネットのサーバを立てたり、データベースを動かすといった用途が現実的だろう。
iTunesの音楽データを保存したり、動画を保存してDLNA(Digital Living Network Alliance)対応機器から呼び出すといった、マルチメディア機能を備えた製品もある。これらは家庭用と法人向けの境界線があまり明確でない海外製NASに多くみられ、国内メーカーの法人向けNASに実装されているケースは少ないが、例えばNASにデモ動画を保存してショールームのバックグラウンドに設置しておき、来訪者にタブレット上で再生してもらうといったニーズはあるだろう。
このほか、プリントサーバもNASの機能としては一般的だ。背面のUSBポートにプリンタを接続することで、ネットワーク内の各PCから印刷できる機能である。ネットワーク対応の複合機を導入しているオフィスならあまり意味はないが、USB接続のプリンタを共有して使っているSOHO事業者であれば、プリントサーバを買い足さずにプリンタが共有できる。NASは電源を落とさずに連続稼働させることが多いので、そうした意味でもメリットがある。ただし、Windowsのみ対応というケースがほとんどで、かつ双方向通信に対応しないため、インク残量のチェックなどの機能が使えない点には注意したい。
一部のNAS製品に搭載される、オレガの「VVAULT(ブイボルト)」というストレージ仮想化機能も面白い。これは複数のNASを束ねて1つの領域として利用できる機能で、頻繁にアクセスするデータを最新のNASの領域へ、そうでないデータを古いNASの領域へと自動的に配置してくれる(ティアリング)ので、NASの買い替え後も古いNASを有効活用しつつ、パフォーマンス面では高性能なNASの恩恵を受けられる。容量の関係で新しいNASを追加したい場合は、検討に値するだろう。
次回は、目的に合ったNAS製品を選ぶコツとして、データ保護機能や障害発生時の通知機能、さらにはドライブの信頼性にまつわる機能など、NASの基本機能まわりを詳しく紹介する。
関連記事
「PC USER Pro」
SOHO/中小企業に役立つPC、スマートデバイス、周辺機器、データ通信、ソフトウェア、サービスなどの注目情報をお届け! 仕事で使う製品をしっかり選びたい方へ!SOHO/中小企業に効く「NAS」の選び方(第1回):今さら聞けない「NAS」のメリットとデメリット
PCはもちろん、スマートフォンやタブレットのデータ保存先としても注目度が高まっている「NAS」。その導入に際して、最初に知っておきたいメリットとデメリットを紹介しよう。SOHO/中小企業に効く「タブレット」の選び方(第4回):仕事に即戦力なタブレットを選んでみた――iPad以外も実力派モデルが続々
これまでは各OSごとにタブレットの特徴や、目的ごとの向き不向きを紹介してきた。今回は仕事向けのタブレットをOS別にピックアップしていこう。SOHO/中小企業に効く「タブレット」の選び方(第3回):仕事がはかどるタブレットは、iOS、Android、Windowsのどれか?
iOS、Android、そしてWindowsという3つのプラットフォームから、業務に使うタブレットをどのように選べばいいのか? プレゼンや文書作成などの利用目的ごとに、それぞれの向き不向きを探っていこう。SOHO/中小企業に効く「タブレット」の選び方(第2回):iOS、Android、Windows──それぞれのタブレットを知って正しく選ぶ
タブレットの導入を考えた場合、iOS、Android、Windowsの中からどのOSを選ぶかが重要になる。これらの特徴について、利用者および管理者の視点から紹介しよう。SOHO/中小企業に効く「タブレット」の選び方(第1回):タブレットはノートPCの代わりになる? ならない?
ノートPCに代わり注目を集めつつあるタブレットだが、あらゆる面で優れているわけではない。特徴を知って導入しないと、かえって業務効率を落としてしまうだろう。今回はノートPCと比較した場合の、タブレットのメリットとデメリットについて考察する。SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(4):“脱・Windows XP”のPCを選んでみる――XPサポート終了まで3カ月
Windows XPのサポート終了まで3カ月を切った。前回までは移行すべきPC環境のポイントをまとめてきたが、今回は仕事で使うPCをパーツ単位でチェックしつつ、主要メーカーのラインアップから具体的な製品をピックアップしよう。SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(3):Windows XP搭載PCの買い替えで考慮すべき問題――ノートPC化から消費税まで
ビジネス用途で古いWindows XP搭載PCを買い替える場合、考慮すべき問題がいくつかある。ハードウェアについては、デスクトップからノートへの転換が1つ。またWindows XPのサポート終了とともに訪れる消費税の増税もチェックしておく必要がある。SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(2):Windows XPから乗り換えるべきは“7”か“8.1”か
Windows XPのサポート終了に際して、どのようなPC環境に移行すべきか? まずはWindows 7か、Windows 8/8.1か、次のメインOSを選択する必要がある。SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(1):今さら聞けない「Windows XP」サポート終了問題
この新連載では、SOHO/中小企業向けにPCやタブレット、周辺機器といった製品の選び方を紹介する。今回のテーマはビジネスPCの買い替えだが、まずは基礎知識としてWindows XPのサポート終了問題(いわゆる2014年問題)を確認しておこう。日本マイクロソフト、中小企業向けの「Windows XP 移行対策セミナー」を各地の商工会議所で開催
日本マイクロソフトは、商工会議所と連携した中堅/中小企業向けの「Windows XP 移行対策セミナー」の開催を発表。XPサポート終了までに全国20カ所以上での実施を予定している。個人XPユーザー向け施策も年末実施:支払いは来年度でいいですよ──「XPサポート終了」まで7カ月、MSが中小企業支援のための新施策
XPサポート終了まであと7カ月。マイクロソフトがWindows XPからの移行を改めて呼びかけた。コスト/予算を壁とする中小企業に対し「発生コストは、来年度まで支払いを延期」といった新たな施策を用意し「XPからの移行早めに」と促した。「じゃあいつ移行すればいいの?」「今すぐです」――日本マイクロソフト、Windows XPからの移行呼びかけ
Windows XPのサポートがいよいよ2014年4月に終了する。サポート終了まで1年となり、日本マイクロソフトはサポート終了を改めて告知し、新OSへの移行を呼びかけた。法人向けにはOS移行を支援する大規模なキャンペーンも実施する。鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8」:「2014年問題/XPサポート終了」って何?
2014年4月9日の「Windows XPのサポート期間終了」まであと1年、というかすでに11カ月を切っている。今回はWindowsに関する「OSのサポート期間のギモン」を解説する。XPは2014年4月にサポート終了:あなたのOSはいつまで現役?――Windowsのサポート期限をまとめてみた
Windows XPのサポート終了日まで残り1年を切った。それではWindows Vista、Windows 7、Windows 8のサポートはいつまで受けられるのか、現状をまとめよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.