“仕事で使える”「USBメモリ」のセキュリティ対策――大事なデータを漏らさないため:SOHO/中小企業に効く「USBメモリ」の選び方(2)(2/2 ページ)
大容量データを持ち運ぶための手軽なツールとして幅広く利用されているUSBメモリは、個人だけではなく法人での導入例も多い。今回はビジネスでUSBメモリを使うならば知っておきたいセキュリティ向上のための機能を見ていこう。
容量は? ボディの形状は? 法人用ならではの製品選び
以上、法人向けのUSBメモリで利用できるさまざまな付加機能を見てきた。これらが利用できる具体的な製品は次回まとめて紹介するが、その前に法人向けUSBメモリを購入するにあたって、容量や形状、さらにウイルスチェック機能のライセンスの年数など、どのように選べばよいかをチェックしておこう。個人向けUSBメモリの選び方とはまた異なる、独自のトレンドがある。
容量は?
USBメモリが世に登場して以来、その容量は数メガ単位からギガバイトへと急速にシフトしてきたが、ここ数年は容量帯にそれほど目立った進化はなく、落ち着いているのが現状だ。個人向け製品では128Gバイト以上の大容量モデルも登場しているが、法人向け製品の上限はほぼ32Gバイトであり、その中で売れ筋が4~8Gバイトのモデルというのは、ここ数年ほとんど変わっていない。
理由はいくつもあるが、そもそもコピー対象となるファイルのサイズが変わらない以上、すでに実用上十分な容量に達してしまったというのが、1つの大きな要因だろう。オフィス文書はおおむね1Mバイト以下、画像ファイルにしても数Mバイトというファイルサイズの“相場”が変化しない以上、容量だけが増えてもあまり意味はないというわけだ。最近はUSB 3.0対応モデルの登場で解消に向かいつつあるが、読み書きの速度が一定であれば、容量が増えれば転送時間がかかりすぎて実用的でなくなるという問題もある。
また法人ユースの場合、あまりにも大容量すぎると、必要以上のデータを持ち出す原因になりかねない。必要なファイルが収まらないのは困るが、余裕がありすぎるのも管理上問題があるというわけだ。むやみに大容量のモデルをチョイスしてコストが膨らむよりは、小容量のモデルを選んでおいたほうがローコストで済み、かつ万一の場合の被害を最小限に抑えられる。
ところで、法人向けUSBメモリで容量を選ぶ際に気をつけなくてはいけないのが、ウイルスチェックソフトなどが本体の容量の一部を占めているケースだ。メーカーおよびモデルによっても異なるので一概には言えないが、例えばウイルスチェックソフトのアップデートファイルだけで200~300Mバイトの領域を占有しているケースはざらにあるので、総容量だけを見て購入したところ、目的のデータがすべてコピーできなかった、というケースが発生しうる。
これらソフトウェアが占める容量は、製品ページやパッケージに記載しているメーカーとそうでないメーカーがあるので、事前にチェックしにくいのが難点だ。コピー対象となるファイルの容量が明確に決まっている場合、ギリギリの容量を選ぶのではなく、ある程度の余裕を持った容量の製品を購入したほうがよいだろう。
デザインや形状は?
USBメモリといえば、バリエーション豊かなボディデザインが特徴だ。それゆえキャラクターグッズやノベルティとしての製品も多数存在するが、法人用のUSBメモリは基本的にはどれも無骨なデザインを採用している。カラーバリエーションもほぼ皆無と言っていい。
また昨今では各社の製品に共通して、ある共通の特徴を備えるようになりつつある。その特徴とは「キャップレス」だ。本体側面のレバーをスライドさせることでUSB端子を露出させる構造により、コネクタを保護するキャップを不要にしている。これは主にキャップの紛失防止という観点によるもので、個人向け製品の一部にも見られる仕様だが、こと法人用のUSBメモリに限ると、キャップのある製品はほぼ絶滅しつつある状況だ。
また、個人向けではおなじみのUSBドングルに似た超小型タイプも、法人向けのラインアップには存在しない。これはハードウェア暗号化のためのコントローラを搭載するには、どうしてもそれだけの基板のサイズが必要になるのが主な理由だ。USBメモリ自体、本体サイズが小さくなればなるほど紛失のリスクも高まるわけで、法人向けとしてはある程度大柄な製品のほうが向いており、事実そのようなラインアップになりつつある。今後もこの傾向は大きくは変わらないだろう。
ライセンスの年数は?
もう1つ、製品選びにあたって頭を悩ませがちなのがライセンスの年数だ。前回紹介したように、法人用のUSBメモリでは、ウイルスチェック機能が1つの目玉機能になっている。ウイルスチェック機能は一般的なアンチウイルスソフトと同様にライセンスの有効期限があり、それを過ぎるとパターンファイルが更新されない。大抵の場合、ライセンスは追加購入が可能だが、最初にUSBメモリを購入する際、何年分のライセンスが付属したモデルを買っておくかは、頭を悩ませるところだ。
これについてはさまざまな考え方があって一概には言えないが、ひとまず使い勝手を試すのであれば、最も短い1年ライセンスでよいだろうし、予算に余裕がある、あるいは期末の予算で一括償却したいなどの事情があるのなら、3年もしくは5年ライセンスというチョイスもありだろう。追加で予算が必要になることさえ許容できれば、追加のライセンスさえ買えば問題はない。
1つ念頭に置いておきたいのが、ハードウェアの保証期間だ。多くのケースではアンチウイルスソフトのライセンス期間と等しいハードウェア保証期間が設定されているが、追加購入が可能なアンチウイルスソフトのライセンスと異なり、ハードウェアの保証期間は延長できない場合が多い。そのため、アンチウイルスソフトのライセンス期間が長めの製品を購入しておき、ライセンスが切れると同時にハードも買い替えるというのが、賢い選択といえる。
関連キーワード
USB | ReadyBoost | USBメモリ | 暗号化 | ウイルス対策ソフト | 情報漏洩 | SOHO/中小企業に効く製品の選び方
関連記事
「PC USER Pro」
SOHO/中小企業に役立つPC、スマートデバイス、周辺機器、データ通信、ソフトウェア、サービスなどの注目情報をお届け! 仕事で使う製品をしっかり選びたい方へ!SOHO/中小企業に効く「USBメモリ」の選び方(1):今さら聞けない“仕事で使える”「USBメモリ」選びの2大ポイント
大容量データを手軽に持ち運べるUSBメモリは、個人だけではなく、ビジネスでの導入例も数多い。そんな“仕事で使える”USBメモリを選ぶうえで知っておきたい、個人向け製品とは大きく異なる2つの特徴とは?SOHO/中小企業に効く「無線LANアクセスポイント」の選び方(後編):仕事に即戦力の「無線LANアクセスポイント」を選んでみた――利用規模別のおすすめは?
オフィスのオール無線化から来客への提供に至るまで、法人へ導入されるケースも多い無線LAN(Wi-Fi)。法人用無線LANアクセスポイントの選び方を紹介する本連載の後編は、利用規模別のおすすめ製品例を紹介しよう。SOHO/中小企業に効く「無線LANアクセスポイント」の選び方(前編):「無線LANアクセスポイント」の法人モデルは家庭用と何が違うのか?
オフィスのオール無線化から来客への提供に至るまで、法人へ導入されるケースも多い無線LAN(Wi-Fi)。法人用無線LANアクセスポイントの選び方を紹介する本連載の前編は、家庭用製品との違い、および特徴となる機能をチェックしていく。SOHO/中小企業に効く「プロジェクター」の選び方(第3回):即戦力の「プロジェクター」を利用シーンごとに選んでみた
会議や取引先へのプレゼンに欠かせないプロジェクター。そんなビジネス用プロジェクターの選び方を提案する本連載の最終回は、3つの利用シーンごとにおすすめ製品例を紹介しよう。SOHO/中小企業に効く「プロジェクター」の選び方(第2回):今さら聞けない「プロジェクター」選びのポイント(その2)
会議や取引先へのプレゼンに欠かせないプロジェクター。そんなビジネス用プロジェクターの選び方を紹介する本連載の第2回は、前回に引き続き、製品選定の基本ポイントをチェックしていく。SOHO/中小企業に効く「プロジェクター」の選び方(第1回):今さら聞けない「プロジェクター」選びのポイント(その1)
大画面を手軽に投写できるプロジェクターはプレゼンの強い味方だ。そんなビジネス用プロジェクターの選び方を紹介する本連載の第1回は、製品選びの基本をチェックしていく。SOHO/中小企業に効く「ディスプレイ」の選び方(第5回):ノートPCと相性がいい「外付けディスプレイ」を探し出す
液晶ディスプレイの選び方を紹介する本連載もついに最終回。ノートPCの外付けディスプレイに適した製品を選ぶポイントと、具体的なおすすめ機種を見ていこう。SOHO/中小企業に効く「ディスプレイ」の選び方(第4回):作業効率が大きく向上――「マルチディスプレイ」向きの液晶ディスプレイを選ぶ
業務効率を高めるのに有効な「マルチディスプレイ」。今回はマルチディスプレイ環境の構築に適した製品を画面サイズ別に見ていこう。SOHO/中小企業に効く「ディスプレイ」の選び方(第3回):見落としがちな「マルチディスプレイ」に適した液晶ディスプレイの条件とは?
デスクトップPCとの接続はもちろん、ノートPCの外付け用途も増えている液晶ディスプレイ。そんな液晶ディスプレイの選び方を紹介する本連載の第3回は、「マルチディスプレイ」に適した製品選びのポイントを見ていこう。SOHO/中小企業に効く「ディスプレイ」の選び方(第2回):サイズ別に“仕事がはかどる”液晶ディスプレイを選んでみた
液晶ディスプレイの選び方を考える連載の第2回は、法人ユースに適した製品のポイントに加えて、具体的なおすすめモデルを紹介していく。SOHO/中小企業に効く「ディスプレイ」の選び方(第1回):意外に知らない「液晶ディスプレイ」のトレンド
デスクトップPCとの接続はもちろん、ノートPCの外付けディスプレイとしての用途も増えつつある液晶ディスプレイ。この連載では、主にSOHO/中小企業を対象として、意外に奥深い液晶ディスプレイの選び方を紹介する。SOHO/中小企業に効く「UPS」の選び方(第4回):即戦力なUPSを選んでみた(中小企業編)――重要情報を停電で失わないために
「無停電電源装置(UPS)」の基礎知識から、機器に合った製品選びまで、順序立てて解説する本連載。最終回は、中小企業を想定した具体的なオフィス環境を挙げ、それに合致したUPSを選定する。SOHO/中小企業に効く「UPS」の選び方(第3回):即戦力なUPSを選んでみた(SOHO編)――不意の停電もこれで安心
「無停電電源装置(UPS)」の基礎知識から、機器に合った製品選びまで、順序立てて解説する本連載。第3回は、SOHOでの具体的な機器構成例を挙げ、それに合致したUPSを選定するための手順を紹介する。SOHO/中小企業に効く「UPS」の選び方(第2回):「UPS」を正しく選ぶコツ――容量の計算方法は? 給電方式とは?
「無停電電源装置(UPS)」の基礎知識から、機器に合った製品選びまで、順序立てて解説する本連載。第2回は、UPSの選定で知っておくべき、容量の計算方法や給電方法の違いを紹介する。SOHO/中小企業に効く「UPS」の選び方(第1回):意外と知らない「UPS」の基礎知識――もしもの停電から大事なデータを守るため
本連載では「無停電電源装置(UPS)」の基礎知識から、機器に合った製品をチョイスするための計算方法まで、順序立てて解説していく。第1回はUPSの用途と、つなぐべき機器、つないではいけない機器を紹介しよう。SOHO/中小企業に効く「NAS」の選び方(第5回):仕事に即戦力な「NAS」を選んでみた――利用人数別のおすすめモデルは?
ビジネス向けにNASの選び方を紹介する本連載もいよいよ最終回。松竹梅のグレードに分けて、それぞれ注目すべき製品を挙げてみようSOHO/中小企業に効く「NAS」の選び方(第4回):「NAS」はLinuxで十分か、それとも……
NASの特徴や選び方、さらに最近のトレンドなどを紹介してきた本連載。今回は存在感を増しつつあるWindows Storage Server搭載のNASが、Linux搭載のNASと何が違うのかをチェックしよう。SOHO/中小企業に効く「NAS」の選び方(第3回):NAS選びに失敗しないための3大チェックポイント
NASに求められるのは何よりデータをしっかりと保護し、HDDの故障時にもきちんと復旧できることだ。今回は3つのキーワードに絞って、法人用NASを選ぶ際のチェックポイントを見ていこう。SOHO/中小企業に効く「NAS」の選び方(第2回):NASの法人モデルは家庭用と何が違うのか?
メーカー各社のNAS製品には、家庭向けと法人向け、それぞれ別のラインアップが存在している。これらは何が違うのか? 昨今の法人向けNASが搭載するユニークな機能の数々とともに見ていこう。SOHO/中小企業に効く「NAS」の選び方(第1回):今さら聞けない「NAS」のメリットとデメリット
PCはもちろん、スマートフォンやタブレットのデータ保存先としても注目度が高まっている「NAS」。その導入に際して、最初に知っておきたいメリットとデメリットを紹介しよう。SOHO/中小企業に効く「タブレット」の選び方(第4回):仕事に即戦力なタブレットを選んでみた――iPad以外も実力派モデルが続々
これまでは各OSごとにタブレットの特徴や、目的ごとの向き不向きを紹介してきた。今回は仕事向けのタブレットをOS別にピックアップしていこう。SOHO/中小企業に効く「タブレット」の選び方(第3回):仕事がはかどるタブレットは、iOS、Android、Windowsのどれか?
iOS、Android、そしてWindowsという3つのプラットフォームから、業務に使うタブレットをどのように選べばいいのか? プレゼンや文書作成などの利用目的ごとに、それぞれの向き不向きを探っていこう。SOHO/中小企業に効く「タブレット」の選び方(第2回):iOS、Android、Windows──それぞれのタブレットを知って正しく選ぶ
タブレットの導入を考えた場合、iOS、Android、Windowsの中からどのOSを選ぶかが重要になる。これらの特徴について、利用者および管理者の視点から紹介しよう。SOHO/中小企業に効く「タブレット」の選び方(第1回):タブレットはノートPCの代わりになる? ならない?
ノートPCに代わり注目を集めつつあるタブレットだが、あらゆる面で優れているわけではない。特徴を知って導入しないと、かえって業務効率を落としてしまうだろう。今回はノートPCと比較した場合の、タブレットのメリットとデメリットについて考察する。SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(4):“脱・Windows XP”のPCを選んでみる――XPサポート終了まで3カ月
Windows XPのサポート終了まで3カ月を切った。前回までは移行すべきPC環境のポイントをまとめてきたが、今回は仕事で使うPCをパーツ単位でチェックしつつ、主要メーカーのラインアップから具体的な製品をピックアップしよう。SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(3):Windows XP搭載PCの買い替えで考慮すべき問題――ノートPC化から消費税まで
ビジネス用途で古いWindows XP搭載PCを買い替える場合、考慮すべき問題がいくつかある。ハードウェアについては、デスクトップからノートへの転換が1つ。またWindows XPのサポート終了とともに訪れる消費税の増税もチェックしておく必要がある。SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(2):Windows XPから乗り換えるべきは“7”か“8.1”か
Windows XPのサポート終了に際して、どのようなPC環境に移行すべきか? まずはWindows 7か、Windows 8/8.1か、次のメインOSを選択する必要がある。SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(1):今さら聞けない「Windows XP」サポート終了問題
この新連載では、SOHO/中小企業向けにPCやタブレット、周辺機器といった製品の選び方を紹介する。今回のテーマはビジネスPCの買い替えだが、まずは基礎知識としてWindows XPのサポート終了問題(いわゆる2014年問題)を確認しておこう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.