「Apple Watch」であなたの生活はこう変わる:林信行が踏み込んで解説(5/5 ページ)
業界きってのアップルウォッチャーである林信行氏が、Apple Watchを実際に試着して得た雑感や、これからデジタルライフスタイルの変化に思いをはせる。
7億台のiPhoneも難病の治療に挑み始めた
さて、健康という観点で言うと、今回、アップルはもう1つ重要な発表を行った。なかなかメディアには取り上げられないが、新型MacBookやApple Watch以上に、人類にとって長期に渡って影響しそうな重大発表だ。
ティム・クックCEOはスペシャルイベントの中で、iPhoneの出荷台数が7億台に達したことを発表した。顧客満足度調査でも「満足しているユーザー」が99%に達し、名実ともに世界ナンバーワンのスマートフォンの名を欲しいままにしている。
このiPhoneは、今後、我々の生活により密接に結びついていく。中でも2015年で重要になるのが、iPhoneと車との結びつきを強くする「CarPlay」と、あらゆるスマート家電との連携をスムーズにする「HomeKit」、そしてユーザーの健康情報を管理する「HealthKit」の3つだとクックCEOは紹介した。
この3つめのHealthKitに関して今回、特に重要な発表があった。
HealthKitは、ユーザーが自分の健康状態の変化を可視化し、記録するための機能だが、この機能の発表以後、世界中の多くの医療機関がその可能性に注目し、医療の前進に役立てたい、という声が上がり始めた。こうして今回、発表されたのが「ResearhKit」、つまり、まだ治療方法の見つかっていない病気を研究するためのフレームワークだ。
具体的には、すでにこのフレームワークを使って喘息(ぜんそく)の研究をするAsthma Healthアプリ(Mount SinaiとWeill Cornell Medical CollegeとLifeMapで開発)、パーキンソン病の研究をするmPowerというアプリ(University of RochesterとSage Bionetworksが開発)、糖尿病を研究するGlucoSuccessというアプリ(Massachusetts General Hospitalが開発)、乳がんを研究するShare the Journeyというアプリ(Dana-Farber Cancer InstituteとUCLA Fielding School of Public Health、Penn Medicine、Sage Bionetworksで共同開発)、心臓血管病を研究するMyHeart Countsというアプリ(Stanford MedicineとUniversity of Oxfordが開発)の5つの研究アプリが同時に発表された。
ResearchKitで開発されたアプリは、iPhone 5以降のiPhoneやそれらと同世代のiPod touchで利用が可能だ。例えば、パーキンソン病研究のmPowerではパーキンソン病の気がある人が、日々、画面上の動く表示を指で追いかけてタップするという動作を行ったり、iPhoneのマイクに向かって「アー」という声を出すと、診断結果が集計されて病院に送られる。こうやって医療用のビッグデータを集め、病気の進行に関する情報から治療法の開発に役立てようというのがResearchKitだ。
プログラムに参加するか否かはもちろんだが、アップルは個人のプライバシーを非常に重く見ていて、間に入ってデーターをのぞき見ることは一切しないし、病院側に自分の健康状態に関するどの情報を公開するかもHealthKitの標準機能としてユーザーが1つ1つ選択して指定できる(例えば、HealthKitは単体で1日に歩いた歩数を集計しているし、スマート体重計やスマート血圧計などとも連動が可能)。
ResearchKitのフレームワークそのものは、アップルが囲い込むべき技術でもない、ということでオープンソース公開されている。今後、Androidなどにも移植されれば、より広範なリサーチデータが集められることになるだろう。
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