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ASUSTOR NASをメールサーバとして使うときの注意点仕事で使うNAS 第4回(2/3 ページ)

ビジネス向けNAS講座の連載第4回では、ASUSTOR NASにApp Centralで機能を追加し、メールサーバーとして活用するための具体的な方法を解説する。

「App Central」で機能追加

 NASはNetwork Attached Storage、つまりネットワーク接続型のストレージだ。しかし、ASUSTOR NASは単なるストレージにとどまらず、メディアサーバやプレーヤーなど、さまざまな機能を利用することができる。さらにユーザーが機能を追加し、ASUSTOR NASの利点である24時間稼働や省電力を生かしたサービス運用も可能だ。

 追加可能な機能は非常に多く、原稿執筆時点で正式版141種、β版10種が利用できる。今回はビジネス向けアプリケーションの中からメールサーバ(Mail-Server)を紹介する。

 メールは基本的にインターネットのどこから送信されたものでも受信できるサービスとして提供しなければならない、比較的ハードルの高いサービスだ。運用にあたってはドメインの取得、DNSの設定・管理も必要になる。今回はフリーのDynamicDNSサービスを使って、説明のため簡易的に導入を行う。

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 DNSはドメインの情報を答えたり、ドメインにホスト名がついたFQDNとIPアドレスの変換などをおこなうシステムだ。FQDNからIPアドレスに変換することを正引き、IPアドレスからFQDNに変換することを逆引きという。

 通常、正引きは固定IPアドレスに対して設定するものだが、ISPから割当てられるIPアドレスは動的IPアドレスであることが多く、一度DNSに設定しても再接続したときには再度設定し直さなければならない。

 さらに面倒なのがDNSのレコードの寿命(TTL)とキャッシュだ。FQDNをIPアドレスに変換するたびにDNSに問い合わせを行っていると、通信が多数発生してしまう。そこで一度問い合わせた情報はキャッシュに保存し、問い合わせの回数を減らす仕組みが備えられている。

 このキャッシュが有効な時間には8万6400秒(1日)が指定されることが多いが、この場合、DNSの設定を変更しても最悪1日間は更新されない可能性がある。再接続のたびにIPアドレスが変わってしまう動的IPアドレスでの運用では不都合だ。

 そこでキャッシュの時間を短くし、IPアドレスが変更された際にもなるべく迅速に新しい情報で更新できるようにしたのがDynamicDNS(DDNS)だ。ASUSTOR NASでは10種類のDDNSサービスに対応しており、あらかじめ登録しておくとASUSTOR NAS自身のグローバルIPアドレスが変更されたときに自動的にDDNSの設定を変更してくれる。

 今回は「changeip.com」でDDNSを登録し、それを使ってメールサーバを構築する。DDNSの設定は「設定」の「簡単アクセス」の中にある。DDNSサービスを有効にし、DDNSプロバイダからchangeip.comを選択、「今サインアップする」のリンクをクリックしてサインアップを行う。

 changeip.comにはいくつかのメニューがあるが、今回は無料の「Free DynamicDNS」を選択する。無料版だとchangeip.netなど、すでにchangeip.comが取得済みのドメインに対するサブドメインしか登録できない。自前ドメインで運用する場合はそのような制限のない、有料サービスを選択する必要がある。

設定>簡単アクセス>DDNSで設定する。今回はchangeip.comを使う。「今サインアップする」のリンクをクリック
changeip.comのサイトが表示される
右上の「Create Account」をクリックしてアカウントを作成する
フリープランならカード番号を入力する必要はないので安心
今回はフリープランを利用するため、左メニュー2つめの「Free DynamicDNS」の「More Info」をクリック
フリープランはChangeIP.COM所有ドメインのサブドメインのみだが、ChangeIP.COM所有のドメインは154個もある(原稿執筆時点)
指定したサブドメインが未登録の場合は登録に成功するのでCheckoutをクリックして先にすすむ
DNS HostingとDynamic DNS、2つのフリーサービスがカートに入っているので画面をスクロールした先にある「I have read and agree to the Terms of Service」にチェックを入れ、「Complete Order」をクリック

 サブドメインの登録が完了すると自動的にftp、@、wwwの3つのレコードが登録される。IPアドレスは操作を行っているPCのグローバルIPアドレスだ。これらはFQDNからIPアドレスを引くためのAレコードと呼ばれるものだが、メールサーバを運用する場合にはMXレコードを追加しなければならない。

 MXはMail eXchangeの略で、ドメインに対するメールを受け取るメールサーバを設定する。メールを送信する際にはメールアドレスの「@」の右側にあるドメインをDNSに問い合わせ、受信用のメールサーバを取得し、そこにメールを送るという手順になる。DDNSサービスの中にはMXが指定できないものもあるので注意してほしい。

右メニューから「DNS Manager」に移動。Free Domainsのところに登録済のサブドメインが表示されているのでそれをクリックする
あらかじめ3つのレコードが登録されている
Add Recordをクリック、Record TypeにMXを指定
MXレコードではHostname空欄、ValueにメールサーバのFQDNを指定
MXに指定したFQDNのAレコードも追加して完了

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