街中ロストガジェット:大阪の銭湯にある「人間乾燥室」を知っていますか(3/3 ページ)
大阪の銭湯で見かけた「熱が・光が・ミクロの風が 人間乾燥室」の文字。今の時代、「銭湯に通う」意味。
ついに人間乾燥室の中へ
「風があなたの体をサラリと仕上げます」とのこと。外の看板に書いてあった「光」はどこにいったのだろう。
人間乾燥室の中はこのようになっている。大人1人が立って入るのが限度の狭さで、ついSF映画のワンシーンを勝手に想像してしまう。人感センサーがあって中に立つと自動的に電源が入り、温風が送風口から吹き出してくる仕組みだ。
ハンカチで試してみたが、このくらいなびく。
感覚的には強風というほどでもなく、熱風というほどでもない。ほどよい風、ほどよい温度で、これだけで全て身体を乾かすのにはかなり時間がかかると思われる。軽く乾かしてタオルと併用したり、手の届きにくい背中などを頼るのに良いかもしれない。
お話を伺った番台の方も、「これ、あんまり乾かないよね(笑)」と言っていた。
今の時代、「銭湯に通う」意味
今回取材に応じて頂いたニューナショナル温泉だが、1985年に先代の銭湯から経営を引き継ぎリニューアルした際からこの屋号で経営しているという。
「家庭に風呂があるのが当たり前になっているので、せっかく来るほどの特別な楽しみがあるほうがいい」という考えもあり、バラエティに富んだ湯船や、人間乾燥室のような設備も用意しているとのことだ。
実際に常連さんは使っているのか? という問いには「意外にいる」とのこと。また子供などは喜んで入っているという。
メンテナンスは基本的に自前で行っているが、メーカーでも既に作っていないようなので壊れてしまったらそれっきりになってしまうかもしれないそうだ。
入り口にあった礎石を見ても分かるが、番台さんの言う通りニューナショナル温泉はナニワ工務店の施工とのことだ。人間乾燥室をはじめ、大阪の銭湯に電気風呂やジェットバスといった素敵な設備が多いのも、おそらく同社の力があってこそなのではないかと思われる。
ナニワ工務店のサイトを確認しても既に人間乾燥室のラインアップは存在しない。ニューナショナル温泉の他いくつかの今残っている銭湯でのみ楽しめるガジェットなのだろう。大阪を訪れた際はぜひ人間乾燥室の「熱・光・ミクロの風」を全身に体験してみてはいかがだろうか。
取材協力
【ニューナショナル温泉】
大阪府大阪市西成区天下茶屋1-10-2
営業時間:12:20~2:00
第二・第四金曜日休み
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