同じ価格なのに「欲しくない方のPC」を猛プッシュしてくる店員の謎:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
量販店でPCを買おうとした際、ほぼ同じ価格でありながら、A社とB社の選択肢のうち、店員がやたらとA社をプッシュしてくる……といったことがある。こうした場合、「インセンティブ」が絡んでいることが多い。
インセンティブを利用してお得に製品をゲットするワザとは?
さて、このインセンティブのシステム、実施されていることを見抜くことができれば、ユーザーも恩恵を受けることが可能だ。ユーザーの視点に立ったインセンティブの活用ワザを紹介して本稿の締めとしよう。
インセンティブは台数および集計期間が設定されているため、対象期間の終了間際になると、台数ノルマ達成間近の販売店では、赤字覚悟の投げ売りが見られるようになる。
前述のように、他店に影響を及ぼすような露骨な表示はできないので、表示金額はそのままで、接客したうえでの値引き、もしくはタイムセールでの値引きという手法が用いられる。仮にノルマが100台だとすると、80台目や90台目あたりからは過剰な値引きが加速する(もちろん残り日数にもよる)。
それゆえ客としては、店頭やチラシの表示、店員の振る舞いなどから「おっ、これはインセンティブの対象なのでは?」という製品を見つけた場合、店員が赤字価格を出しそうなタイミングを狙って買いに走れば、お得な価格で製品をゲットできる可能性が高い。
ただし、ノルマが達成されてしまうと値引きの必要はなくなってしまうので、セール期間の終了間際に行けばよいわけではなく、そもそもインセンティブ対象製品が必ずしも自分が欲しい製品とは限らないわけで、そこは運次第だ。
では、自分のお目当てがインセンティブ対象とは異なるもう一方の製品、つまり比較される側の製品だった場合はどうか。実はこの場合も、やりようによってはその製品をお得にゲットできる可能性がある。なぜなら、A社とB社が強力なライバルで、A社のインセンティブをB社が苦々しく思っているのであれば、対象期間が終了した段階で、B社もまたインセンティブを出してくる可能性が高いからだ。
店舗からしてみると、これまで口八丁手八丁でA社製品をプッシュしていたのが、翌月には言うことを180度転換してB社製品をプッシュすることになるわけだが、通常の販売で得られる利益を超える巨額のインセンティブの魅力には逆らえない。
また、本部のバイヤーにしても、いかにA社B社をうまく操ってトータルで高額のインセンティブを得られるかが、よいバイヤーの証であるため、結果的に途切れることなくインセンティブの対象製品が「おすすめ!」という貼り紙とともに売り場に並ぶことになるのだ。
こうしたケースでもう一つチェックすべきなのは、競合となる量販店の動向だ。A社がインセンティブを用いて拡販を行っている際、同じ量販店でB社もインセンティブを出して同時展開することは商慣習からしてあり得ないが、だからといってB社も手をこまねいているわけにはいかない。
この場合、先ほど述べたようにA社の後でインセンティブを出す方法以外に、競合となる別の量販店にインセンティブを出すという方法がよく使われる。つまり「特定の期間中、量販店XはA社製品をプッシュ、量販店YはB社製品をプッシュする」という構図に持ち込むわけだ。
実際には事前準備の期間もあるので、インセンティブの対象期間が完全に重複するわけではないが、この仕組みを知っていれば、インセンティブを行っているA社製品ではなくB社製品が欲しい場合、ライバルの量販店に行く、という臨機応変な対応が可能になる。
A社製品にインセンティブが出ている量販店でB社製品の値引き交渉を行っても対応はけんもほろろだが、ライバル店で「あっちの量販店でA社製品をここまで値引きすると言われているんだけど……」などと持ちかければ、交渉が成立する可能性は高い。どうしても欲しい製品がある場合、試してみる価値はありそうだ。
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