新しい「物語」を創る――Intelが夜空にドローンを浮かべる理由(2/2 ページ)
8月5日まで長崎・佐世保のハウステンボスで開催される「近未来・ドローンショー」。このショーにドローン300台を提供し、そのオペレーションを担当したのがIntelだ。そもそも、Intelがドローンを使ったライトショーに注力しているのはなぜなのだろうか。
「航空法」に合わせて飛行プログラムをカスタマイズ
ライティングショーで使われるShooting Starは、自動制御プログラムに従って飛行する。制御システムは、AscTechが開発した「Trinity」をベースとしており、PCから命令を出すと離陸から着陸まで、全自動で進行するようになっている。
しかし、全自動進行とはいえ不測の事態は起こりうる。そこで、安全対策と各国のドローン関連の法規制を満たすことを目的として、Intelではショーの際は必ずドローンの「パイロット(操縦士)」と「コパイロット(副操縦士)」を配置している。パイロットはドローンを監視し、トラブル発生時に安全に「墜落」させる役割を担う。コパイロットは、パイロットにトラブルが発生した際のバックアップを行う。ハウステンボスの富田直美取締役CTOによると、この体制は「日本の改正航空法よりも(要件面で)進んでいる」という。
不測の事態の対策は他にもある。制御プログラムには、二重に「ジオフェンス(地理境界線)」を施している。Shooting Starが第1段階のジオフェンスを出てしまった場合は、その内側に戻るように個別に指示を出す。さらに外側にある第2段階のジオフェンスを出てしまった場合は、モーターへの電源供給をカットして墜落させるようになっている。ジオフェンスはショーの観覧エリアから離れた場所に設定されているので、墜落しても観客の安全性は確保される。
また、墜落、あるいは他の機体や障害物に衝突した際に備えて、Shooting Starのプロペラ回りには衝撃を抑える保護ケージが取り付けられている。さらに、何らかの理由で本体がひっくり返った時に電源を強制的に切る仕組みも取り入れられている。
ドローン飛行に当たっての法規制は国によって異なる。ハウステンボスのライトショーでは、日本の法規制を踏まえて「120(縦)×120(横)、×150(高さ)m」の空間でドローンを展開するようにプログラミングされた。その上で、ハウステンボス周辺が長崎空港(長崎県大村市)の「外側水平表面」に入ることから、大阪航空局の認可を得てショーを実施している。飛行認可の取得に関する調整や事務手続きはハウステンボスとhapi-robo stが担当したという。
実際のショーの様子
ハウステンボスとhapi-robo stの両社は、ショーのコンテンツ制作も担当した。
平原綾香さんの「Jupiter」に乗せて、ドローンが「海の生物」や「地球」を描く様子はまさに圧巻である。以下に、場面転換シーンの一部を掲載する。
冒頭でも触れた通り、ハウステンボスのドローンショーは8月5日まで毎日開催している。最終日の8月5日には花火とともにドローンショーを楽しむこともできる。近日中に長崎・佐世保観光をする予定のある方は、ぜひドローンショーを行程に組み込んでみてはどうだろうか。
率直に言うと、ドローンショーを目の前で見るまでは「Intel」と「ドローン(エンターテインメント)ショー」をうまくつなげることができなかった。目の当たりにすると、Intelが注力するドローン事業のショールーミングをしつつ、ドローンショーという新たな産業を開拓できるという点で、合理的であることがよく分かる。
数年後、Intelは何を“する”会社になっているのだろうか。楽しみだ。
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