スマートスピーカー、流行のトリガーは「オフィス」?──「Alexa for Business」の可能性(2/2 ページ)
アマゾンの音声AIアシスタント「Alexa」搭載デバイスの「Amazon Echo」が流行するきっかけは「オフィスでの利用」かもしれない。法人向けサービス「Alexa for Business」から読み解いていく。
思い出してほしい。スマートフォンが普及しはじめたころは、イヤフォンに向かって話かける人を不審に思ったり、セルフィーという行為をいぶかしがったりしていた人もいるはずだ。しかし、今となってはどちらも気に掛ける人はあまりいない。
オフィスでスマートスピーカーに慣れた人は、その利便性に気付き、家庭用にもう1つ購入しようと考えるかもしれない。アマゾンはそのような狙いもあって、コンシューマー向けでさえ販売地域が限られているAlexaデバイスの矛先を「法人」に向けたのではないだろうか。
新たな「アプリ経済」の誕生
現在コンシューマー向けのスキルは全て無料で配布されており、これまではアプリ内課金のような仕組みもなかった。そのため、開発者は趣味でスキルを開発するか、企業から開発を受託するような状態にあった。
しかしアマゾンがAlexaのオープンソース化を進めてきたかいもあってか、開発者の数とともにスキルの数は増え続け、2017年に入ってから9月までに、その数は3倍近くにまで増加。
その流れを受け、2017年5月からアマゾンは人気ゲームスキルの開発者に対して金銭的な報酬を支払うようになり、8月にはゲーム以外のカテゴリーのスキルを開発する人たちにも同様のルールが適用されることが決まった。
そして、Alexa for Businessと同時に発表された新機能が「スキル内課金」。文字通りアプリ内課金のスキル版で、一部機能を有効化するためにユーザーがお金を支払うというもの。
まだ同機能はベータ版であり、一部のスキルにしか導入されていないが、これでようやく開発者がスキルで収益を挙げられるような仕組みが整った。
アマゾンは既にスマートスピーカー市場のシェアの7割を占めているといわれており、今後オフィスと家庭の両方でAlexaデバイスの普及が進めば、スキル市場はほぼアマゾンの独占状態となる。
比較までに、モバイルアプリ専門の調査会社App Annieによれば、2016年のアプリ市場の規模は1.3兆ドルで、2021年までにこの数字はさらに5倍にまで膨れ上がると予測されている。
デバイスの性質を考えると、単純なデバイスの数(そしてそこにインストールされるアプリ/スキルの数)という意味ではスマートスピーカーはスマートフォンに劣るかもしれない。しかし、法人での利用を想定したスキルが単価でアプリを上回る可能性は十分にある。
ビジネスの場でどれだけスマートスピーカーが真価を発揮できるのかにも期待したいが、それ以上にAlexa for Business、ひいては音声AIアシスタントによって経済全体へどのような影響が及ぶのか、また私たち消費者と機械の関わり方がどのように変化していくのかについて、引き続き注視していきたい。
ライター
文:行武温
編集:岡徳之(Livit)
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