「iPhone 11」「11 Pro Max」を試して実感したカメラ大幅進化 そして将来の強みとは:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)
9月20日の販売開始に先駆けて数日間、「iPhone 11」「iPhone 11 Pro Max」を試用した。進化したカメラの実力を中心として、実機に触れて試してみたインプレッションをお届けする。
9月20日に販売が開始されるAppleの「iPhone 11」および「iPhone 11 Pro Max」を一足先に試用した。まだ短期間であるため、端末の全貌を語り尽くすことは難しいが、2019年の製品ラインアップは整理され、選びやすくなった。
左がiPhone XRの後継機に相当する「iPhone 11」、右がiPhone XS Maxの後継機に相当する「iPhone 11 Pro Max」。いずれもアウトカメラ周辺のデザインが昨年のモデルと大きく異なっており、2019年モデルであることが一目で分かる
端末の性能はもちろん強化され、搭載される「A13 Bionic」はあらあゆるSoC(System on a Chip)の中でも、最も処理能力が高いCPU、GPU、ISP(Image Signal Processor)を内蔵するだけでなく、ニューラルネットワーク処理専用の「Neural Engine」も業界随一。さらには機械学習処理能力の強化を狙って、CPUには行列乗算を6倍に引き上げる専用の演算器が搭載された。
もっとも、これらの能力が一般的なアプリケーションにまで浸透し、エンドユーザーが実感できるまでには少々時間がかかるだろう。先行開発パートナーと準備したビデオ撮影やゲームなどのアプリはどれも素晴しい出来栄えだが、それらは近い将来のアプリ環境を投影したものだ。
もちろん、端末を数年間使っていく上で、処理能力の高さはいずれ大きな武器になるだろうが、目先の利点としてはAppleのSoCが端末の具体的な機能と結び付き、分かりやすい形で機能として提供されている点である。
その最も端的な例は、発表時にも紹介したカメラ機能の充実である。ユーザーからみると、高画質になった、あるいは使いやすくなった、といった体験レベルの違いとして現れているが、その背景には端末の機能設計をOS、アプリといったソフトウェアレベルだけでなく、SoC設計のレベルにまで掘り下げた綿密な計画がある。
年内のアップデートで投入するというカメラの高画質化技術「Deep Fusion」は、まさに“実現すべき目標”を見据えてSoCレベルから性能を強化したことで実現するものだ。
また、現時点では試すことはできないが、「iOS 13.1」で対応する「UWB(超広帯域)」を応用してデバイス間の方向や距離を検出する「U1」チップの活用など、半導体レベルにまで落とし込んだ新アプローチは他にも用意されている。
また、新型バッテリーを搭載したiPhone 11 Proシリーズはバッテリー駆動時間という、多くのユーザーが悩む問題を緩和するだろう。ディスプレイの改善も、映像にこだわる利用者層ならば無視できないものだった。
2年に1度買い替える利用者が多かったスマートフォンも、現在は3年以上に伸びてきているが、「iPhone 7」以前のモデルからならば、iPhone 11、11 Proのいずれを選んでも高い満足度を得られるはずだ。
「11世代」内蔵カメラの注目点
AppleはiPhone 11および11 Proのカメラ(52mm相当の望遠カメラの有無を除けば、11と11 Proに機能・性能の差異はないため、「11世代」のカメラと表記する)を改良する上で、画質や機能だけでなく操作性にも変更を与えた。
カメラの動作モードと各モードの動作パラメーターを分離。従来は正方形で撮影するための専用モードが「スクエア」として存在していたが、11世代のカメラではなくなる。その代わりにカメラの動作設定値としてアスペクト比が1:1、4:3、16:9から選択可能になる。
撮影モードは「タイムラプス」「スロー」「ビデオ」「写真」「ポートレート」「パノラマ」にまとめられ、「0.5」「1x」「2」とカメラをダイレクトで切り替えるボタンを配置。タップ&ホールドで滑らかなズームになるのは前世代と同じだが、ダイヤルのスケールが分かりやすくなっている。
さらに(縦位置で構えている場合は)上にスワイプすると、撮影パラメーターの一覧が表示。撮影パラメーターを親指だけで手早く操ることが可能になった。フラッシュライトやライブフォトのオン・オフ、タイマーなどに加えて、アスペクト比、あるいはナイトモードの露光時間選択やポートレートモード時のF値、ライティング強度の設定などもここにまとめられている。細かなことだが、これまではできなかったスクエア時のライブフォトも撮影可能になった。
こうしたユーザーインタフェースの変更は、OSをiOS 13にアップデートしたとしても既存の「iPhone XS」シリーズや「iPhone XR」などでは反映されない。11世代のカメラのみの新しい操作性だ。オートフォーカスやホワイトバランス、「スマートHDR」などの振る舞いも変化しており、また動画撮影時の露出やホワイトバランスの変化も落ち着きがあるなど、細かな改良も進んでいる。
一方、機能面や画質の面での注目点は、
- 画素融合と機械学習処理による画質向上
- スマートHDRの改良によるトーンマッピングの改良
- 数秒から最大30秒まで長時間の画素融合で暗いシーンの画質を高めるナイトモード
- A13 Bionicを活用した「Deep Fusion」
- 複数カメラの活用によるホワイトバランス、オートフォーカスの改良
- 超広角カメラの搭載と活用
- 広角カメラでのポートレートモード
- インカメラの画質と機能向上(スマートHDR、スローモーション対応)
といったところだろうか。実に盛りだくさんだが、いずれも単にカメラセンサーやモジュールを改良するだけではなく、SoCのレベルから質と機能を高めるアプローチが採られている。
また昨年はiPhone XRとXSシリーズでカメラ機能の違いが大きかったが、今年は52mm相当の望遠カメラがiPhone 11には搭載されないものの、それ以外についてはインカメラを含めて全く差異はない。
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