人はなぜApple Storeに魅入られるのか Apple上級副社長が語る秘密:林信行が聞く(2/3 ページ)
Appleが日本において直営店(Apple Store)を続々とオープン、リニューアルしている。その狙いと魅力はどこにあるのだろうか。2019年2月に直営店事業のトップに就任したディアドラ・オブライエン上級副社長に話を聞いた。
ラゾーナ川崎プラザのルーファ広場を取り込んだApple 川崎
では、土曜日にオープンするApple 川崎はどんなお店なのか。インタビュー時点では、オブライエン氏はまだApple 川崎を図面でしか見ていなかったようなので、筆者が取材をベースに紹介しよう。
Apple 川崎が出店する「三井ショッピングパーク ラゾーナ川崎プラザ」は2006年に開業したショッピングモールだ。「ららぽーと」と同じ系列ではあるが、当時の川崎市長の阿部孝夫氏が「他にもある名前だと目立たない。川崎にしか無い名前を」としたことから、この名になったという。
スペインの建築家、リカルド・ボフィル氏が大屋根の設計を手掛けたり、随所に東芝の工場だった頃の正門看板やポンプなどがオブジェとして設置されていたり、屋上には出雲大社の分社が移設されていたりと、建築デザインや文化面でも特徴のあるショッピングモールでもある。しかし、何といっても最大の特徴は、JR川崎駅からの通路の先に「ルーファ広場」と呼ばれる巨大な広場があり、それを囲むように4階建てのショッピングモールが建っていることだ。
この広場が、朝夕は幼稚園児の通り道にもなる。この街で過ごす人たちの憩いの広場となっていることだろう。
広場にはちょっとした遊具のようなものや、土日にイベントを行うステージなども用意されており、ビジネス街のど真ん中にありながら、ファミリー層が常に多く滞留している。
Apple 川崎は、この広場の一角にある。広場で過ごした人たちが屋内の店で飲食をしようと建物の入り口に向かう時、あるいは映画の時間になってIMAXシアターもある映画館へのエスカレーターに向かおうとした時、あるいは店内で歩き疲れて広場で休憩しようとモールから出てきた時に、必ず目の前を通る場所に置かれている。
店幅いっぱいに広がったガラス窓のおかげで、店内に入ると、Apple 川崎の店自体が、広場の一部であるかのように感じる。
逆に広場に座っていても、Apple 川崎の店内にある巨大なビデオウォールで何か楽しそうなことをやっているのが自然と目に入ってくる(プレス内覧会の時も、広場の人々が「もう入れるのか」と自然と集まってきた)。
狭いスペースやウィンドウをできるだけ多くの商品で埋めようとする他の店舗では、店内の様子が見えにくいが、Apple 川崎では背の高い器具がないために、店内の人越しに店の一番奥に配置されたビデオウォールまでが、広場の中央からでもしっかりと見えるのだ。
さて、そんなラゾーナ川崎プラザにおいて、ファミリー層が多い広場前に開店するApple 川崎だが、Appleもこの店ではファミリー層を意識したのだろう。オープン前の直営店に冠されるその店舗独自の店名ロゴアニメーションでは、カラフルな積み木のアニメーションが採用された。
直営店の目玉である毎日提供される無料のイベント「Today At Apple」でも、ピーナッツ(スヌーピーが出てくる漫画)のキャラクターを使ったデザインラボや、子供向けのコーディングラボ(プログラミング教室)などファミリー層を意識したプログラムが多く、そのいくつかは川崎店独自で展開されるようだ。
Apple 川崎は、日本では初となるショッピングモール型の店舗となる。世界のApple Storeを巡ると、独立したお店となっている旗艦店や、ニューヨークのグランドセントラルステーション内の階段のような街のランドマークに作られる店舗、今回のようなショッピングモール内のテナント、丸の内や新宿のようなビルのテナントなど、いくつかのフォーマットがある。
「どんなフォーマットになるかは、獲得できた物件次第です。大きいフォーマットもあれば、小さいフォーマットもある。どんなフォーマットであれ、私たちが大事にするのは、その場所が持つ意味を生かして、それ自体もAppleの提供する体験の一部とすることです」
「世界に500店舗あるどのお店に足を運んでも、そのお店にある私たちの気遣いを感じてもらえるようにすること。そしてAppleのすべての製品を知ってもらえる場所にし、私たちのチーム(店員)とのつながりを感じてもらえるようにすること」とオブライエン氏は言う。
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