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大切なのは「持続可能」であること――4年目を迎えたNECレノボグループの「テレワーク・デイ」(2/2 ページ)

NECレノボ・ジャパングループ(レノボ・ジャパン、NECパーソナルコンピュータなど)が「テレワーク・デイ」を始めてから約4年が経過した。働き方改革に加え、新型コロナウイルスの登場によって「テレワーク」への注目はより高まっているが、制度を導入するだけではテレワークは定着しない。どのような取り組みが必要なのだろうか。

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“ネガティブ”な面にも目を向けないとテレワークは成功しない


NECレノボ・ジャパングループのワークスタイル・エバンジェリストを務める元嶋亮太氏。自宅からリモートで説明会に参加した

 先述の通り、テレワーク・デイは「テレワークの訓練」であると同時に、「テレワークの課題」を洗い出す場でもある。PCやスマホなど、ICT機器を手がけるNECレノボ・ジャパングループだから問題は全くない……はずもなく、いくつもの失敗や問題を乗り越えつつ、テレワークを進めているという。

 同グループが2019年に取った従業員アンケートによると、テレワークによって生産性が向上したと答えた人は92%、ワークライフバランスが向上したと答えた人は76%だったという。前向きな評価が多いようにも思えるが、同グループのワークスタイル・エバンジェリストを務める元嶋亮太氏の話を聞く限り、後ろ向きな評価こそが、テレワークを定着させるための重要なヒントであるようだ。


2019年に取った従業員アンケートの結果

 同グループのアンケートでは、6~7割の従業員は少なくとも1カ月に1回はテレワークをしていると回答しており、時がたつにつれて、「週1回以上」と答える人が増えているという。しかし、見方を変えると3~4割の従業員は、普段からテレワークを使っていないことになる。

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 なぜテレワークを使わないのか調べてみると、「部署でテレワークをする人がいない(少ない)」「上司が(テレワークに)否定的」といった「空気を読んだ」(元嶋氏)結果であることも少なくないようだ。もちろん、設備や業務の都合でテレワークが困難な場合もある。

 全てを一気に解決することは難しいが、1つ1つの課題を解決していくことはできる。テレワークに否定的な上司の中には、人事における「360度評価」(部下や社外関係者の意見も加味した評価)をきっかけにテレワークに取り組むようになった人もいるという。固定電話のUCシステムへの統合も、「電話を受けるために出社しなければならない」という業務上の制約からの解消につながった。


執務室をよく見ると、部署にもよるが電話機がない固定席も多い

 テレワークでは、作業効率も課題となる。最新のアンケートでは、約9割の従業員が「効率が上がった」または「(オフィスにいるのと)変わりない」と答えている。しかし、「効率が下がった」と回答する人も約1割いた。ワークライブバランスについても、わずか3%ではあるが「低下(悪化)した」と答える従業員が存在する。

 効率が低下する理由はさまざまだ。例えば、アンケートでは「クレーム処理を家族の前でしたくないので、庭やベランダに出ないといけない」「テレワーク中の仕事仲間と連絡が取れない」といった声が寄せられるという。ツールへの慣れもあってか、後者についての不満は減少傾向にあるが、ゼロにはなっていない。ワークライブバランスが悪化する要因もさまざまで、「家族から『家で仕事をするな』と言われる」「子どもやペットに仕事を邪魔されてしまう」といった声があるという。

 簡単にまとめると、家にいると、むしろ集中することが困難という人も少なくないということだ。この点については、コワーキングスペースを含めて、執務できる場所を増やす検討を進めている。


テレワークでもオフィスでも、どこでも最高のパフォーマンスを発揮できる環境作りが目標

 テレワークに対する心理的障壁を取り除くために、オフィスで行う会議には必ずオンライン会議の設定も行うようにしているという。

 本社オフィスの全ての会議室には、オンライン会議用のシステム(ThinkSmartシリーズ)が設置されている。そのため、Microsoft Teams(またはSkype for Business)の会議情報をスケジュール添付すれば、都合に合わせてオンラインでもオフライン(会議室)でも会議に参加できるという寸法だ。

 オンラインでの会議をしやすくするために、使いやすいコラボレーションツールの支給や、ハイクオリティーなヘッドセットも支給しているという。


オンラインでも会議に参加しやすい環境作りを実施している

全ての会議室にオンライン会議システムを設置。この部屋には「ThinkSmart Hub 500」が配備されていた

デバイスも重要だが、守るべきは情報

 NECレノボ・ジャパングループでは、個々人の業務スタイルに合ったノートPCを1人1台支給している。もちろん、テレワークに便利なLTE(モバイルブロードバンド)対応モデルも対象に含まれる。

 支給されるノートPCの画面サイズは14型が一番多く、希望に応じてモバイルモニターやヘッドセットなどを支給することもあるという。


レノボ・ジャパンで支給されるノートPCとアクセサリーの例

 テレワークを拡大する際の懸念材料として、デバイスの紛失や盗難が挙げられる。この点について、元嶋氏は「極論をいえば、ノートPCを紛失すること自体は大した問題ではない。それよりも、PCで扱う情報を守ることの方が重要だ」と語る。デバイスの紛失そのものよりも、情報漏えいのリスクに備えることの方が重要だということだ。

 情報は、さまざまな方法で漏えいしうる。元嶋氏は、以下の準備や検討ができているかどうか確認すべきだと語る。

  • デバイスの暗号化と、適切なパスワード設定
  • ショルダーハッキングやソーシャルエンジニアリングへの対策
  • OSやファームウェア(UEFI)、アプリを常に最新に保つ仕組み
  • ダイレクトアクセスやゼロトラストセキュリティモデルの導入

デバイスの紛失そのものよりも、情報が漏えいすることへの対策を進めるべきという提言

 元嶋氏は「テレワークを支えるためのテクノロジーは、現状でも整っている」という。一方で、「いきなり適切に使いこなすことも困難」とも語る。

 実際に運用しつつ、問題が生じたら改善していく――テレワークの定着には、地道な取り組みが必要となりそうだ。

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