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AppleとGoogleが協力した新型コロナ対策「接触追跡」とは何か?ロックダウンを繰り返さないために(4/4 ページ)

新型コロナ対策でAppleとGoogleが手を結び、Bluetoothベースで濃厚接触の可能性を検出するプラットフォームを共同で開発する。その背景を追った。

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接触追跡とプライバシーの議論が過熱

 もちろん接触追跡をはじめ、全ての「行動追跡」のアプリは、プライバシー侵害の危険がつきまとう。米国では今回の発表の直後、「これはAppleのプライバシー保護の姿勢を信じてきた人たちへの裏切りではないか」という声も一部で挙がった。

 「サピエンス全史」や「ホモデウス」など世界的ベストセラーを持つイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏が、新型コロナの感染拡大を受けて英紙「Financial Times」に寄稿した「the world after coronavirus」という記事中で、「ウイルスが監視社会を正当化」することを指摘したことなども不安を抱かせる一因となっている。

 しかし、そうした不安を払拭(ふっしょく)するように、Appleのティム・クック氏も「プライバシーを犠牲にすることはない」と自身のツイートなどでも強調している。

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「新型コロナウィルスの広まりを鈍化させる接触追跡は、利用者のプライバシーを犠牲にすることなく実現できます。我々はサンドラ・ピチャイCEOおよびGoogleと協力し、Bluetooth技術を透明性や同意に基づく形で活用しつつ防疫の支援をします」という内容だ

 そもそもGPSなどの位置情報ではなく、Bluetoothを使って人々の「接触」を感知するという方法そのものが、プライバシー保護の観点から生み出されてきた経緯があり、プライバシー順守とのバランスに関しては、これまでも厳しいプライバシー保護の姿勢を打ち立ててきたEU、とりわけフランス政府が同様の開発を行っていることも安心材料になる。

 一方で、ただ接触情報を記録するだけでなく、より感染を追いやすくなるように例えば位置情報などより多くの情報を収集した上で、プライバシー保護を強化しようとする流れも出始めてきている。

 例えばMITのPrivate Kitの開発者らは、ハッシングという方法を使って2つのサーバに情報を分散して個人の特定を防ぐ方法を、ペンシルバニア大学ではMix Netと呼ばれる、それぞれに独立した団体に管理されている複数のネットワークに情報を分散することで特定を防ぐ方法を提案するなど、社会の利益(感染の追跡)とプライバシー保護とのバランスについて、かつてないほど盛んな議論が世界中で行われている。

 今、世界中の人類が共有している最大の不安は、この新型ウイルスの影響が、いつまで続くのか分からないということだ。そして、それによって仕事などの社会活動を、いつになったらちゃんとした形で再開できる見通しが立たない、という不安だろう。

 接触追跡は、ウイルス撲滅にはつながらないものの、社会活動を再開する上で、最も有望な賭けであり、それだけにこの技術の重要性をより多くの人が認識して受け入れる必要があると思い、この記事を書かせてもらった。

 以下に関連情報のリンク一覧を用意したので、興味の湧いた人はぜひとも参考にしてほしい。

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