Windows 10は全て64bitになる 32bitから64bitへの完全移行は間もなく:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)
初のオンライン開催となるMicrosoftの開発者向けイベント「Build 2020」を前に、Windows 10に関する話題をまとめた。
先日、開発コード名「20H1」ことWindows 10の次期大型アップデート(機能アップデート)「May 2020 Update」の一般配信開始が「5月12日か」という記事を本連載で取り上げたが、実際に同日付けで提供が開始されたのは、当初4月28日開始といわれていたMSDNの開発者向けリリースであり、一般配信開始は5月28日(日本時間ではおそらく金曜日にあたる5月29日)になるという。
前回の情報源だったZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏が記事中で訂正を行っており、OEM向けが5月5日、開発者向けが5月12日、そして一般向けが5月28日にずれ込んだと述べている。
理由は不明だが、正式なリリース日程についてはMicrosoft自身がまだ公表していない段階であり、一般公開がさらにずれ込む可能性もあるとしている。ただしOEM向けのリリースが既に行われているため、今後Windows 10の最新バージョン(2004)を搭載して出荷されるPCについては、基本的にこのアップデートが適用済みになると考えられる。
Windows 10は全て64bitになる
Windows 10(2004)では「Windows Subsystem for Linux 2(WSL2)」のサポートなどいくつかの新機能がプラスされている他、カーネル内部でもいくつかの変更が行われていることが伝えられている。
こうした中、新たに話題になっているのが「Windows 10における32bit対応の終了」だ。正確にいうと、今後も既存ユーザーに対しては32bit版Windows 10のセキュリティパッチや、機能アップデートの提供などサポートは継続されるが、「OEM向けの32bit版Windows 10の提供を止める」という話だ。
前述のジョー・フォリー氏が報じているが、Microsoftが公開している「Minimum hardware requirements」という文書の「Windows 10 for desktop editions」というセクションで、下記のような文章が確認できる。
Beginning with Windows 10, version 2004, all new Windows 10 systems will be required to use 64-bit builds and Microsoft will no longer release 32-bit builds for OEM distribution. This does not impact 32-bit customer systems that are manufactured with earlier versions of Windows 10; Microsoft remains committed to providing feature and security updates on these devices, including continued 32-bit media availability in non-OEM channels to support various upgrade installation scenarios.
つまり、今後メーカーから提供される“PC”は基本的に64bit版Windows 10のみとなり、既にOEMチャネルを通して32bit版Windows 10を搭載したPCを入手しているユーザーは、引き続きアップデートの提供をMicrosoftから受けられる他、OEMではない提供形態、例えばOSの直販やリセールなど、プリインストール状態ではない提供オプションも用意される。
実際のところ、一般ユーザーを対象とした市場で32bit版Windows 10を搭載した最新PCというのは非常に限られているとみている。通販サイトなどで少し調べてみたが、32bit版搭載をうたっているPCは旧モデルの新品や中古が中心で、おそらくはビジネス向けに同じ型番のPCを用意する必要があるケースなどを想定しているのではないかと考える。
実用性はともかく、メモリが2GBのモデルであったり、あるいは(実際にどの程度あるのかは分からないが)32bit環境でないと動作しないアプリケーションがあったりといった理由で環境を維持したいというのでない限り、あえて32bit版を選ぶ理由はないだろう。
32bit版と64bit版では最低動作環境が異なっており、例えばメモリでは前者が1GB以上なのに対し、後者は2GB以上となっている。要求されるストレージの空き容量も、Windows 10(1809)のOctober 2018 Update以前の32bit版では16GBとなっており(64bit版は20GB)、現在はどちらも32GB以上となっているが、おそらくはミニタブレットなどでの動作を想定したものだろう。
そのため、今回の変更が即ユーザーに影響を与えることはないと思われるが、「32bitの時代に終わりが到来しつつある」という、ある意味で象徴的な意味合いが強いのではないかと考える。
ARM64でのx64エミュレーションの話題再び
次も64bitに関する話題だ。
一部ユーザーにはお待ちかねだが、ARM64上でのx64アプリケーションのエミュレーションだ。この話は2019年末に公開した記事で取り上げているが、同件を報じていたNeowinでは2021年半ばに登場するとみられる大型アップデート「21H1」での機能搭載が見込まれているという。
ジョー・フォリー氏によれば、2020年末の登場が見込まれる「20H2」については、前回の「19H2(November 2019 Update)」と同様に小規模な差分アップデートにとどまる模様で、今回テーマとなっているものを含む大きな機能追加は「21H1」待ちということになる。
今回の報告は、LonghornというユーザーがTwitter上で投稿したもので、この件に関してポール・サーロット氏がThurrott.comの記事中でフォローしている。
内容的にはGitHub上の「microsoft/cppwinrt」で「Add linker support for x64 code emulation on ARM64」というプルリクエストで示されているものだが、これはサーロットが指摘するようにMicrosoftのWindows開発チームで主任ソフトウェアエンジニアのケニー・カー氏によって実行されている。現在はまだ状況証拠だけだが、割と近いタイミングでこの機能が実際に実装されるのではないかというのが同氏の考えだ。
前出の氏の情報を基にすれば、次に機能アップデートが可能なタイミングは「21H1」ということになる。Neowinも最新記事で「情報源からの情報は『21H1』で変わらず」としており、それが事実だとすれば少なくとも2020年末くらいまでには、一般情報としてMicrosoftから公開されるのではないだろうか(「21H1」のFast Ringでの開発は夏にはスタートするため、情報を秘匿する意味はないと思われる)。
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