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健康の未来を先取りしたApple Watch、タブレットの水準を引き上げたiPadGood、Better、Bestで読み解く新ラインアップ(5/6 ページ)

Appleが恒例のスペシャルイベントを行ったが、メインのiPhoneは発表されず、新型iPadシリーズとApple Watchシリーズが登場したのみだった。しかし、その中には我々の未来に直結する重要なメッセージが盛り込まれていた。林信行氏が読み解く。

Apple Watchを巡る世界の取り組み

 発表会では、そのうち3つが紹介された。

 1つ目は、そもそもこの指標がどのように役立つかを調べる将来のヘルスケアアプリケーションで、どのように活用できるかを探るリサーチだ。カリフォルニア大学アーバイン校、そして医療サービス会社、Anthemと共同で血中酸素と進めている。

 2つ目は、この指標を心臓の健康に役立てるための研究だ。カナダのTed Rogers Centre for Heart Research、および健康に関する北米有数の研究機関であるカナダのUniversity Health NetworkのPeter Munk Cardiac Centreの研究者と緊密に協力している。

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 そして3つ目が、今まさに気になるインフルエンザやCOVID-19などの初期兆候の発見に役立てる研究だ。これは米国のBrotman Baty Institute for Precision MedicineのSeattle Flu Studyの研究者と、ワシントン大学医学部の教授と進めている。これは共にApple Watchで測れる血中酸素濃度と心拍数の両方を指標にするのだという。

 このように血中酸素濃度の測定は、今すぐに確実な効果を医学的にうたえる指標ではないが、その分、今後、デジタル時代の体調管理で最も伸び代が大きい指標であるともいえる。

 Apple Watchは2014年に発売されてから、座りっぱなしを防ぐ機能やアクティビティリングなど、人々の健康を促進する機能で秀でていたが、Apple Watch series 6や、同時にリリースされるwatchOS 7は、その度合いがさらに1つ飛び抜けた感じがする。

 COVID-19のパンデミック前から予定されていたという手洗い補助機能(時間と水の流れる音などから、ちゃんと手を洗えているかを検出、指導)や、免疫力強化の上でも重要な睡眠の質を管理する機能など、まるでコロナ禍の今を予見して備えるべく作られているような機能も多い。

 だが、それ以上に驚かされるのが、今回のApple Watch発表でも冒頭で紹介された「Dear Apple」というビデオのシリーズの最新版だ。Apple Watchの通知で自分が敗血症性ショック状態にあることを知り命を救われた女性、盲目でありながらApple Watchを使って活動的な暮らしをしているスペイン人男性、陸上でオリンピックを目指しながらもI型糖尿病で夢が絶たれたものの、Apple WatchとCGM(持続グルコースモニター)のおかげで陸上競技を続けられ、全米新記録を出した少女、ひどい高血圧で薬代だけで毎月2000ドルかかっていたがApple Watchを使ったエクササイズで体調を改善した男性、心不全で危険な状態に陥っていたことを早期発見し命を取り止めた男性と、Apple Watchがいかに多くの人の人生を変えたかのストーリーには毎年驚かされる。

 ちなみに「接触確認」アプリなどの例をあげるまでもなく、Apple Watchを中心としたAppleの健康に関する取り組みは、既に世界の政府機関などからも高い評価を得ている。さまざまな国民健康政策で注目を集めるシンガポールでは、Appleと協力してLumiHealthという健康促進プログラムを開発。10月から提供予定のアプリは健康を促進する行動を促し、ユーザーがそれに従うとその度にポイントが貯まり2年間で最大380シンガポールドル(約3万円)を獲得することができると言う。


シンガポール政府がAppleの協力の下、開発した健康促進アプリの「LumiHealth」。10月から提供が開始され、健康促進アクティビティーに参加するとポイントや現金がもらえる

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