間もなく登場の“新”OutlookにみるWindows戦略:Windowsフロントライン(1/2 ページ)
2021年のWindowsに関する重要トピックとなるはずだった「Sun Valley」と「One Outlook(Project Monarch)」だが、当初の予測から異なる事態になった。それらの現状とWindows 11の位置付けを考える。
ちょうど1年前の話になるが、「Sun Valley」に続くMicrosoftの一大プロジェクトとして「Project Monarch」の存在を紹介した。
別の名称を「One Outlook」といい、現状でプラットフォームやデバイスごとに独立して存在している「Outlook」クライアントを1つにまとめ、統一的なクライアントアプリとして提供することを目的とする。
当時、初報を出したWindows Centralのザック・ボーデン氏によれば「Sun Valleyと合わせて2021年中のリリースを目指す」とのことで、本来であれば昨秋頃にSun Valleyとともに目玉のソフトウェア製品として登場する予定だった。
Sun Valleyとは、Windowsのユーザーインタフェースを一新するプロジェクトの名称であり、過去1~2年に渡ってWindows 10の大型アップデート(機能アップデート)に機能の一部が搭載された後、2021年後半に大規模アップデートの一環として提供されるとみられていた。
だが実際には、Windows 10とは独立したOSとして提供が行われ、それは現在では「Windows 11」の名称で知られる最新OSとして存在している。つまり、Project Monarchは本来であればWindows 11の正式リリースと時をおかずして登場するものだったと考えられる。しかし現時点でこれに関する公式情報はなく、キャンセルまたは延期されたものだと判断できる。
“新”Outlookはスロースタート
Project Monarchのその後については、ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏が報じている。同氏が情報源を通じて報じたところによれば、Monarchは過去数カ月の間にMicrosoft社内で対象範囲を拡大しつつテストが繰り返されており、現時点での登場は2022年春頃を見込んでいるという。
ターゲットとなるプラットフォームは、Windowsのデスクトップ版(Win32/UWPでArmも含む)、macOSのデスクトップ版、そしてWeb版となっており、全体のルック&フィールはWeb版Outlookのそれに近いという。ただし、同氏の情報では現在AndroidやiOS向けに提供されているOutlookの情報が含まれていないため、モバイル版の対応については不明だ。
正式リリースの前に、Windows Insider ProgramのDev ChannelとBeta Channelユーザーに対して、3月後半から4月前半にかけてこの“新”Outlookの提供が行われる。また7月ないし8月には“Slow Channel”への提供が開始され、当初の予定より遅れて今秋での正式リリースになるとのことだ。
とはいえ、“Slow Channel”という名称の配信チャネルは存在しないため、おそらくRelease Previewあたりのことを意味していると考えられる。また、配信対象が“Windows Insider Program”という点だが、“Office”ではなく“Windows”という部分が気になるところだ。
これは推測だが、もともとMonarchはWindows 10の「Mail&Calendar」を置き換える統合クライアントとしての側面を持っており、独立したOutlookとしてアプリをダウンロードさせるというよりも、Windowsの機能の一部として実装したいとの意図があるのではないかと考える。
ジョー・フォリー氏によれば、新アプリで一気に既存の標準機能を置き換えるというよりも、よりマイルドな形で浸透させる形になるのではないかとの関係者の話を紹介している。
気になる“新”Outlookの名称だが、前出のボーデン氏が挙げていた「One Outlook」ではなく、シンプルに「Outlook」になるというのはジョー・フォリー氏の意見だ。
異なる機能のクライアントが混在するのは混乱の元ではあるが、UWP版を中心に徐々に置き換えが進み、新しいルック&フィールになじませていく形であれば、大きな混乱は起こらないのではないかと考える。加えて、同氏はMicrosoftが「既存のデスクトップ版Outlookを当面置き換える気はない」とも述べており、Windows 11登場と合わせてもう1つの目玉と思われていたソフトウェアは、その役割を一気に後退させたように思える。
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