“6nmプロセス化”だけではない! AMDがモバイル向け「Ryzen 6000シリーズ」の進化を力説(3/3 ページ)
AMDが、CES 2022で披露したモバイル向けRyzen 6000シリーズプロセッサの詳細を解説するイベントを2度に渡って開催した。競合のIntelが製品の競争力の面で復活しつつある中、弱点を徹底的につぶした上で強みをより強化することで再び優位性をアピールできるAPU(GPU統合型CPU)に仕上がった。【訂正】
「低消費電力におけるチャンピオン」
先述の通り、モバイル向けRyzen 6000シリーズは、消費電力当たりの処理パフォーマンスとプロセッサの面積当たりの処理パフォーマンスの改善にフォーカスを当てて開発された。そのこともあって、AMDはこのAPUのことを「低消費電力におけるx86プロセッサのチャンピオン」と自称している。
Intelの最新の第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)では、処理パフォーマンス重視の「Pコア」と、効率(省電力)重視の「Eコア」を併載することで全体のパフォーマンスを向上している。AMDはこの点に着目し、「(基本消費電力が)28Wだと競合はPコアが6基なのに対して、Ryzen 6000シリーズなら“完全なZen 3+コア”を8基使える」「(基本消費電力が)5Wだと競合はPコアがたった2基なのに対してRyzen 6000シリーズなら“完全なZen 3+コア”を8基使える」とアピールしている。
端的にいうと、Ryzen 6000シリーズなら、同じ消費電力でより多くの“完全なパフォーマンス”を発揮できるコアを搭載できるということだが、比較対象となる28Wの「Pプロセッサ」と15Wの「Uプロセッサ」を搭載する製品はまだリリースされていない。AMDの言う通りの優位性が発揮できるかどうかは未知数な面もある。
モバイル向け第12世代Coreプロセッサのうち、ハイエンド向けの「Hプロセッサ」だけは既に搭載製品が市販されている。そこで、AMDは「Core i9-12800HK」(Pコア:6基12スレッド、2.5GHz~5GHz/Eコア:8基8スレッド、1.8GHz~3.8GHz)と「Ryzen 9 6900HS」(3.3GHz~4.9GHz、8コア16スレッド)で消費電力当たりのパフォーマンスを比較した。
それによると、Ryzen 9 6900HSの消費電力当たりの処理パフォーマンスはCore i9-12800HKの最大2.62倍となったという。「市場(ユーザー)はより長いバッテリー持ちとより薄い形状を好む」ことから、Ryzen 9 6900HSは「競合(Intel)が作ろうともがいている薄くて軽い形状に最適」だとしている。
ハイエンドレンジ以外のAPUは、現行の第11世代Coreプロセッサと比較が行われた。いずれも消費電力の低いRyzen 6000シリーズの方が性能が良い(同じ消費電力ならなおさら)という結果となっている。
Ryzen 7 6800U(2.7GHz~4.7GHz、8コア16スレッド)とCore i7-1185G7(3GHz~4.8GHz、4コア8スレッド)の比較。2Dイメージの編集ではそれほど差がないが、コア数がモノをいう処理ではRyzenの圧勝である
Ryzen 9 6900HX(3.3GHz~4.9GHz、8コア16スレッド)とCore i9-11980HK(3.3GHz~5GHz、8コア16スレッド)の比較。コアとスレッドの数では差がないものの、消費電力がより低いRyzenの方が処理パフォーマンスがおおむね高いということを示している
Ryzen 7 6800UとCore i7-1185G7でフレームレートの比較(1080p、特記のない限り低品質)。RDNA 2アーキテクチャのGPUが奏功して、APUでもそこそこ高いフレームレートでプレイできることが分かる
AMDの超解像技術「FidelityFX Super Resolution(FSR)」を活用すれば、APUでもNVIDIAの「GeForce GTX 1650 with Max-Q Technology」にフレームレートに勝るとはいい時代になったものである。ただし、FSRはGeForce GTX 1650でも使えるので、GeForce GTX 1650で有効化した場合はどうなるのだろうか……?
先陣を切るのは「HSプロセッサ」
モバイル向けRyzen 6000シリーズを搭載するノートPCは、以下のスケジュールで順次登場する見通しだ。
- 2月中:HSプロセッサ(薄型ハイエンド向け)
- 3月初旬めど:HXプロセッサ(ハイエンド向け)、Uプロセッサ(超薄型向け)
- 3月中旬めど:PROプロセッサ(企業向け管理機能付き)
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