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「Windows 11」「Windows 365」の新機能はビジネスにどういうメリットをもたらす? 日本マイクロソフトが説明(1/3 ページ)

日本マイクロソフトが法人ユーザーを対象に「Windows 11」「Windows 365」の新機能を紹介するイベントを開催した。Windows 11に搭載される(予定)の新機能は、ビジネスにどのようなメリットをもたらすのだろうか。

 日本マイクロソフトは4月22日、オンラインイベント「新機能をいち早く解説! Windowsが切り開くハイブリッドワークの未来」を開催した。このイベントではハイブリッドワークを始めとする「新しい働き方」に役立つWindows 11を新機能を改めて紹介したもので、米Microsoftが4月5日(米国太平洋時間)に開催したオンラインイベント「Windows Powers the Future of Hybrid Work」の日本語版に相当する。

 この記事では、イベントで紹介された新機能を改めて紹介する。


イベントの模様

「Windows 365」は4つの機能を開発中 一部は2022年内に実装予定

 「クラウドPC」を介してWindows 10/11をストリーミングで提供する「Windows 365」では、4つの新機能の開発が進んでいる。いずれもローカルのWindows 11環境との使用感の差を極力なくすことを主眼を置いた機能だ。

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Windows 365には、オンプレミスのWindows 11環境とシームレスに利用できる新機能が実装される

 4つの新機能の概要は、以下の通りとなる。

【Windows 365 App】

 Windows 365専用のクライアントアプリで、Windows 11に標準搭載される予定となっている。自分に割り当てられたWindows 365環境とひも付けすれば、従来のWebブラウザ経由、あるいはRDP(Remote Desktop Protocol)準拠のクライアントアプリ経由よりも簡単にクラウドPCにアクセスできる。このアプリからは、クラウドPCの再起動操作や「スナップショット」を使ったクラウドPCの修復も行えるようにする予定だという。

【Windows 365 Switch】

 Windowsの仮想デスクトップを切り替える要領で、ローカル環境のデスクトップと、クラウドPCのデスクトップを切り替えできるようになる。テレワークにおいて個人所有のPCを活用している場合に、オンプレミスのプライベート環境に干渉することなく、クラウドPC上に構築した業務環境へとシームレスにスイッチできる。

【Windows 365 Boot】

 ローカルPCにおけるWindows 11のログインと連動して、Windows 365のクラウドPC環境にも自動ログインするように設定できる。例えば、クラウドPCを一種のシンクライアント環境のように利用している場合は、ログインの“二度手間”を省けるようになる。

【Windows 365 Offline】

 その名の通り、クラウドPCをオフラインで利用するための機能だ。ネットワークの不安定な環境でもシームレスに利用できるようになる。作業内容は、通信環境が回復した時点で同期される。

2022年内に「どれか、あるいは複数」の新機能を実装

 気になるのは、これら4つの新機能の実装時期である。これらはまだ「開発を表明した」というステータスで、実装は少し先の未来となりそうだ。

 プレゼンテーションを担当した米MicrosoftのGlobal Black Belt(※1)の河口信治氏によると、「2022年内に4つのうちどれか、あるいは複数の機能が試せるようになる」という。合わせて同氏は「『出る出る詐欺』にならないように(機能を実装)していきたい」とコメントした。

(※1)米Microsoftにおいて、エキスパートレベルの専門家を集めた部署。名前は柔道の「黒帯」に由来している


Windows 365の新機能は現在、実装に向けた開発が進められているという

Windows 365はどんな時に使うべき?

 Windows 365の契約体系は、中小企業向けの「Windows 365 Business」と大企業向けの「Windows 365 Enterprise」の2つが用意されており、スペックに応じて月額料金(ライセンス料)が変動するようになっている。一番安価な構成(仮想CPU2基+メモリ4GB+64GBストレージ)の場合、税込み月額料金は4785円(※2)となる。

(※2)Businessエディションで「Windowsハイブリッド特典」を適用した場合と、Enterpriseエディションでは月額4191円となる

 Windows 365は2021年8月から提供が始まった新しいサービスではあるものの、日本国内の法人での採用は進んでいるという。例えばサイバーエージェントでは提供開始当初から検証を行い、2カ月で本採用を決定したそうだ。コロナ禍でテレワーク体制の強化を迫られる中、Windows 365が最適なソリューションと評価したという。

 日本マイクロソフトではWindows 11が稼働するプラットフォームとして「リアルPC」「Azure Virtual Desktop(AVD)」を用意しているが、Windows 365は「第3の選択肢」ということになる。どれがベストな選択肢となるかは、企業の規模や部署の業務内容によって異なるため。「あなたの会社(部署)ならこれ!」と決め打ちするのは少し難しいようだ。


法人向けWindows PCの3つの提供形態。どれが最適かは、ビジネスの規模や現場での業務内容によっても変わってくる

 自身の経験に基づく見解として、河口氏はクラウドOSがフィットする2つの具体例を挙げる。

 1つはシステム開発を行っている企業である。

 この企業は従業員にセキュリティを確保した業務用PCをに配布しており、在宅勤務を取り入れつつ業務を進めている。しかし悩みがある。開発パートナーから出向している「業務委託社員」へのPC配布だ。コロナ禍でPCを会社に取りに来てもらう機会を作りづらくなっている中、入れ替わりの多い業務委託社員のPCの設定は、システム担当者の負荷となっていた。

 このようなケースでは、Windows 365がピッタリだという。業務委託社員にはWindows 11搭載のPCをそのまま配送し、自社が用意したクラウドOSにログインしてもらうようにすれば、セキュアな業務環境へとアクセスできる。クラウドOSのアサイン作業だけであれば、リモートでも1時間ほどあれば対応できるという。

 もう1つはAVDの「マルチセッション機能」を使っている企業だ。

 AVDでは、1つのWindows 11ライセンスを利用して、複数人が同時にリモートアクセスして使える特殊なライセンス体系を取っている。パワフルな計算リソースを持つWindows PC(ワークステーション/サーバ)を1台用意すれば、ライセンス費用を節約しつつ計算リソースの効率化を図れるという算段だ。

 この企業では、海外駐在の従業員もいる。日本での深夜帯に海外から駐在員がシングルセッションでAVDに接続する使い方するケースもあった。この場合、駐在員にはWindows 365のクラウドOSを割り当てることで、本来の目的である計算リソースの効率化を最大限図れる上、遠隔地からのサポートも容易になる。

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