レビュー

約11年ぶりの「FMV LOOX」を試す 薄くて軽くて画面の大きいWindowsタブレットは正義か?(1/2 ページ)

富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が「富士通PC」の40周年を記念して、2011年にいったん途切れた「LOOX(ルークス)」ブランドを復活させた。しかし、かつてとは異なり「薄型軽量タブレットPC」として世に現われた。その実像はどのようなものか迫る。

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が約11年ぶりに発売した「FMV LOOX」。LOOXといえば超小型モバイルPC(今風にいえば「UMPC」)を思い起こす人もいるかもしれないが、新しいLOOXは薄型のタブレットPCとしてこの世に生を受けた。最新の第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)を搭載しつつも、ファンレス設計としていることも大きな特徴である。

 この記事では、FMV LOOXの店頭販売モデルのうち、上位構成に当たる「FMV LOOX 90/G(FMVL90GB)」(税込み実売価格18万~19万円程度)の“実像”をサクッとチェックしていく。


FMV LOOX 90/G(キーボードは別売)

ファンレス設計で驚きの軽さ

 FMV LOOXは、第12世代Coreプロセッサのうち、消費電力の少ない「Uシリーズ」のBGA Type4 HDIパッケージを採用している。上位モデルである90/Gは、その中でも上位に属する「Core i7-1250U」(Pコア2基4スレッド/最大4.7GHz+Eコア8基8スレッド/最大3.5GHz)を搭載する。

advertisement

 BGA Type4 HDIパッケージのUシリーズは、基本消費電力が9W、ターボパワー(最大消費電力)が29Wに設定されており、少し前までのモバイル向けCoreプロセッサでいう所の「Yプロセッサ(超省電力モデル)」に相当する。とはいえ、処理能力を重視した「Pコア(パフォーマンスコア)」に加えて、消費電力に優れる「Eコア(効率コア)」を追加したことで従来のYプロセッサから大きなパフォーマンス向上が図れていると思われる。

 そして、先述の通り、このFMV LOOXはファンレス設計だ。厚さ約0.35mmのヒートシンクや、少し横長かつ二手に分かれたヒートパイプなどを使って、アルミニウム素材でできたボディー全体に熱を逃がす設計となっている。

 ファンを省いたこともあり、本体単体の重量は約599gと非常に軽い。付属のキックスタンドを取り付けた場合の重量は約742g、別売の「FMV LOOXキーボード」(税込み直販価格2万1780円)も合わせた重量は約1030gとなる。FCCLのモバイルノートPC「LIFEBOOK UH-X」の現行モデルの重量(約634g)と比べると重たいことは確かだが、スタンドやキーボードを装着したタブレットPCとしては軽量であることも事実である。これなら、持ち運びも苦にならない。


ボディーはアルミニウム素材で作られている。Wi-Fi(無線LAN)やBluetoothのアンテナ部分は樹脂素材となるが、デザインや塗装の工夫で違和感を極小化している

本体全体に熱を逃がす設計とすることでファンレス化を実現している(試作機の分解モデルで撮影)

 ディスプレイは13.3型の有機ELパネルを採用し、Corning製の強化ガラス「Gorilla Glass Victus」で保護されている。最大解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)で、コントラスト比は10万:1、応答速度は最短1ミリ秒となっている。発色は非常に良好で、有機ELパネルだけあって黒色は非常に締まって見える。プリインストールされているWindows 11 Homeも、出荷時から「ダークモード」用いたテーマが適用されている。

 タブレットPCだけあって、最大10点同時検出のマルチタッチ操作と、最大4096階調の筆圧検知に対応するペン操作も利用できる。ペンはワコムの「AES2.0」規格に対応しており、FCCLの純正オプションとして、ペン先と内部モジュールの設計を一新した「FMV LOOXペン」(税込み直売価格1万3200円)も用意されている。


フルHD解像度の13.3型有機ELディスプレイを搭載している。パネルの特性もあって、特に黒色の表現は締まって見える

AES2.0規格に準拠するペンを別途購入すればペン入力もできる。開発に携わったワコムのオリジナルメモアプリ「Wacom Notes」もプリインストールされている

FCCL純正の「FMV LOOXペン」のパッケージ。店頭販売モデルでは別売だが、直販モデルでは付属品に含めることも可能だ

LOOXペンにはバッテリーが内蔵されており、付属のUSB Type-Cケーブルで充電できる。替えのペン先も3つ付属している

LOOXペンは、LOOXの本体右側面に磁力でくっ付けることもできる。ただし、ワイヤレス充電機能の類いは用意されていないので注意しよう

 カメラはイン(画面)側に加えてアウト(背面)側にも備えている。インカメラは約207万画素のセンサーを採用しており、フルHD撮影とWindows Helloの顔認証に対応している。アウトカメラは約1258万画素のオートフォーカス(AF)対応センサーを備えている。

 スピーカーは4基構成で、縦向きでも横向きでもしっかりと音を伝えてくれる。マイクは2基構成でステレオ集音も可能だ。


インカメラは約207万画素で、顔認証で用いる赤外線撮影にも対応している

 ポート類は、左側面に集中しており、Thunderbolt 4(USB4)端子とUSB 3.1 Type-C端子を1基ずつ備える。いずれの端子もUSB PD(Power Delivery)による電源入力と、DisplayPort Alternate Modeによる映像出力に対応する。イヤフォン/マイクコンボ端子は備えないので、イヤフォン(ヘッドフォン)やマイクを使いたい場合は、USB Type-C接続のもの(アダプターを含む)か、Bluetooth接続のものを用意する必要がある。

 FMV LOOXは「クリエイティブコネクト」という機能を装備している。これは本体に内蔵したオリジナルチップと独自のソフトウェアを組み合わせて実装されたオリジナル機能で、ペアになるWindows 10/11 PC(※1)と付属のUSB Type-Cケーブルで直結することで利用できる。LOOXのディスプレイ(タッチ操作やペン操作を含む、※2)を内蔵ストレージの一部をペアPCで活用できる他、ペアになったPCのキーボード/マウスをLOOXで利用したり、ディスプレイをLOOXのセカンドディスプレイとして使ったりもできる。“双方向”にリンクできることが強みだ。

 無線通信はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)とBluetooth 5.1に対応する。直販モデルではオプションで5G/LTEに対応するモバイル通信モジュールを搭載することも可能だ。

(※1)第8世代Coreプロセッサ、またはRyzen 3以上のCPU(APU)を搭載し、USB 3.0以上の規格に対応するUSB Type-Cポート(Thunderbolt 3/4ポートを含む)を備えるPCが必要です。Windows 10の場合は「21H2」以降のバージョンに対応します
(※2)ペアになるPCでLOOXのペン入力を使う場合、筆圧検知の感度は最大1024段階に制限されます


ポート類は左側面に集中している。左右に見られる小さく連続した黒い穴はスピーカー用だ

右側面にはスピーカーの穴がある

上部にはマイクの穴、ボリュームボタンと電源ボタンがある

下部には別売のLOOXキーボード用の接続端子が用意されている

 先に少し触れたが、FMV LOOXには着脱式のキックスタンドが付属する。これは背面カバーを兼ねていて、横向きであれば比較的自由な角度で止められるようになっている。一方、キーボードは別売となっている。

 キックスタンドを付属するか、キーボードを付属するか、両方を付属するか、はたまたあえて両者を別売とするか――FCCL社内でも議論になったそうだ。最終的には想定されるユーザー層は「キーボードは自分の好きなものを選ぶ」「一方で、使い方に関わらずスタンドは不可欠」という判断と、少しでも手頃な価格でユーザーに届けるという判断からキックスタンドのみ付属することにしたという。

 なお、直販モデルではLOOXキーボードの他、USB Type-C/Bluetooth接続に対応する「FMV Mobile Keyboard」を付属するオプションが用意されている。純正キーボードを使いたいという人は、直販モデルも検討してみると良いだろう。


本体に付属するキックスタンド(右)と別売のFMV LOOXキーボード(左)。LOOXキーボードはポゴピンで本体と接続するタイプだ

キーボードとキックスタンドを取り付けた上で、背面側から見た図。キックスタンドの角度は比較的自由に調整できる

最近の若年層向けLIFEBOOKのキーボードと同様に、LOOXキーボードはかな刻印のない日本語配列となっている。ストロークもしっかりと確保されているのだが、Surfaceのようにキーボードの傾斜を調整する機構を備えないことは注意したい

LOOXキーボードは、画面保護カバーとしても利用できる。筆者の個人的意見だが、できれば本体と合わせて用意した方が良いと思う
       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.