いよいよ解禁!「Wi-Fi 6E」は何がすごい? 「Wi-Fi 6」との違いは? どんなモデルがある?(3/3 ページ)
9月2日、6GHz帯の電波を利用した無線LANが“解禁”された。いわゆる「Wi-Fi 6E」というものだが、これは従来の「Wi-Fi 6」と何が違うのだろうか。簡単かつ詳しく解説する。
6GHz帯を使うデメリットは?
6GHz帯を使うことはそれなりにメリットが大きい。しかし、デメリットが全くないわけではない。
電波は、周波数が低ければ低いほど遠くまで届きやすく、回り込みやすい(障害物に強い)。逆に、周波数は高ければ高いほど遠くまで届きにくく、直進しやすい(障害物に弱い)。
電波を用いて通信する無線LANも、この点においてご多分に漏れない。2.4GHz帯は比較的遠くまで届き、壁を始めとする障害物にも強い。それと比べると、5GHz帯は通信できる範囲が狭く、障害物に弱い。
「では6GHz帯はどうなの?」という点だが、5GHz帯と比べると通信できる範囲は少し狭く、障害物にも少し弱い。ただ、複数のメーカーの担当者に話を聞く限りは、「2.4GHz帯と5GHz帯」ほどの極端な差はなく、実利用では5GHz帯とおおむね同じ感覚で使えるという。
無線LANで使われる3つの帯域を比較した図。距離減衰(遠くになるほど電波が弱まる点)において6GHz帯が一番不利になることは確かだが、実利用の使い勝手では5GHz帯と大きく変わることはないという。干渉が少なくDFSによる通信瞬断リスクがない分だけより快適な通信を期待できるそうだ(資料提供:バッファロー)
Wi-Fi 6Eを使うにはどうしたらいい?
6GHz帯の無線LANを使うには、「クライアント(子機)」と「アクセスポイント/ルーター(親機)」の双方がWi-Fi 6Eに対応している必要がある。当然だが、どちらか片方が6GHz帯での通信に対応していないと利用できない。
では、現時点における対応状況はどうなっているのだろうか。
クライアント:ノートPCやスマホはソフト更新で対応できる可能性も
クライアント機器では、PC、AndroidスマートフォンやAndroidタブレットにおいてWi-Fi 6Eに対応できるハードウェアを搭載しているものが存在する。特に2021年後半からは、ハイエンドモデルを中心に搭載率が高まっている。
ただし、Wi-Fi 6Eに対応できるクライアント機器でも、現時点ではソフトウェアで機能を無効化していたり、ジオフェンス(※1)で日本では機能しないように設定されていたりする。そのため、6GHz帯での通信をするにはデバイスドライバーやファームウェアの更新が必要となる可能性が高い。
日本において6GHz帯での通信に対応するかどうかは、クライアント機器のメーカーに問い合わせるか、サポートサイトを確認すると良いだろう。
(※1)利用している場所の位置情報を何らかの方法で取得して、利用できる周波数帯を決定する仕組み。スマホやタブレットの場合、モバイル通信またはGPSで得られる位置情報を元に通信できる周波数帯を決定することが多い
筆者が愛用している「ThinkPad X13 Gen 3(Intel)」に搭載されている無線LANモジュール「Intel Wi-Fi 6E AX211」も、6GHz帯の無線LANに対応している。ただし、現時点ではメーカー(レノボ・ジャパン)は日本では利用できないと案内している
PCの場合、Wi-Fi 6Eに対応する外付けアダプターまたは拡張カードを用意すれば“後付けで”6GHz帯の無線LANを利用できる。ただし、9月6日現在、日本において拡張カードの発売を表明しているのはティーピーリンクジャパン(TP-Link)のみである。
9月6日現在、TP-LinkがPCI Express接続のWi-Fi 6E対応無線LAN/Bluetoothアダプターの発売を表明している。ただし、発売時期はまだ公表されていない(画像提供:ティーピーリンクジャパン)
アクセスポイント/ルーター:対応品が必須
一方、アクセスポイントやルーターについては、Wi-Fi 6Eに“あらかじめ”対応しているモデルはない。言い換えると6GHz帯で通信できるアクセスポイントやルーターに買い換える必要がある。
9月6日現在、家庭向けのWi-Fi 6Eルーターの発売を表明しているのはNECプラットフォームズ、TP-Link、バッファローの3社。各社の予定しているラインアップを簡単に紹介しよう。
【NECプラットフォームズ】
NECプラットフォームズでは、ミドルレンジモデル「Aterm WX7800T8」と、ハイエンドモデル「Aterm WX11000T12」の2機種を9月15日に発売する。税込みの想定販売価格は、Aterm WX7800T8が2万5300円程度、Aterm WX11000T12が5万5000円程度を見込んでいる。
WX7800T8の無線LANは「2.4GHz帯×2ストリーム+5GHz帯×4ストリーム+6GHz帯×2ストリーム」という構成で、6GHz帯では最大2402Mbps、5GHz帯では最大4804Mbps、2.4GHz帯では最大574Mbps(いずれも理論値、以下同)の通信速度を確保している。有線ポートはWAN(1基)、LAN(4基)共に1000BASE-Tとなる。
Aterm WX11000T12の無線LANは「2.4GHz帯×4ストリーム+5GHz帯×4ストリーム+6GHz帯×4ストリーム」という構成で、6GHz帯と5GHz帯では最大4804Mbps、2.4GHz帯では最大1147Mbpsの通信速度を確保している。有線ポートはWAN(1基)とLAN(計4基)のうち1基が10GBASE-T対応で、残りのLANポートが1000BASE-T対応となる。
両機種共に独自仕様のメッシュWi-Fiネットワークに対応しており、両機種を含む対応モデル(計5機種)を用意することで無線または有線ネットワークによるエリア拡張が可能だ。
【TP-Link】
TP-Linkでは、ミドルレンジモデル「Archer AXE75」と、メッシュネットワーク対応モデル「Deco XE75」の発売を予定している。
Archer AXE75の無線LANは「2.4GHz帯×2ストリーム+5GHz帯×2ストリーム+2GHz帯×2ストリーム」という構成で、6GHz帯と5GHz帯では最大2402Mbps、2.4GHz帯では最大574Mbpsの通信速度を確保している。有線ポートはWAN(1基)、LAN(4基)共に1000BASE-Tとなる。
このモデルは同社独自のメッシュWi-Fi規格「OneMesh」に対応しており、同規格対応の同社製の無線LAN中継器を利用することでメッシュネットワークを構築できる。
Deco XE75の無線LANは「2.4GHz帯×2ストリーム+5GHz帯×2ストリーム+2GHz帯×2ストリーム」という構成で、6GHz帯と5GHz帯では最大2402Mbps、2.4GHz帯では最大574Mbpsの通信速度を確保している。有線ポート(WAN/LAN兼用で3基)は、全て1000BASE-Tに対応する。
このモデルは、同社の「Decoシリーズ」を使ったメッシュネットワークの構築に対応しており、無線、または有線ネットワークによるエリア拡張が可能だ。
【バッファロー】
バッファローでは、ミドルレンジモデル「WNR-5400XE6」の出荷を9月5日に開始した。単体モデルの他、同機種の2台セット「WNR-5400XE6/2S」も用意されており、買ってすぐにメッシュネットワークを構築できるようになっている。税込みの実売価格は単体モデルが2万円台半ば、2台セットが4万円台半ばとなっている。
WNR-5400XE6の無線LANは「2.4GHz帯×2ストリーム+5GHz帯×2ストリーム+2GHz帯×2ストリーム」という構成で、6GHz帯と5GHz帯では最大2402Mbps、2.4GHz帯では最大574Mbpsの通信速度を確保している。有線ポートはWAN(1基)が2.5GBASE-T対応、LAN(3基)が1000BASE-T対応となる。
このモデルは、「Wi-Fi EasyMesh」規格のメッシュネットワークの構築に対応しており、無線または有線ネットワークで同規格に対応する無線LANルーター/中継器をつないで通信エリアを拡張できる。6GHz帯はWi-Fi EasyMeshでのバックホール通信に対応していないが(※2)、EasyMeshを使わない「親子間通信による中継」構成にすれば6GHz帯を使った中継は行えるようになっている。
(※2)Wi-Fi EasyMeshの規格において6GHz帯を使ったバックホール通信が定義されていないため。2.4GHz帯/5GHz帯(または有線LAN)をバックホール回線として、6GHz帯をフロントホール通信(クライアントとの直接通信)に回すことは可能
バッファローがWi-Fi 6対応無線LANルーター/中継器で進めてきたWi-Fi EasyMesh対応は、WNR-5400XE6でも継承されている。ただし、規格上の都合から6GHz帯はバックホール回線としてできない(資料提供:バッファロー))
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