「Apple Watch Ultra」はAppleがたどり着いた究極の時計だ:シン・ウルトラウォッチ登場(1/3 ページ)
スマートウオッチをリードするAppleから、従来の殻を破った1台が登場した。サイズもバッテリー駆動時間も機能も過去最大となった「Apple Watch Ultra」を林信行氏がチェックした。
これまで、AppleはApple Watchの高級モデルのあり方を求め、さまざまな方向性を模索してきた。
エルメスとのコラボモデルは大きな成果を果たしたものの、金などの貴金属やセラミックなど素材で高級感を狙ったモデルは、一定の需要は築けたが成功とは言い難かったかもしれない。
しかし、ここへきて、ついに求められていた本当の答えをつかんだ気がする。
究極のアウトドア体験にも耐える性能を持ちながら、都市部でファッションアイテムとして身につけても自然になじむ「Apple Watch Ultra」。まさに究極のApple Watchと言えそうだ。写真は、チタニウムケースとオレンジアルパインループの組み合わせ
より大胆で活動的なあなたへと奮起させるApple Watchの最高峰
それは、「Apple Watch Ultra」のことだ。
-20度の寒冷地から、55度の灼熱の砂漠まで幅広い温度で動作し、水に潜れば水深40mまで使えるダイビングコンピューターとして機能する。迷路のような密林の奥深くに分け入っても正確なGPSで来たルートを戻る手伝いをし、それでも遭難してしまった時には腕時計から発する音とは思えない大音量でSOSの遭難信号を発する。
これまで、デジタル機器と言えば「濡れたら壊れる」と、持ち主がびしょ濡れになっても機械だけは濡れないようにと必死に守る対象の1つだった。ぶつけたり、落としたりもダメで、人間より先に熱を出して使い物にならなくなったりする道具だった。しかし、Apple Watch Ultraは違う。
さらに言えば、従来のデジタル機器は「便利」を売り文句に人々を怠惰に陥れ、1カ所にとどまり、より不活動的にしたりする道具だったが、Apple Watch Ultraは逆だ。
いざという時、どんな過酷な場所に飛び出していっても、足かせにならない。いや、それどころか、もっと大胆に行動して道に迷っても、たっぷり長持ちするバッテリー(最長36時間、低電力設定なら最長60時間)でちゃんと戻り方をナビしてくれるし、万が一の事態に陥ってもSOSの信号を送ったり救援要請を送ったりすることもできる。
家に座りっぱなしの日々が続いていても「座りっぱなしです。立ちましょう」と呼びかけ、今からでも間に合うから身体を動かそうといざなってくれる。人々をよりアクティブにする機械の今ある究極が、今回Appleから発表されたApple Watch Ultraだと思う。
既存製品の土台の上に築かれた新しい造形美
そのApple Watch Ultraだが、まずはその造形の美しさで人々を魅了する。
フラットなディスプレイを囲む約1mm幅のチタニウムの額縁。肉厚な本体の真ん中部分が滑らかな曲線を描きながら上下/左右に均等に膨らんでいるが、右側だけDigital Crownとサイドボタンを覆うようにさらに隆起した部分がある。
右側面にあるDigital Crownとサイドボタンを覆うように、チタニウムのケースが隆起している。ただしサイドボタンは触って初めて分かるくらいほんの少しだけ飛び出ているので、グローブをつけた状態でも押しにくいことはない
左上には、遭難時に時計から出ているとは思えない86デシベルの大きな音でSOS信号を発するスピーカーを象徴した大きなスピーカーグリルがあり、その下には大きなグローブ越しでも大事な操作が行えるよう、新たに追加されたオレンジ色のアクションボタンがある。吹雪の中でも声を拾ってくれそうな大きなマイク穴もある。
左側面にはスピーカーグリル、サイレン用のスピーカー、GPSアンテナ、そしてオレンジ色のアクションボタンが用意されている。このアクションボタンには、ウェイポイントの追加や水深アプリの起動など、よく使うアクションを1つだけ追加できる(ダイビング中は、Digital Crownとの組み合わせで複数の機能を呼び出せる)
頑丈さをそのまま形にしたような造形は、付属のアルパインループのバンドや別売りのオーシャンバンドと絶妙なコンビネーションを織りなすが、既存の革製バンドやシリコン製バンドとも何の違和感もなく溶け込む。
過酷な自然にも、高層ビルの谷間のアーバンな景色のどちらにも、なじむ造形になっている。Apple Watchは、今やAppleのハードウェアデザイン力が最も発揮される製品だが、このUltraは、まさにその本領が余すところなく発揮されているのを感じる。
新しい見せ場を作りながらも、ちゃんとこれまでの基本を忠実に押さえている点も、まさにそれを感じさせるポイントだ。
まるで猿から進化したヒトの骨格に尻尾の名残があるように、Apple Watch Ultraも側面から見ると、これまでのApple Watchの名残を見てとることができる。
というか側面から見たUltraは、まるでこれまでのApple Watchの上に垂直に伸びたチタニウムの額縁を取り付けたような形になっている。額縁の下の部分にはDigital Crown、サイドボタン、その日の気分で簡単に取り替え可能なApple独自のバンド着脱機構(44mm/45mmモデル互換)など、これまでApple WatchをApple Watchたらしめている基本の要素がそのまま継承されている。
この新しいデザインだが、使っていてどんな部分にこれまでと違いを感じるだろうか。
最近のApple Watchを使っていた人が、真っ先に感じる違いがフラットなディスプレイだろう。最近のApple Watchは額縁をなくし、ディスプレイの縁を湾曲させ本体に溶け込ませる方向に進化していたが、Ultraはその真逆で縁取りを強調し、そこに真っ平らなディスプレイを凹凸との段差を感じさせずにピタっとはめ込んでいる。
この頑丈でフラットなディスプレイが持つシャープさが、モダンな文字盤や都会の風景にも予想以上にマッチするのを感じた。Digital Crownとサイドボタンをガードしている本体の隆起で、これらの操作がしづらくなっていないかと思ったが、それも無駄な心配だった。クラウンは回しやすく、サイドボタンも目では分かりにくいが指で触れるとハッキリと分かる絶妙な具合に飛び出しており、場所を目視で確認しなくてもしっかりと押すことができる。
隆起した額縁が光を反射して描き出す輪郭の美しさであるとか、デザインのディテールを掘り下げれば掘り下げるほど魅力が増していくあたりも含め、Appleのデザインスタジオの真骨頂を感じさせ、それだけにアウトドアでの利用だけでなく、アーバンライフスタイルにおけるファッションアイテムとしても、十分な魅力があるのを感じる。
よく考えてみれば、ダイバーズウォッチ1つにしても、ダイビングをしない人でもファッションのアイテムとして身につけるのが腕時計の世界だ。ダイバーズウォッチを超えるダイブコンピュータとしての性能を持つApple Watch Ultraは、アウトドアからアーバンシーンまで幅広く対応するウォッチであることも改めて強調しておきたい。
それでいて価格が税込みで12万4800円からと、多くのダイバーズウォッチと比べてかなり手頃な点が、もう1つの魅力とも言える。機能/性能的には、ダイバーズウォッチ以上のダイブコンピュータに近いものを備えているにも関わらずだ。
よくできているのは本体ケースだけではなく、今回、同製品と一緒に発表された2つの新しいバンドにも当てはまる。鍵のようなフックをしっかり引っ掛けて止めるアルパインバンドは、タフな利用に耐える頑丈さとファッション性を両立した絶妙なデザインになっている
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