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日本政府が最大465億円の助成を行うマイクロンメモリ ジャパンの広島工場に行ってみた(1/2 ページ)

米Micron Technologyの日本法人であり、最先端メモリ製品の開発や設計、生産を担うマイクロンメモリ ジャパンの広島工場において、1β DRAMの量産製造開始セレモニーが開催された。

 米Micron Technologyは11月16日、1β DRAMの量産製造開始セレモニーをマイクロンメモリ ジャパン(旧エルピーダメモリ)の広島工場で実施した。

 Micron Technologyの日本法人としては、最先端メモリ製品の販売およびマーケティングを行うマイクロン ジャパン(高橋康代表取締役社長)と、最先端メモリ製品の開発や設計、生産を担うマイクロンメモリ ジャパン(ジョシュア・リー代表取締役/小野寺忠代表取締役)があり、今回は後者の広島工場/広島開発センター(広島県東広島市)を訪れた。


広島県東広島市にあるマイクロンメモリ ジャパンの広島工場。MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(広島市民球場)約9個分の広さがあり、主にDRAM(DDR3/4/5、GDDR5/6/6X、LPDDR2/3/4/5/5X、HBM2e)の製造を担う

広島工場の位置付け。ダイバーシティーを重視し、地域のボランティア活動にも積極的に参加しているという

1βノードDRAMの量産体制が整い市場のリーダーシップを確立

 Micron Technologyは11月1日に、1βノードDRAMの量産体制が整ったこと、スマートフォンメーカーとチップセット製造パートナー向けに、業界初となる1β(1ベータ)DRAM(LPDDR5X)テクノロジーの認定サンプルを出荷開始したと発表済みだ。同プロセスでの量産は日本で開始し、次は台湾で行うとしている。

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 1β DRAM1ダイあたりの容量は16Gbit、データ転送速度は8.5Gbpsで、従来の1αプロセス比で消費電力は最大15%削減でき、メモリ密度は35%以上向上したという。同社は業界に先立って176層のNANDや232層のNAND、1αプロセスのDRAMといった技術を投入してきたが、この1βプロセスは新たなマイルストーンだとした。


量産製造が始まったLPDDR5Xメモリ

1βプロセスで製造されたLPDDR5Xの主なスペック

1βプロセスで製造されたDRAMのウェハー

最新の1βプロセスで製造された16GbのLPDDR5X

DRAMとNANDの双方で、いち早く最新技術を取り入れて市場に投入してきたとアピール

 台湾やシンガポール、米国(マナサス)にも生産拠点はあるが、「広島は開発拠点と生産工場が一緒にあるのがユニークで、開発から出荷までスピーディーに行えるリーディングエッジの製品を市場にいち早く提供できるのが特徴だ」(マイクロンメモリ ジャパン Fab15 広島工場 アドバンストテクノロジー部門 シニアディレクター 野坂耕太氏)という。

 このLPDDR5XのDRAMは、2023年に市場に投入されるスマホに搭載予定だという。今後は、PCなどのクライアント機器や産業機器、データセンターなど幅広い分野で1βプロセスでの製造を行っていく予定だ。

 モバイルデバイスにおいて、写真やビデオなどのデータが日常的に増えており、一方でAIや自動車分野でも多くのデータが生み出されており、これらの拡大するデータのニーズに応えていく必要があるとした。


世界各地に製造拠点と研究開発施設がある

さまざまな市場に向けてメモリを開発&製造しており、1β DRAMはこれまで以上に幅広い需要に対応できるという

現時点ではモバイル向けを量産しているが、クライアントやエッジ、データセンターなど全てのポートフォリオに対応できるDRAMを市場に提供していく

温室効果ガスの排出量を削減したり、再生可能エネルギーの利用率を向上させたりなど、環境保護の取り組みも積極的に行っているとした

女性や少数のグループの人数を増やしたり、賃金や福利厚生を平等にしたりと、ダイバーシティーとインクルージョンに配慮した職場環境作りをしており、人材育成にも力を入れているという

 業界では微細化に向けてEUV露光(極端紫外線露光)への移行が進行中だが、同社ではコストパフォーマンスが高い独自のマルチパターニングの液浸リソグラフィー技術を継続する。

 EUV露光は、2024年以降の立ち上げを見込んでいる1βの次の「1γ」世代で導入予定だが、日本政府やサプライヤーに働きかけを行っているとのことだ(Micron Technology 首席副社長 グローバルオペレーション担当 マニッシュ・バーティア氏)。


Micron Technology 首席副社長 グローバルオペレーション担当 マニッシュ・バーティア(Manish Bhatia)氏

 続いて、工場内部の模様を見ていこう。

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