自分にとっての「終活のポイント」を診断できる「はなまる手帳」が社会問題の解決をゴールにした理由:古田雄介のデステック探訪(1/2 ページ)
家族の介護やお墓、実家の不動産の扱いといった将来考えなければならない問題を、少しのインプット作業で自動診断してくれる。そんな「はなまる手帳」が立ち上がったのはコロナ禍中のことだった。
終活や相続対策は何をやればいいのか。家庭や個々人の状況によって事情は大きく変わる。資産や債権の行く末に介護の問題、お墓や葬儀のことを含めた家族間の合意形成……。やるべきことは多岐に渡り、隅々まで詰めようとするほどに骨が折れる。
スマートフォンやPCで「はなまる手帳」にアクセスすれば、この問題を手早く整理できるかもしれない。家族や自分の老後、死後について具体的な懸念事項をセルフチェックしていくと、自分にとって取り組むべき課題が抽出される「相続対策トラブル診断」というサービスを提供している。
Webサイトで項目を埋めていくだけで終活の課題が見つかる
無料の会員登録を済ませてマイページを開き、「お悩み診断」に進む。後は「税」「介護」「生前遺品整理」「葬儀」などのページを開いて気になる項目にチェックを入れていけばいい。すると、やるべき課題を重要度と優先度で整理した分布図が生成され、項目ごとにToDoが表示される仕組みだ。
加えて、「かぞく相続診断」ページに家族構成と資産構成を入力することで、相続税をシミュレーションする機能も提供している。得られた診断結果を「たくすノート」というオリジナルのPDF冊子に出力したり、同サイトに登録している約1000人の専門家に相談したりもできる。
とりあえず現状抱えている課題を整理したい人から、喫緊で問題を解決したい人まで役に立ちそうだ。年末年始に一族で問題を共有する一助にもなるだろう。
このはなまる手帳、サービス自体もさることながら、事業展開も目を見張る。2021年4月にリリースした4カ月後にはクラウドファンディングで2000万円の資金を調達し、その1年後にも1300万円の資金を集めた。また、電力会社やハウスメーカー、士業事務所、寺院など70社の法人と提携するなどの広がりも見せている。
開発から経営まで手がけているのは、創業90年の葬儀社の五代目社長でもある吉野匠さんだ。どんな狙いでこのサービスを作り、どこにゴールを置いているのか。吉野さんが思い描く始点から終点までのレールをのぞいてみたい。
性格診断のように使えるサービスを
はなまる手帳の構想は、2019年3月に吉野さんの父が突然亡くなったことに端を発する。父が残した遺産や遺品の処理について相談できる先を探すのに想像以上に難儀したのがきっかけだった。
吉野さんは10年以上前に葬儀社を引き継いでおり、何年も前から一般向けに広く終活セミナーを精力的に行っていた。相続に関する知識は人並み以上に持っている。それでも不動産や預貯金、保険、相続税、遺品整理などの各分野で、現状に見合った適正な規模のサービスを見定めるのは難しかった。
料金やサービスの品質を横並びで比較しようにも物差しが見えないし、各分野の間に漏れがあっても全てを気づけそうにない。
個別の状況に合わせて、総合的にサポートしてくれる受け皿が必要だ。それに、個々人が老後や死後に発生する問題を事前に把握できる仕組みも大切になる。
そこから「性格診断サイトみたいな感じで気軽に使える、相続と終活のワンストップなサービスを作ろう」(吉野さん)と思い立ち、2020年の春に株式会社はなまる手帳を開業した。葬儀社の経営と並行しながら10カ月かけてサービスを固めていき、コロナ禍中の2021年2月にサイトの公開に至る。
当初から相続診断から専門家に相談するところまで無料で提供しており、「たくすノート」を製本する場合のみ発送費込みの料金が発生する仕組みだった(※現在、製本サービスは終了)。利用者は順調に伸びていき、半年経つ頃にはサイト検索で訪れて会員登録に至ったユーザーだけで、数百人を数えるほどになったという。
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