「ChatGPT」とは一味違ってさらに便利! Googleとの違いは? Microsoft Bingの「AI検索」を試して分かったこと:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/5 ページ)
Microsoftが2月7日(米国太平洋時間)、自社の検索エンジンとWebブラウザにOpenAIの「次世代大規模言語モデル」を実装することを発表した。ChatGPTとは何が違うのか、実際に使って検証してみよう。【更新】
「答えの根拠」もしっかり表示
新しいBingでも、表示された要約は「一番確からしい」ものなので、100%の正確性を持っているとは限らない。検索の過程で見つけた情報も正しいとは限らない(間違っている)こともあるので、当然といえば当然である。
加えていえば、新しいBingが見つけた情報を“誤認”することもある。見つけた情報は正しくても、回答の文章が「あれ?」という感じとなる可能性も否定できない。
それを意識してか、新しいBingでは回答の出典を確認できる仕組みを用意している。点線の文章にマウスカーソルを持っていくと、出典元ページのタイトルと冒頭を確認できる。全文を確認したければ、そのまま出典元の表示をクリックすればよい。
このような仕組みによって、新しいBingでは「答えの根拠」を確認しやすい。一方、ChatGPTには答えの根拠を確認する機能用意されていない。これは非常に大きな違いで、「チャット用AIモデル」なのか「検索サイト用AIモデル」なのかという用途の違いから来ているのだろう。
ChatGPTと同様に、新しいBingでも重ね聞きでより正確な情報を得ることもできる。しかし、実際の挙動を見ると、ChatGPTと異なる点もある。重ね聞きから得た情報も知識として取り込むのだ。一例として、筆者が所属しているブラジリアン柔術道場「PATO Studio」(東京都豊島区)に関する質問を取り上げよう。
新しいBingを使えるようになった直後、PATO Studioがどのような場所か質問をしてみた。すると、事実に反する答えを表示した。「それは誤りだ」という旨の返答をしたのだが、実際には存在しないURLを提示して「このWebページに書かれているので間違いありません」という旨の回答をしてきた。仕方がないので、PATO StudioのWebサイトのURLを添えて「それは違う」と重ねて返答しておいた。
「その後どうなったかな?」と気になったので、翌日に改めてPATO Studioについて質問した。すると、今度は教えておいたURLからの情報をもとに、正しい説明をしてくれるようになった。
会話から学習データ自体を更新するかどうかは分からないが、少なくとも質問に対して参照すべき情報を自動的に見直し、要約データもそれに合わせて改めている、あるいは「より確からしい」情報の優先順位を随時変えていることだけは分かる。
ChatGPTは学習した結果のみに依存して会話をしようとするのに対して、新しいBingでは常に自身が生成する文章の結果をWeb検索で得た情報と比較しつつ、自己検証した上で答えを生成している。そのため、ChatGPTと比較すると「自信満々の“誤回答”」をしづらい設計となっている。
ただ、繰り返すが、新しいBingが誤った回答を出さないということは決してない。これは人間が検索エンジンで見つけた誤った解説を信じてしまう現象にも近い。
情報元の“質”も確認しやすい新しいBing 広告表示にも工夫が
新しいBingの2つ目の“強み”として、ユーザーが欲しい情報に素早くたどり着くための工夫がなされていることが挙げられる。
ChatGPTのレビューでは「文章の要約」を試した。この結果を見れば分かる通り、GPTは使い方次第で文章の要約や整理にも活用できる。新しいBingも、その強みを十分に生かしている。
現代のWeb上の情報、とりわけSEO(サーチエンジン最適化)を施した情報は冗長な上に必要ない周辺情報も多い傾向にある。結論が見えないまま記事(情報)が終わってしまうことも珍しくない。極めて冗長なWebページを延々と、しかも複数ページに渡って読むのは苦痛を伴う。
しかし新しいBingは、ページの要点を絞り込んだ上で、情報元(ソース)のリンクも提示してくれる。ユーザーは要約の内容からリンク先のソースの“質”を確認しやすいということである。
加えて、新しいBingは広告の表示方法にも工夫が凝らされている。
一般的なネット検索では、結果の情報にテキスト広告が表示されることが多い。出稿状況にもよるが、本来の検索結果を参照するにはページをある程度スクロールしなければならないこともある。
それに対して、新しいBingでは検索結果(回答)が先に表示され、その後に関連するBingサービスへのリンクや広告が続く形を取っている。順番が“逆”なのだ。
このようなアプローチは、今後競合の検索サイト(特にGoogle)との大きな差別化要素になりそうである。
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