プロイラストレーターが最近のAI「どうすんだこれ感」について思ったこと(1/3 ページ)
IT業界に限らず、AI関連の話題がホットだ。プロイラストレーターのrefeiaさんに、昨今の事情を踏まえて思いの丈をまとめてもらった。
こんにちは! イラストレーターのrefeiaです。今日はイラストAIについて話していこうと思います。
はじめに
実は先日、PC USERの編集さんから「そろそろAIの記事でも」と打診いただいたんですが、「そんなの……“どうすんだこれ感”を高らかに歌い上げることぐらいしかできないんですが……」みたいな気持ちになりました。
とはいえ避けていてもしょうがないトピックでもあり、ついでに調べたり考えたりする機会になればお得かなという気持ちもあり、この記事を書くことにしました。
ちなみに、自分の今の立場は
- Stable DiffusionやNovelAIをいじったことがある
- それらのAIを制作のワークフローに組み込んだことはない
ぐらいです。よろしくお願いします!(ネタバレですが、結論はありません)
急にジェネラティブAIが来た……?
ここ半年ぐらい、見たことのないようなAIブームが来ています。SNSでも人々がAIの能力や新しい使い方を興奮気味に話す様子が毎日のように見られますし、大企業は急に目覚めたかのように新しいサービスや機能を発表しています。
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それ以前も、十分にAIブームだったと思います。画像に何が写っているかを言い当てるようになり、話した言葉を聞き取るようになり、それがPCやスマートフォンから使えるようになって、いろいろなことが便利になりました。
20年ぐらい前は「ニューロ・ファジィ~♪」みたいなTV CMをよく見かけながら、さして家電製品の性能や生活が変わった実感はなかったですし、情報科にいた大学生時代には「AI研究の最大の成果、そんな簡単じゃないって分かったことだったね」みたいなジョークを聞いていたので、なおさらそう思います。
これまでのブームは認識力の進化でしたが、今回のものは文章や画像の生成能力の進化(ジェネラティブ)で、社会がその能力を発見する様子も急激なものでした。正確性や能力に過信はできないとはいえ、技術に疎い人すら「大きな壁を越えた」と実感できる進化があったのは確かです。
イラストAIの進化と現状
そして本題のイラストAIです。世間ではどちらかというとチャットAIの方が注目されていますが、チャットAIと比べてイラストAIの際立つ特徴は、悪用と対立を生んでいる、という点でしょう。それはまず横に置いて、これまでの流れからおさらいしておきます。
画像生成AIの過去
今のようなイラストAIの到来を予期できるような出来事は、2010年代中ごろからありました。
まずは2015年の「AIの夢」です。気味の悪い出来が多いですが、入力画像の中から何かを感じ取ってディテールを加えたり、「何からしきもの」を生成する力が表れていたりしました。この後も「絵画らしきもの」を描くAIなど、さまざまな技術が発表されました。
まだこの時点では、我々の描くイラストと同等以上の見栄えは想像しづらかったかもしれません。
もっとはっきりした出来事の1つは、2019年の「Waifu Labs」の発表でしょう。バストアップのみで、髪の毛や服に不審な点が多いですが、明らかに「こちら側」の画風で、そこそこかわいいイラストを安定して生成できるようになっています。2018年から2019年にかけてはWaifu Labsに限らず顔の回りを生成するものが多く、顔が生成できるならいずれ身体も、と想像するのに十分な時期だったと思います。
そして現在
後はご存じの通りです。「Midjourney」が発表されて話題になり、こちら側のイラストに応用しやすい「Stable Difusion」や「NovelAI」が発表されて、今のにぎわいに至ります。また、初期には人間が「プロンプト」だけで指定するには限界があり、AIに任せるかひたすら当たりを引くまでリトライするしかないと思われていたことも、明確に指定を出すことができるようになってきています。
以下がその一例です。
- ポーズを指定
- 線画を比較的きっちり守って彩色
- 画風を再現させる
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