“20年先ゆく”Apple環境施策の現在地(2/2 ページ)
Appleが、自身が取り組んでいる環境への取り組みについて、進ちょくを発表した。関連サプライヤーを含めた取り組みはどうなっているのだろうか。
Appleから積極的に学ぶ中国 そして波及する環境への取り組み
Appleは「この取り組みで、サプライヤーに最初はApple関連事業だけ脱炭素してもらうが、その後、その取り組みが他社製品への製造にも生かされることように波及効果を期待している」と述べている。
こうした良い波及効果は、別の形でも広がるようだ。中国ではAvary HoldingがAppleのプログラムに参加した経験を踏まえて、自社のサプライヤーでの脱炭素を推進する独自のイニシアチブを立ち上げた。
中国は、Appleが同社のグリーンボンドを積極的に展開している国でもある。中国クリーンファンドエネルギーという中国のサプライヤーと、再生可能エネルギーソースをつなぐ投資ファンドに使われた。Appleはそれらのサプライヤーと共同で、これまでに650MW(メガワット)以上の再生可能電力に投資できたという。
グリーンボンドは、Appleがクリーンエネルギーの進展と環境革新を加速させるために発行している債権だ。現在までに47億ドルを調達しており、そのうち32億ドルを活用してきた。
その7億ドルは、クリーンエネルギーに関するサプライヤー向けトレーニングリソースの開発と配布、および日本/ベトナム/韓国における共同での推進活動など、59におよぶプロジェクトの支援に割り振っている。
2019年発行のグリーンボンドのサポートを受けたプロジェクトは、年間1350万トン以上のCO2削減に貢献できると見込まれている。
2030年までには後7年ある。Appleはこの難しい目標の実現を目指して、日々の業務で忙しく中々、脱炭素に向けた動きが起こせずにいるサプライヤーのために、さまざまな取り組みを行っている。
「クリーンエネルギーアカデミー」は、クリーンエネルギーと炭素除去のソリューションについての知識を深めるための一連の無料学習リソースとライブトレーニングだ。
Appleは同時にサプライヤーのクリーンエネルギーかを推進すべく、さまざまな業界団体や行政のプログラムにも参画している。日本では、気候に配慮した政策をサポートしクリーンエネルギーのさらなる採用を主導する「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」の初の海外メンバーとなっている。
まだ世の中の多くの中小企業にとっては、最近よく「環境に対する取り組み」を耳にするようになったとは言え、他人事だと思っているかもしれない。しかし、こういった流れは、これからの世の中で避けられない方向性だ。
今からでもリソースを集め、投資を始めて転換の準備をするのか、これから20年の間に、手遅れの企業として見捨てられるのか。Appleやそのサプライヤーの動向からは学べることが多い。
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