NVIDIAの測定デバイス「PCAT2」で最新GPUから旧モデルまで消費電力を測って分かったこと(前編):準備こそがクライマックス?(1/4 ページ)
グラフィックスカード(GPU)の消費電力をリアルタイムに測れる――NVIDIAがそんなデバイスを開発していることをご存じだろうか。今回、PCI Express 4.0に対応した第2世代製品を試す機会があったので、まずはその特徴とセットアップの過程を紹介しようと思う。
PCゲームファンにとって、NVIDIAは一挙手一投足が気になってしまうほどの人気GPUメーカーである。最近でこそ、AI(人工知能)ブームの追い風もあって「GPGPU」に注力しているきらいもあるが、ともあれ多くのPCユーザーにとって、NVIDIA製GPUは欠かせない存在となっている。
そんなNVIDIAだが、時々“超マニアック”なハードウェアをリリースすることがある(多くは同社の主力製品であるGPUと関連した製品なのだが)。その1つが、ゲームの入力操作からGPUが映像を描いて表示するまでの総遅延時間を計測する「NVIDIA LDAT(Latency and Display Analysis Tool)」だ。このLDATは、主にPCゲーム業界に大きな影響を与えた。
かくいう筆者も、NVIDIAからLDAT一式の提供を受けて色んな実験を行ったりした。その実験レポートは他誌に寄稿したので、もしかしたら見たことがあるという人もいるかもしれない。
そんなNVIDIAがもう1つ、面白い計測系デバイスをリリースした。その名も「NVIDIA PCAT(Power Capture Analysis Tool)」だ。ざっくりいうと、グラフィックスカードの消費電力をリアルタイム計測して、その変化を記録できるというツールとなる。
せっかくなので、2回に分けて、この何ともマニアックなデバイスであれこれと遊んでみようと思う。今回は、PCATの概要と、実際にセットアップするところまでを紹介する。
PCATはこんなデバイスだ!
今回、筆者が手にしたPCATは「バージョン2(第2世代)」で、「PCAT2」と通称されるものである。調べてみると、初代(PCAT1)は今から3年前の2020年にリリースされたようだ。
PCAT2の基本的な機能は、PCAT1からあまり変わっていない。強いていうなら最新のGPU環境に対応したことが変更点となる。NVIDIAから提供された資料によると、PCAT1との差分は以下のポイントにあるそうだ。
- PCI Express 4.0/5.0環境でも測定できるようになった
- GPUへの外部電源供給手段として、16ピンの「12vHPWR」コネクターに対応した
同社から提供されたPCAT2一式の内容は以下の通りとなる。
- メイン基板(測定器として機能する)
- 各種電源ケーブル
- PCI Expressスロット用のライザーカード
- グラフィックスカードを固定するための支持棒
PCATは民生向け商品ではなく、メディア関係者やPCハードウェアのレビュアー、あるいはデベロッパー(PC周辺機器の開発者やゲームのプログラマーなど)に提供されるものとなる。そのせいか、メイン基板は本当に“基板”としてむき出しの状態で提供される。「電子工作感」ムンムンだ。
むき出しのメイン基板には、計測値をリアルタイムに確認できる小型のモノクロ有機ELディスプレイパネルが実装されている。ただし、これはあくまでも正常に動作しているか確認するためのもので、計測データはUSBケーブルを介して専用ソフトウェアを導入したPCに送られる、という立て付けとなる。専用ソフトウェアは、同社のWebサイトからダウンロード可能だ。
PCAT2を計測用PCとつなぎ、専用ソフトウェアを動かすと、メイン基板が読み取ったリアルタイムな消費電力を心電図のようなグラフィカルな波形で確認できる。一定時間の測定値をCSVファイルの形でタイムスタンプと共に記録保存することも可能だ。
やろうと思えば「計測対象のPC(グラボを装着するPC)」と「記録用のPC」は同一にできる。しかし、計測対象のPCは、高頻度にグラフィックスカードを抜いたり挿したりすることになる。もろもろの手間を考えると、記録用のPCは別に用意した方が、面倒は少なくなる。今回の実験でも、別途用意したノートPCを記録用のPCとした。
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