「Radeon RX 7700 XT/7800 XT」はGeForce RTX 4060 Ti/4070を超える? 動画のエンコは早い? 実機を試して分かったこと:先行レビュー(1/4 ページ)
AMDの「Radeon RX 7700 XT」「Radeon RX 7800 XT」を搭載するグラフィックスカードが、9月8日11日に発売される。WQHDゲーミングに最適化されたという両GPUは、どれほどの実力を持っているのだろうか。実際に試してみよう。
AMDは9月8日11時、デスクトップPC向け新型GPU「Radeon RX 7700 XT」「Radeon RX 7800 XT」を搭載するグラフィックスカードの販売を解禁する。税込みの実売価格は、Radeon RX 7700 XT搭載カードが7万円台半ば〜8万円台前半、Radeon RX 7800 XT搭載カードが8万円台半ば〜9万円台前半となっている。
両GPUはWQHD(1440p/2560×1440ピクセル)でのゲーミングに最適化された性能を備え、4年ほど前にリリースされた「Radeon RX 5700 XT」や「GeForce RTX 2070 SUPER」からの置き換えを想定している。Radeon RX 7000シリーズ全体のラインアップを見ると、4K(2160p/3840×2160ピクセル)に最適化された「Radeon RX 7900 XT/7900 XTX」と、フルHD(1080p/1920×1080ピクセル)に最適化された「Radeon RX 7600」の間を埋める製品でもある。
米Valveのゲームプラットフォーム「Steam」の調査によると、ゲームを楽しむPCの画面解像度のシェアにおいて、WQHDは年間44%の成長率だという。今後は、PCゲームの解像度のメインストリームはフルHD(1080p/1920×1080ピクセル)からWQHDに移り変わっていく可能性がある。一方で、最近のゲームタイトルをWQHD解像度でプレイすると、Radeon RX 5700 XTやGeForce RTX 2070 SUPERでも“力不足”を感じる場面があることも事実である。
Radeon RX 7700 XT/7800 XTは、これからのWQHDゲーミングにふさわしいGPUなのか――発売に先駆けて合わせてチェックしてみよう。
今回テストを行うグラフィックスカード。左(手前)側はAMDが設計した「Radeon RX 7800 XT」のリファレンスカードで、右(奥)側はASRockが設計した「Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OC」である
Radeon RX 7700 XT/7800 XTの特徴は?
Radeon RX 7700 XT/7800 XTは、RDNA 3アーキテクチャを採用しており、先述の通りWQHD解像度でのゲーミングに最適化されている。どちらもGPUチップは「Navi 32」を採用しており、主なスペック(定格)は以下の通りだ。
- Radeon RX 7700 XT
- 演算ユニット(CU)/レイトレーシング(RT)アクセラレーター:54基
- AIアクセラレーター:108基
- ゲームクロック(※1):2171MHz
- ブーストクロック(※2):2544MHz
- グラフィックスメモリ:12GB(192bit/18Gbps)
- Infinity Cache(L3キャッシュ):48MB
- AV1対応動画エンコーダー:あり
- 消費電力:245W
- Radeon RX 7800 XT
- CU/RTアクセラレーター:60基
- AIアクセラレーター:120基
- ゲームクロック(※1):2124MHz
- ブーストクロック(※2):2430MHz
- グラフィックスメモリ:16GB(256bit/19.5Gbps)
- Infinity Cache:64GB
- AV1対応動画エンコーダー:あり
- 消費電力:263W
(※1)ゲーム起動中の定格クロック
(※2)最大クロック
発表時の記事にも言及があるように、上位モデルとなるRadeon RX 7800 XTにはAMDが自ら設計した「リファレンスカード」も用意されている。一方で、Radeon RX 7700にはリファレンスカードがなく、パートナー企業が設計したグラフィックスカードのみとなる。
今回のレビューでは、Radeon RX 7800 XTはリファレンスカードを、Radeon RX 7700 XTはASRock製の「Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OC」を用いる。テストを始める前に、両カードの外観的な特徴を簡単にチェックしていこう。
Radeon RX 7800 XT リファレンスカード
Radeon RX 7800 XTのリファレンスカードは、既存のRadeon RX 7000シリーズのリファレンスカードと同様のデザインを採用している。カードの厚さは2スロット分で、冷却ファンはRadeon RX 7600のリファレンスカードと同じ2連構成だ。GPU補助電源ピンは「8ピン×2」構成となっている。
ヒートシンクが大きくなった分、カードの奥行きはRadeon RX 7600から増している。ただし、3連ファンを備えるRadeon RX 7900 XT/7900 XTXのリファレンスカードよりは短いため、多くのPCケースに問題なく収まるだろう。
GPUのスペックが増した分だけ、Radeon RX 7600のリファレンスカードと比べてヒートシンクは大きい。奥行きも増しているが、厚みは約2スロット分に抑えられているため、多くのPCケースに問題なく収まるだろう
ASRock Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OC
Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OCは、ASRockのグラフィックスカードとしてはベーシックな「Challenger」ブランドに属する。OCは「Over Clock(オーバークロック)」の略で、稼働クロックが定格から少しだけ引き上げられている。
- ゲームクロック:2171MHz→2226MHz
- ブーストクロック:2544MHz→2584MHz
カードの外観は、昨今のChallengerブランドの製品と同様で、クーラーは2点構成となる。厚さは2スロット分で収まっていることもあり、Radeon RX 7800 XTのリファレンスカードと同じく多くのPCケースに問題なく収まる。GPU補助電源ピンは「8ピン×2」構成だ。
側面から見ると大型のヒートシンクや太い銅製のヒートパイプが見えることから、冷却面の心配もなさそうである。
次ページからは、両カードの実力をベンチマークテストを通してチェックしていこう。
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