約250台のカメラでデジタルツイン構築 人とロボットが協調――累計4000万台超のPCを作り続けてきた「島根富士通」の生産ラインが進化中(1/4 ページ)
「LIFEBOOK」「ESPRIMO」「LOOX」ブランドで知られる富士通クライアントコンピューティング(FCCL)のPCの多くは、島根県出雲市にある「島根富士通」という子会社で生産されている。ここしばらくはノートPCとタブレットPCの生産をメインに据えてきたが、最近はデスクトップPCの生産やPCの修理も手掛けるようになった。どのようにPCが作られていくのか、写真と共にチェックしてみよう。
島根富士通は、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の子会社で、富士通ブランドのPCの生産拠点だ。年間の生産能力は最大300万台を誇り、現在、国内で販売されている同ブランドのノートPCやデスクトップPCを生産している。
筆者はこのほど、同社の生産ラインを取材する機会を得た。取材時には、最新の「FMV LOOX」の生産の他、世界最軽量ノートPCであるLIFEBOOK UHシリーズを生産しており、組み立てラインでは、人とロボットの協調生産を推進する一方で、基板生産では完全自動化を目標にした進化を遂げている様子を見ることができた。また、部品搬送などではAGV(自動搬送車)の積極的な活用も進めている。
この記事では、島根富士通のあらましを紹介しつつ、生産ラインの様子をレポートする。
まもなく創立34周年の島根富士通 PC累計生産数は5000万台を視野に
島根富士通は、富士通のPC生産拠点として1990年10月に操業を開始した。周囲を田園で囲まれた高台に位置しており、出雲空港(通称「出雲縁結び空港」)から自動車で約15分の位置にある。
操業した当初は、デスクトップPCの専門工場としてスタートしたが、1995年にはノートPC専門の生産拠点へと移行。2011年からはタブレットの生産も開始している。さらに、2021年に富士通アイソテック(福島県伊達市)からデスクトップPCの生産を移管されたことで、島根富士通は富士通ブランドのデスクトップPCの生産も担うこととなった。
島根富士通が出雲市にあることから、同社で生産されたPCは「出雲モデル」とも呼ばれている。同社の最大生産能力は年間約300万台で、2020年度(2020年4月~2021年3月)には、過去最高となる約240万台のPCを生産した実績を持つ。累計生産数は2019年6月時点で4000万台に到達しており、2024年春には5000万台を突破する見込みだ。
さらに同社では2021年、富士通周辺機(当時)から、西日本エリアの個人向けPCの修理拠点としての機能を引き継いだ。さらに、東日本エリアの個人向けPCの修理拠点(福島県伊達市)も同社の管轄に改められ、生産から修理に至るまでの「PCのライフサイクル」全般を担う拠点となった。
なお、富士通が販売している法人向けPCの一部やGIGAスクール向け端末の修理も、同社から受託している。
同社の吾郷純執行役員(生産技術統括部長)は、「『品質は工程で作り込む』という考え方のもと、主要プロセスごとに検査を実施し、不具合が起こればプロセス単位で停止する仕組みを導入し、製造不良ゼロへの挑戦に取り組んでいる」と説明した上で、「基板生産ラインでは、プリント基板の投入から実装、検査、試験までの一貫した自動化ラインを構築し、PC組み立てラインでは人と機械の協調生産により、仕様が異なるPCを1台単位で混流生産できるようになっている。お客さまに安心、安全、快適に利用できるPCを届けられるように、日々“カイゼン”を進めている」と語る。
神門明社長は「スマートモノづくりの実現に向けて、『自動化』『搬送/物流の進化』『データ活用』の3点に(重点を置いて)取り組んでいる。持続可能な強い企業を目指し、さらにまい進していく」という。
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